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第66話 白いシズカ

 海辺高校裏手の崖に穿たれた無数の洞窟。

 108もの魔星が巣食うと言われ、誰が呼んだかその名も「魔窟水滸殿(まくつすいこでん)」。

 その23番目の洞窟にある夜、光が満ちた。

 お隣さんも気付かない、深夜のことだった。



 海辺町のとある古民家。いわゆるシズカハウスは、本日も非通常日常だ。

 正体不明の宇宙人に家族を全て殺され、尚且つ放置していたら宇宙規模のテロリストを育てちゃう、厄介な銀河刑事を処理したまでは良かった。

 その方法が、以前から♂⇛♀に興味があったスコップの特製魔法薬によるTS臨床実験だったのはシズカさんもビックリだ。

 残された最後の頼れる者まで奪われた銀河刑事は、シズカを頼るしかなかった。スコップはヤバいので当然避ける。


「まぁデカ子、そこに座りなよ。それにしてもデカいな!」

「デカ子言うな」


 TSしたせいでお約束のように背が縮んでしまったが、これまたお約束でお胸が大きめ。

 憎しみで吊り上がった目も、今はくるりん可愛いお目々に変わっている。

 

「ゴメンゴメン。お茶飲む?お昼ゴハン、ひやむぎ食べる?」

「あ、ああ」


 カクカクシカジカ。


「なるほどねえ。で君のお家?ドラゴンベースを私の家の地下に移動させたって事か」

「銀河刑事は秘密の仕事だから、この町の特異点に隠そうと思って」

「特異点呼ばわりか。悔しいが自覚はある。で、ここから学校に通わせてほしいと」


 実は銀河刑事は、海校の生徒だったのだ。

 

「あと、こんなになっちゃった説明に、協力してほしい……あなたのことは聞いていた。この町の相当な実力者だと」


 高校か。

 ケンタウリにも同じような制度はあった。

 しかしシズカはその優秀さのせいで、入校したその後すぐに卒業したので、実質数ヶ月しか思い出はない。

 人によるだろうが、甘酸っぱい青春が体験できる場所。恋愛も友情も、シズカには縁の無いものだった。

  

「実は私、青春学校……高校に行ったことないの!」

「え、頭ワル……」

「違うよバカ!逆だよ!飛び級、知ってる?スーパー頭良いんだよ!」


 そして、シズカさんは決断した。

 山田とキャッキャウフフしたい!


「決めた、高校に行く!山田と、青春する!」




 スコップの朝は遅い。

 自宅である第24号窟から朝日を浴びるために出てきたスコップはお隣の洞窟にまた居住者が現れたのに気が付いた。

 以前はシズカの姉、可愛いミツルちゃんが住み着いていたのだがいつの間にかいなくなっていた。

 ミツルの性格はともかく、珍しく話が通じる生命体だった。次の生命体もそうだと良いなと、スコップは洞窟を覗き込んだ。

 

「あら、スコップちゃん。お久しぶり」

「ミツルさん!?」


 奥からひょっこり現れたのは、(くだん)のミツルさんだ。

 相変わらず黙っていればカッコいい。その萌え声は、スコップと山田にギャップ萌えという性癖を開眼させた。

 しかし、意図しないイタズラ好き。

 しかも飽きっぽいらしく、後始末が大変らしい。 


「なんかもう、僕の中では悪の女幹部認定になってるんだけど、ミツルさん」

「ひどい」

「今度は、どんなトラブルを?」

「さらにひどい。まあ、この間のは少し巻き込み過ぎたのは謝るわ」


 町人全てを2年間も世紀末状態にしたのだから、「少し」のレベルではないのだが。


「今日は、私たち姉妹が幸せになれる素敵なサプライズです」

「恐怖でしかない!」

「ホントだよ、他人にはあまり迷惑は掛からない計算なんだから!」

「その計算、証明して見せて!」


 この姉妹、全く信用されてない!

 

「お、お土産も持ってきたのよ、ほら」


 ミツルさんが、何もない空間をごそごそしてソレを取り出した。


「コレ、超空間に引っかかってたよ。この町の子でしょ?」

佐久間(ストーカー)!?」

「凍結処置をしているよ。後でシズカちゃんに解凍してもらうといいよ」


 行方不明になった時そのままで全裸。

 同朋(ちきゅうじん)の前にはあまり晒さないほうがいいだろう。


「ミツルさんは来ないの?」


 結局、前回来た時もシズカには会わなかったミツル。仲良しの姉妹のはずだが、会えない理由でもあるのか?ただシズカがニャーニャーしてるのを観ていたいだけか。


「私は、まだ会わないよ。仕込みがあるからね~」

「嫌な予感……」

「でも今回ばかりはシズカちゃんに会う理由があるんだよ」


『ほら、そんな奥にいないで。お隣さんを紹介するよ』


 ミツルが洞窟の奥に声を掛けた。

 日本語ではない。フランス語系だろうが随分と感じが違う。

 そして奥から出てきたのは、ひどく疲れた様子の女性。

  

「え?その人は、シズカさん?違う……でも雰囲気が……」


 その人物は、シズカよりはるかに小柄であったが、身に宿す強者のオーラはシズカよりも濃厚であった。

 何より、初見でも分かるシズカとの違いがあった。

 

「白い、シズカさん……?」

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