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SP01 ドッペル星人ゲンガー

「捕まえてみたわ」

 シズカの前に縄で縛られて転がされているのは、二人のシズカだ。

「シズカ。この人達は?」

 ああコレ、猫が飼い主に捕った虫を見せに来るヤツだ。丸めがねの少女、山田は困っていた。

「地球には自分とそっくりの人が二人いるのでしょう?だから捕まえてみた」

 

 確かに三人並べてみたら本当にそっくりだ。

 ただ、捕まっている二人とも気絶していて目を閉じているから、シズカの特徴的な金色の瞳まで似ているかはわからない。

「君が本物なのか?……と問い正したいんだけど」

 ハーフパンツで調子に乗っているのはスコップ。

 僕っ娘である。

「地球人程度に遅れは取らないわ」

「そうだろうねぇ。で、どうして僕の洞窟(いえ)に持ってくるんだ」


 美しい黒猫を思い起こさせる女性、シズカはケンタウリ人である。

 この時代から三百年後に起こる銀河的大イベントを史実通りに起こすため、遙か千年後の未来からやって来た、時空監察官だ。

 変身もする。三段階。

 好きな物は山田。好きな食べ物はひやむぎ。


「それじゃ、捕まえる理由にならない」

「そっかな」

 捕まえられる物でもないが。

「昨日ね、物語を読んだのよ」

 インターネットで情報収集中にふと目に付いた、複数の物語。

「ドッペルゲンガーって物の特集?みたいで」

 山田は理解、スコップはわからない。

 ここまでドッペルゲンガーを愛するのは、地球人の日本人くらいだろう。シリウス人のスコップにはわからない。

「物語を鵜呑みにするなんて事はエージェントとしてあり得ないんだけど」

 こういう言い方するときって、ほとんどかなり信じてる。

「野放しにしていたら危ないと結論したの」

「シズカさん、ちょっと分からない」

「スコップ先輩。ドッペルゲンガーっていうのは、地球の……何だろう?お化け?みたいなもので。この世界には、さっきシズカが言ったみたいに同じ顔の存在がな三人いて、出会ったら死んじゃう?みたいな」

「ああ、そういう……」

 ウチにもあったよ、そういう話、とスコップが懐かしそうに言う。ドッペルゲンガー汎銀河的説。

 山田とスコップの話を側で聞いているシズカの猫耳(幻視)がペタンと畳まれ、長いしっぽ(幻視)が股のあいだに隠される。

「え?シズカ怖いの?」

「どんな相手でも面着であれば、何人来ても負けることはないよ。でも、「はい、ドッペルで~す。キミ死亡確定で~す」ってされたら防ぎようもないもの。山田と逢えなくなるの、イヤだよ」

「シズカ……!」

 チョロい地球人代表の山田はキュンとした。

「だからって、捕まえて来ちゃダメだろう?というか、出会ったら死ぬんだよ?どうやったのさ」

「後ろから近付いて手刀を叩き込んだ。コイツ等は私と会ったことに気付いてないわ」

「僕の星のドッペルゲンガーだったら、それも接触判定だからね。即死だよ?」

「ニャッ!」

 猫進化人間はこのように驚く。

「元いたところに返してきなさい」

 スコップはママのように冷たく言う。

「で、でも……」

 ギュッと目をつぶって、ドッペルゲンガーとは絶対に顔を合わせたくないシズカ。これでは元いたところまで行くこともできない。

 その時。

『私の影に気付きすぐさま処理するとは……流石は最強の時空監察官といったところか……』

 どこからか声がした。

「なんか喋ってるぅ……」

 縛られているドッペルゲンガーが黒く、影のようにその姿を変えていく。

 そして同じような影が現れた。

 ドッペルゲンガー達とは違い、両眼が憎悪で鈍く輝いている。

『ククク……そうだ!怯えろ!怯えろぉ!』

「なんか雑魚の匂いがするぅ……」

『私はドッペル星人ゲンガー!この地球に住む生き物はすべて我々と入れ替わるのだ!』

 ゲンガーが高らかに宣言する。

「シズカ……大丈夫じゃないかな?あいつらシズカのそっくりさんじゃなくなったよ?」


 シズカは目を見開いた。

 金色の瞳の中も縦長の瞳孔が開ききっている。

 つまりブチギレ状態だ。

 シズカの伸ばした右手が虚空からスマートフォンを取り出した。

 ミャウドライバー。

 生身で無敵のシズカにさらなる力を与える、変身アイテム。

「変身……」

 ささやくシズカ。

 腰に巻き付いたベルトにミャウドライバーをセット。

 ニャーン!

 電子音が鳴り、シズカは全身に光を纏った。

 足元からシズカの身体に沿って無数のラインが延びていき、メタリックな戦闘スーツを形作っていく。

 脚、胸部、腕の装甲に炎のエフェクトとともに濃い紅が差し、炎が赤いスカーフに変化する!

 最後に黒いフェイスマスクが下りると……。

 

『な、何だその姿は!』

 1カメ!2カメ!3カメ!引きカメ!

「時空監察官シズカ。さあ、正義の前に跪きなさい!」

 シズカは台詞にあわせ、ゲンガーに向けて挑発の入った差し指をする。

 時空監察官は司法であり執行官でもある。彼等がその場で判断したことは即ち「正義」である!


『おのれ、あと一歩の所で!』

 シズカは無言でミャウドライバーの画面を三回叩く!

 シズカの右足から漆黒の炎が吹き出した!

「ギャラクシーキック」

 美しい上段回し蹴りが炸裂。

 ドッペル星人の戦闘員は汚い染みになった。

 

『せめて貴様だけでも道連れに……!』

 ゲンガーの身体が膨らむ。究極の戦闘態勢に変化したのだ!

 シズカは冷静にミャウドライバーのスロットに何処からか取り出したカードをセット!

 ギャラクシーガン!マキシマムドライブ!

 シンプルな拳銃がシズカの手の中に現れた。

「あの世でも苦しむといい」

 ゼロ距離でのヘッドショット。

 ドッペル星人も汚い染みになった。


 戦闘スーツは光となって消えた。

「相変わらずやり過ぎだよ」

「本編が進まないから、ちょっとフラストレーション溜まってた」

 シズカと仲良く喧嘩するスコップにとってはよく見る殲滅シーン。

 しかしキュアキュアを夢見るJK山田にとっては、残酷すぎる光景。

「し、シズカ……ちょっと酷くない?あんな簡単に……」

 プルプル震える山田を、可愛いな~とか思いながら見ている、シズカとスコップ。

「あ~しまった。山田にはグロ系見せてないんだった」

「え?姫も相当えげつなく殺ってるんだけど?」

「視点が違えばね」

 時空監察官は言い訳をしない。

 全ての行いは自らの責任で背負わなければならない。

 時には最愛の存在と過ごした思い出も消さねばならない。

 シズカは……



「これは、番外編として……忘れてください!」


 ちょっと無茶なお願いをしてみた。

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