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第51話 美しい黒猫が帰ってきた

第二部始まります。

第一部終了から二年経った海辺町からお話は始まります

 21世紀の日本。

 南の海に面した、小さくはない街。

 鉄道の利用客に紛れて独りの女性が現れた。


 長い黒髪を赤い飾りひもで纏めた、高貴な黒猫を思い起こさせる美しい女性だ。

 その美貌と金色の瞳は彼女が日本人でないことを端的に表していた。

 僕たちはこの女性のことを知っているッ!

 いや!この黒髪と金の瞳を知っているッ!

 女性はタクシー乗り場で車を捕まえると、流暢な日本語で行き先を告げる。


「海辺町へ」



♪オープニングテーマ曲


 駅からタクシーで数キロ行ったところで、運転手は車を止めた。


「悪いが姉さん、俺りゃこの先は行けねえ……悪いがここで降りてくれねえか?」

「どうしてだ?」


 道路が県警のバリケードで封鎖されているから、車両がこの先に行くことができないのはわかる。

 女性が聞いているのはそういうことではない。

 客を降ろしたタクシーは逃げるように去っていった。


「どうして、たったの二年でこうも変わっちまうんだい?この町はよ!」


 彼女の眼前に広がるのは、どんより曇った空。朽ちた家々。割れたアスファルトの道路にはカサカサまで転がっている。

 世紀末だ。

 しかし、その女性は全く臆することなく、バリケードを越えていく。

 その浴衣(・・)の背中からは圧倒的強者のオーラが漂っていた。



「塩釜地区が完全に制圧された」


 中央司令室のテーブルに広げられた町の地図。海に近い集落の場所に黒い駒が置かれる。


「侵攻が早すぎる!バリケードの設置が間に合っていない!」

「船津は現状維持か……しかし明日はどうなるか。彼女(・・)はどうした?」

「精一杯やってくれてるわ。今日も『怪人』を2体撃破した。現在は3体目と戦闘中……」


 大人に混じって一人、報告するのは中学生くらいの少女だ。


「おお!」

 


「でももう限界よ。相手は幹部クラス、連続で闘ってきた彼女ももう……」

「しかし!怪人クラスを単騎で撃破できるのは、彼女しか……」

「だからよ!もう良いじゃない、このままじゃ」

『構わないわ、私は戦う』

「お姉ちゃん!」

『ありがとう、美保。でも決めたの。誰にも頼らない、邪魔させない!運命なんて、自分が決める!』


 激しいエネルギーの奔流が生み出すノイズが音声を乱す。

 彼女の名前はピュアブレイブ!

 にじみ出る勇気を武器に悪と戦う伝説の戦士だ!


『ピュアブレイブ・エターナル・シルエット!』


 遠くで太い光の柱が立ったのが作戦室の窓から見えた。遅れて衝撃波でガラスが震える。


『キュリピュア・エターナル・シューーーートっ!』


 スピーカーからの音がプツリと途切れ、遠くから聞こえる爆音。


「ゆうきお姉ちゃんの体も心配だけど……私の心が耐えられない……!高3は優しく見る側、やるのは中2だよ……」


 戦いが終わって我に返った後、いつも悶えるゆうきの心が心配なのだ。


「最近は中2だけとは限らんみたいだが……美保お前、やってみたいのか?」

「さすがにあの格好は。お姉ちゃんみたいにスタイル良くないし。でも旬ちゃんが見たいなら……」

「お、終わったようだぞ」


 ピュアブレイブが戦っていた方角の空に亀裂が入り、すぐに元に戻る。怪人をけしかけてきた大幹部が撤退したらしい。

 敵も大幹部クラスを出してきたのだ、向こうの戦力も相当消耗しているのだろう。ここで何とか押し返したいが……。


「火力が足りない!」

 


解錠(リリース)

 指先から小さなスパークが走る。カチャリと小さな音がして、安っぽい玄関の安っぽい鍵が開く。

 自分が住んでいた頃は、決して掛けなかった玄関の鍵。


「何だよ、掃除はしてくれてないのかよ」


 留守を任せていた彼女がこの家を守ってくれたのは最小限の範囲だったらしい。 

 雨戸の隙間から入ってくる光の中で積もったほこりが舞うのが見える。光の当たらない廊下の奥はやけに暗く見えた。


「まっく……」

「そりゃね、いつ帰ってくるかわからない人の家の掃除なんて出来ないよ」


 廊下の暗がりから声をかけてくる小柄な影。


「いつから?」

らしい(・・・)人が、駅に現れたと連絡が入ったんだ。半信半疑だったけどね。関所をたやすく破壊する人物の心当たりなんて一人しかいなくてさ。驚いたよ、魔法まで使えるようになったの?」


 二年だ。

 あの騒々しくて楽しかった日々から二年。

 たったの二年で、全て変わったのだ。町も人も。


「なんと呼べば?」

「前みたいに、スコップと呼んではくれないのかい?」

「それは無理な相談だ。わかっているんだろう?」

「一緒には来てくれない、か」

「すまんな。だがあちらにも付く気はない」

「一人じゃムリだと思うよ?」

「……それは俺が決めることだ……いつだってそうしてきた」

「気が変わったらいつでもおいで、シズカさん」

「……サヨナラ。スコップ」

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