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第48話 誘惑のチャチャ

『シズカちゃん、シズカちゃん……もう寝ちゃったかなぁ』


 秋の夜。

 近頃は身辺も静かで、やることもないので、シズカは早めに就寝しようとしていた。

 不意に玄関の戸を叩く音が聞こえた。

 この町の住人なら玄関の戸など叩かない。それに聞こえてくる声が気になった。


「ケンタウリ標準語?お姉ちゃん?」


 シズカは慌てて玄関に飛んでいき、鍵も掛かっていない戸を開けた。

 そこには間違いなく姉のミツルがいた。

 こちらに来る連絡なんてシズカは聞いていない。おっとりした姉のことだ、単なる伝え忘れかとも思ったが、その姿が問題だ。シズカには見覚えがある、銀色の戦闘スーツを身をまとっていたのだから。更には、怪我でもしているのか、左の脇を押さえている。


『遅くにごめんね……お姉ちゃん、ちょっと失敗しちゃった。再生カプセルを貸してもらえないかな……』

『え?うん、構わないけど。お姉ちゃんがどうして?』


 よろけるミツルに、シズカがとっさに肩を貸そうとするがミツルはそれを拒む。


『大丈夫……後少しはもつから』


 ミツルはよたよたと、しかし迷いなく再生室に向かう。


『お姉ちゃん……』


 ミツルの歩いた跡に落ちている水滴。


『……血?お姉ちゃん、ちょっとどうしたの!』


 ミツルがシズカに手のひらを向ける。


『シズカちゃん、お布団でゆうきちゃんが待ってるよ。お休み』


 特別な低周波を声に乗せ暗示を与える。一般人相手ならば一時間は有効なのだが、相手の精神力が強ければ効果は薄くなる。訓練されたエージェント相手であれば気を逸らすくらいできればいいほうか。


『あ!そうだった!うん、おやすみなさい!』


 哀れなシズカは、簡単に暗示に掛かってしまうのだ。



 凄い夢を見た。

 余韻に浸るのもはばかれるような、凄い夢だった。起きたばかりなのに目が冴えて、全く寝た気がしない。


『めっちゃ汗かいてる……』


寝間着が全く意味を成していない姿で、布団もびしょびしょだ。

 のどが渇いていたので、とりあえず全部脱いで水を飲みにキッチンへ。


『まさかスコップまで現れるとは……あたしにそんな願望が?』


 山田の順調に発育した身体も良かったが、スコップのやや細めな身体もたまらなく可愛かった。ついさっきまで、自分のこの両手で二人のものを揉み比べていた感触がまだ残っている。


『夢だぁ~!夢だ、夢だぁ~!』


 そんなときに現れるものだ。


「シズカ!ミツルさんが!」

『スコップ!』

「シズカ……そういう健康法があるとは聞いたことあるけど、もうお昼だよ。さっさと仕舞ったほうがいい」


 シズカのパーフェクトボディcase全裸にも全く動じないスコップ。


「そんな事より、ミツルさんを見なかったか?」

『そんな事よりって、あたしの体はそんなに魅力無いのか……?イヤイヤ!あたしは何を言ってるんだ~!』

「シズカさん、何言ってんのか分かんない。日本語で話してよ」

『にゃ?』

「あ、それは分かる」

「ホントだ、ケンタウリ標準語だった。なんで?暗示が解けるなんて……」

「悩む前に、まずはパンツはこうか」



「スコップ、久し振りね」

「そうだね」


 臙脂色の海高ジャージに着替えたシズカさん。

 つまり家の中まではオシャレはしないよということだ。実は洞窟くらいまでなら、ジャージで出歩いていたりもする。


「総司さん以来だね……何してたのよ。私何回かあなたの家に行ったんだよ?」


 別に責めているのではないのだろう、口をとがらせてむしろ拗ねているようだ。


「お仕事だよ。星にいったん戻ったり。たぶんタイミングが悪かったんだよ」

「そうだったんだ。こっちは加々美ちゃんとか来て大変だったのよ?」

「加々美ちゃん?誰それ」

「総司さんの許嫁の、喋るクワガタ。そいでその繋がりで借りてるのが、そこの蜂2匹。想と瞬。あれ?いないや」


 もとより訳の分からない二匹なので、また何処かでやさぐれているのだろう。


「でも、また会いに来てくれて良かった」


 海高ジャージと一緒にクローゼットから出したのは、最近スコップと買い物に行ったあの日に買った、秋色のワンピース。


「寂しかったんだよ?」


 スコップはグズグズ泣くシズカを見る。

 そこには戦士の覇気など全く感じられない。嬉しくて寂しくて泣く、普通の女の子がいた。


「やっぱりもう無理なのか?」



 シズカが落ち着くまで待って、スコップは話を切り出すことにした。友人のメンタルも心配だが、別の急ぐことがあるのも確かだった。


「どうしてその服を出したまま仕舞わないんだ?」

「だって、久し振りなんだから、こらからお出かけしようよ」

「あ~、ちょっとそうもいかないんだ」

「何?」


 いつの間にかスコップは、シズカの目の前にいた。色ぼけ頭の猫人間ならば、あらぬことを考えてしまいそうな距離だ。


「ちょ、スコップ近い。キ、キスは初めては山田とって決めて……」

「なに言ってんだ色ぼけ猫」

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