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第39話 ユグドラシルの木の下で

 シズカは、めいっぱい不機嫌な顔をして見せた。

 表情は相変わらず読みにくいが、口調や視線にこもった力からでも十分に感じ取れる。


「私、大事な約束があるの」


 伝説の木の最終下見に来ていたシズカだったが、数人のナンパ青年に囲まれていた。


「そう言わず、俺たちと遊ぼうよ」

「おねぇさんこの町の人でしょ?ちょっと案内してよ~」

 

 待ち合わせ場所を決めていなかったのがそもそもの失敗だった。

 会場に行けばきっと逢える。単純にそう思っていたのだけれど、会場が町全体だとは思っても見なかった。単なる町の催しとは思えないレベルの高い出し物が次々と発表されている中央ステージか?世界の名のあるグルメがお忍びで参加しているという屋台村か?あ、お世話になってる佐久間と美保のところには顔を出さなきゃ……。

 黒猫柄の新作浴衣を「少し」着崩して対山田対策もばっちりなシズカは本日の目的地を確認してから屋台村を目指すことにした。

 そうしたらこの結果だ。

 いきなり数人に取り囲まれ、先に進めない。

 ナンパという文化は、ケンタウリ人であるシズカには理解できない物ではあったが、年中発情期の地球人の習性であることは知っていたし、こういうイベント時に多く発生しがちなこともデータとしては知っていた。一度は体験してみるのもいいかとは思っていたが、今はタイミングが悪いし、それ以上に。


「そんな、怪しい格好している人たちと遊びたくないわ」


 ナンパ青年たちは、浴衣でも、夏の派手なシャツでもなく、黒マントを羽織っていたのだ。


「……衣装は大事よ?形から入ることを、否定する勢力が少なからずいることは理解するけど、結果さえよければ過程は気にしない人たちもいるけど……そんな恰好じゃ、出だしから失敗してる。「教団」を名乗る君たちの自慢のコスチュームなのだろうけど?」


 自分たちの正体がすでに露見していたのを悟り、黒マント達は一斉にシズカから飛びのいた。そして黒マントのフードを被る。


「それって逆じゃないの?普通マントを、ばさぁって取らない?」


 第三理論の連中のやることはよく判らない、とシズカはあきれる。


『ククク……我らの姿を見ると、貧弱な地球人は発狂するのでな』

『これから支配しようとする奴隷たちを廃人にするわけにもいくまい?』


 なるほど、理屈はあっている。じゃあ私は何扱いなんだ?


「それで?私に何か用?言っておくけど、あなたたちの動きは知っていたよ。不意打ちで私を始末するのが目的なら、もう破綻しちゃってるわけだけど?」


 奇襲は失敗した。しかし黒マント達には余裕さえ感じられる。


『ククク、構わないさ』

『お前に動いてもらったほうが、早く済む……』

『さあ、お主が執着している「伝説の木」に向かおうではないか!』


 黒マント達が走り出す。


「伝説の木?ちょっとあなた達、そこで何をするつもり!」


 気づけばシズカは黒マント達のあとを追っていた。

 伝説の木は、今日のイベントの重要なポイントだ、荒らされたくないし、こんな不気味な連中に近づいてほしくない。

 おびき出されているとはわかっていても、追うしかないのだ。

 

『ククク、よく怖気付かずにやって来た。そのことは誉めてやろう……』


 ここが、伝説の木がある場所?木なんてないじゃない……。シズカは思った。


『別動隊からも連絡があった、こちらに向かっている』


 おお!黒マント達から歓声が上がる。


『もうすぐだ!』

『月と!贄と!星と!すべての凶星がここに集まる!』

『長年虐げられてきた我らの悲願が間もなく……』

『凶星が揃うのだ!』


 黒マント達が騒がしい。

 山田との邂逅を邪魔されたり、星だなんだとやかましかったり。シズカさんはイライラしてきた。


「凶星が揃う?コレだから第三理論は!だから何なのよ!」


 シズカの伸ばした右手が、虚空から現れたミャウドライバーをつかみ取る。


『すべての凶星が災いの位置に揃うとき!』

『我らの悲願は果たされる!』


 怪人達のおこす突風が、空を覆っていた厚い雲を吹き飛ばす。意志の弱いものならば、それだけでも彼らの言う星の力を信じてしまうだろう!


「あんたたちの願いを叶えるとか、そんな安っぽい星は私が砕いてあげる!……変、身!」

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