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第38話 海辺町夏祭り

 引っ張りに引っ張った、海辺町第二回夏祭り。

 二度目とはいえ、前回枠に入りきれなかった人々によるステージ出し物もレベルが高いし、定番の屋台は何度でも通う美味しさだ。

 全体的に平和なムードで進行する中、局地的にはバトルが展開されていた。


「さち子ぉ~!あんた何の恨みでこんな僻地に押し込んでくれたのぉ~!」

「言い掛かりはヨシコサンよ!私は正当な権限で、あんたを追い込んだだけ!」

「あんたは~!」


 ママバトル勃発だ!

 2人とも普通の人なので、必殺技とかはない。ただ両者は箒を得物としてまるで剣術の有段者の如く、一進一退の目が離せないバトルが展開されていた。


「あの二人、またやってるぞ」

「ホント仲悪いからな……」


 名物らしい。


「ミホミホ。大根ちょうだい」

「ゆうき……」


 「料亭みほ」はあつあつおでんの店。料亭ならではの味わい深いお出汁で丁寧に煮込んだ逸品だ。


「毎回毎回恥ずかしいね。今日はどっちから?」

「ホント、マジ勘弁。今日はさち子さんから。ニヤニヤして近付いてきたのを無視してたら、さち子さんがブチ切れた」

「意味分からんね。あ、他の皆来てない?」

「スイレンさんと佐久間君は来た。あの二人つき合ってるの?」


 つい最近までは佐久間はゆうきのストーカーだったはず。誰が見てもユウキに対して幼なじみの友情以上の好意が見えていたのに。


「今日決まるんだ。楽しそうでしょ?……ヤオハチはあっちで野球部の連中といたよ。ミホを手伝ってやれって言っておいたから」


 山田はニヤリと笑う。美保が「旬お兄ちゃん」に懸想していることは皆知っているのだ。


「……別に一人で捌けるし」

「で、シズカさん見なかった?」


 約束したにも関わらず、早速はぐれている。「ゆうきお姉ちゃん」の色ぼけの姿は、見ていられない美保である。


「見てな……『あっちに向かってるのを見たよ』」

「ありがと。……じゃあね、美保」


 また明日、今日また会うほうがあり得るだろう。そんな単なる別れの挨拶のはずが、美保にはすごく重く聞こえた。



 おでんの大根をかじりながら、山田は考えた。

 さっき美保に「ウソ」を言わせた「何か」が私の「姫」としての相手だということなんだろう、と。

 山田がはっきりと憶えている一番最初の記憶は、母の言葉だった。山田はこの町に古くから棲みつく亡霊「無貌の少女」を祓うための存在だと。出会った場合はかなりの確率で山田は消滅するのだと。

 子供が聞いているとは思わなかったのだろう。やけに具体的に、確信的に言い切っていたものだ。

 今までは偶然会わなかった、もしくは会ってもお互い気付かなかったのだろう。出没していることはいろんな記録から明らかだった。


「間違いなく私の事を見ていたし、私も気付いちゃったからね……」


 それに、今まで出会った悪霊達とは明らかに雰囲気が異なる。

 山田のことをしっかり認識していた事、そして目的のために美保を操った。……かなり強力な存在だ。

 母の言うことを頭から信じていたわけではないが、アレを祓うとなれば本当に自分も危ないと感じる。

 目を閉じて深呼吸。

 思い浮かぶのは可愛いくてたまに恰好良い、綺麗な黒猫のような女性。

 最期に素敵な恋ができた。それだけでも私は今まで生きてきて良かったと思える。

 山田はおでんの入っていた容器をゴミ箱に叩き込んだ!


「そんなわけあるか!」


 山田は浴衣の懐に忍ばせたミャウドライバーを握りしめる。


「返り討ちにしてやるよ」

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