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第23話 私の知らない山田

「佐久間、冷蔵庫の西瓜が冷えてるか見てきて~」

「人使いが荒いな……野菜室かな?」

「そーそー」


 キッチンに佐久間が引っ込んだのを確認すると、シズカはスイレンに小声で訊ねる。


「チューしなかったの?だめだよスイレンちゃん。ヤるときはヤらなきゃ」

「シズカさん何言ってるの!」

「え、違った?」

「……違わないケド……まだチョット、いいかなって」

「恋に恋する乙女だね、誰も彼も」


「頂きます」


 三人は綺麗に正座して、食前の祈りを行う。この後は足をくずそうと自由だが、ここは何だかきっちりしておきたい。

 佐久間寿司のお寿司はシズカの事情にあわせて今日も手の込んだ偽装寿司だ。三人前にしては量が多いのだが、後で部活帰りのヤオハチも来るだろうから。彼の分も頼んである。


「どうしていつも佐久間の所のお寿司はこんなに飾ってあるの?」

「後で佐久間に聞いて。私は知らないことになっているから」

「ふ~ん」


 スイレンは佐久間をチラリと見る。意外とまつげ長いんだ、などと思ってしまって慌ててお寿司に視線を戻す。


「お姉さんには眩しすぎるよ……」

「シズカさん!」



 昼食が終わり、一息タイム。

 ヤオハチの分のお寿司は別に取ってキッチンで保管している。テーブルにはおやつが並んでいた。

 昼からは子供達は宿題したり散歩したり。シズカは調べ物したり工作したり、友人が遊びに来たり。


「ところで、帰ってくるの遅かったけど、何かあった?」


 佐久間とスイレンはお互いに目配せをする。

 負けたのは佐久間。


「実は、ゆうきを見かけたんだ」

「ゆうきも、用事が終わったら来ればいいのにって、」


 世話係のはずの山田がこの数日ほとんどシズカの所に来ていないのは2人とも知っている。彼らもずっと待っているのだから。


「ひとこと言ってやろうと思って、後を付けたんだけど」

「そう、多分ゆうきの奴、絶対に宿題進んでないからな!姉さん、どうしてそんな目で僕を見るんだ!スイレンも!」


 皆さんもご一緒に見つめてあげて欲しい。


「ストップ。続きは私が聞いても大丈夫なの?事によっては荒れる自信あるわよ?」


 ここまで話しておいて、言わなければ邪推して荒れるだろうし、言っても荒れる宣言。この猫、めんどくさいとスイレン達は思った。

 と、その時!


「シズカ!大変だ!」


 いきなりの来客が裏庭に現れた!最近はいからさん(・・・・・・)和装が気に入っている、スコップ先輩だ。


「姫が、山田がさっき……!」


 あ、ヤベエ!


「先輩、それ言っちゃ……」

「中野とグリモワールに二人で入っていったぞ!」


 ちっちゃい先輩、本日のNGセンテンスを踏み抜きやがった!スイレンと佐久間は慌てる。


「ああ、スコップいらっしゃい。今日も可愛いね、大正ロマンっていうのかな」

「え?そう?アリガト」

「あれ?姉さん荒れてない……」


 シズカの意外な反応に、三人は驚くしかない。スコップは驚きつつ座敷に上がって、煎餅を齧っている。


「私はエリートの時空監察官だよ?目の前で家族が死んでも取り乱さないように、感情コントロールの訓練もちゃんと受けている」

「あ、自分で言っちゃった」


 シズカが正体をバラすと自分の正体もバレてしまうのでは、とスコップは焦る。


「うわ、想像より怖い人だったか!」


 シズカがこの星この時代の人ではないと気付いていたが、事務職の人だと思っていた佐久間は、やべえ方だとは思っていなかった。焦る。

 シズカさん、マジ切れしてんじゃん、とスイレンは思う。


「私はとある情報筋から、確度B情報として既にこのことは知らされていたの。だからコレを、作っていたんだよ」


 シズカは工作室からドローン組立キットを持ってきて見せた。


「空中監視用ドローン?透明化機能付き?何考えてるのアンタは!オーバーテクノロジー、アンタ達の言う銀河条約違反じゃないか!」

「時空監察官の権限は最優先なの!」

「この馬鹿猫は……!」


 スコップが懐から怪しい注射器を取り出す。

 シズカもお馴染みのシズカクローで応戦の構え。

 普段はミステリアスで美しい姉さん方が実は血の気の多い好戦タイプと知って、アワアワするしかない佐久間。


「でもコレって、未完成なんですよね?」

「……ちょっと難しくて、組み立て」


 スイレンの指摘にシズカが怯んだ隙に、スコップが首筋に注射器を刺した。


「あ!」


 速効性の薬か。シズカはその場で倒れてしまった。


「殺しちゃったの……?」

「これくらいで死ぬ馬鹿猫じゃない。一時間もすれば目を覚ます」

「ストーカー、この模型を工作室に置いてきて。スイレン、押し入れに布団がある。そっちじゃなくて左の方。あんまり右側はのぞき込むなよ」


 昏倒したシズカを布団に寝かせて、


「佐久間、顔がイヤラシい」


 という一幕を挟んで。


 おやつにしようと、皆でテーブルを囲む。


「この猫にはいつも疲れさせられるな……」

「先輩、酒饅頭ありますよ」


 シズカが起きてくるまで、三人はのんびりと過ごすのだった。 

 

 

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