8年ぶりのメッセージ
次の日。
18時頃、一通のダイレクトメッセージを知らせる通知が届いた。
少しうとうとしていた私は
重たいまぶたを擦りながら、通知を確認する。
『このコメントをくれたのは、あなたですか?』
夜中に私が投稿したコメントの写真が、
このメッセージに添付されていた。
あの写真のアイコンとともに。
――ああ、やっぱり気がついてくれたのだ。
私がアイコンに設定したのは、
8年前、銀杏並木を背景にしてふたりで写った写真だった。
そしてそれは、ふたりが別れる前の最後の写真でもあった。
――どんな風に返信をしよう。
来てくれたらいいなと思うものの、
いざこうして実際に返信が来ると
どんなメッセージを送るのが正解なのか、
少し考えてしまう。
30分ほど考えて、
ひとまず肯定をするメッセージを打ち込む。
『はい。』
けれどもそれだけでは物足りず冷たい感じがして、
また少し考えて文章を付け足した。
『ご無沙汰してます。お元気ですか』
ちゃんと生活ができているのか、不安だった。
大学時代の共通の友人から話は聞いていたものの、
実際に自分が直接話を聞くのとでは
印象が変わってしまうこともある。
私の送ったメッセージに、
樹が読んだことを知らせるマークがついた。
10分くらいして返信が届く。
『うん。おかげさまで。咲も元気にしてましたか』
相手のことを気にかける優しさも変わっていない。
樹とのやりとりの画面を眺めているうち、
楽しかった記憶が溢れてくる。
――私も、元気にはしている。
自分の近況を伝えたくなって、
少しずつ文字を打つ指が動き出す。
『うん。元気。でも、あれから書いてないんだ』
樹の創作への意欲を、
私が受け止めきれずに別れを告げたのだ。
そんな私が中途半端な気持ちで物を書くことが
許されないような気もしていた。
その結果、書けなくなってしまった現実を
こうして受け止めるしかないと思っていた。
樹から、またすぐに返信が来る。
『本当に?』
樹にも何か気になることがあるのだろうか。
この一言だけのメッセージを確認して、
私は慌てて返信を打つ。
気まずい感じはあまり好ましくない。
『うん。樹の方は最近どうなの?あの曲、良かったよ』
私が昨日コメントを残した曲は、
1ヶ月前に投稿された新曲だった。
90件のコメントが残るなど、アマチュアにしては
少しずつ人気は出てきているように思えた。
そんなことを考えていると、また樹から返信が届く。
『まあまあかな。拠点のライブハウスができてさ。
定期的にライブさせてもらうようになったよ』
拠点だというライブハウスのリンクも
一緒に送られてきた。
相変わらずこういうちょっとしたことの樹らしさは
変わらないなと、クスッとしながらリンクを開く。
――あれ?もしかしてここ……
見覚えのあるライブハウス。
そこは、ふたりが当時好きだったバンドが
アマチュア時代に活動していた場所。
私たちが初めてライブを見に行った、
思い出の地だった。




