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 カーナビに促されるままグネグネした峠道を通り、午後9時を少し回ったところで、モンチの実家へ到着することが出来た。


 この辺りへ来たのは初めてだったが、イメージしていた田畑が広がるような田舎ではなかった。駅からも近いようで、近所に大型スーパーや薬局がある閑静な住宅街だった。


 地図が示したこぢんまりとした二階建ての一軒家の前で車を停めると――ご自宅の前に到着しました――とモンチの母親にLINEを送った。


 すると玄関先で待っていたかのように、すぐにドアは開き、モンチと同じくスリムな女性が顔を覗かせた。


 「あなたがタケちゃんね。サヤの母です」


 モンチの母親は、モンチとあまり似ていなかった。猫のような大きなキツイ目が特徴的なモンチと違って、目が少し垂れた優しげな面差しの人だった。年齢的にはウチの母親と変わらないだろう。


 「こんばんわ。夜分にすいません」


 オレも車から降りて挨拶をする。


 モンチの母親は、ハイエースの窓から覗き込んで、呆れたような、また安心したような、乾いた笑いを洩らした。


 「良かったら、このまま家の中まで運びましょうか?」


 せっかく幸せそうに眠っているのをわざわざ起こしてしまうのも忍びなく思ってしまったからだが、かえって迷惑になる場合もあるので、一応提案という形にしてみる。


 「あら、だったら、お願いしようかしら」


 モンチの母親は、良いアイデアとでも言わんばかりに胸の前でパチンと手を鳴らした。


 オレは一つ頷いてから、助手席のシートベルトを外し、そのままモンチを抱き上げた。


 「あら、あらあら、まあまあ、お姫様抱っこね」


 すると、それを見たモンチの母親はキャッキャと囃し立てる。


 モンチはあまり冗談を言うタイプではなかったが、母親は少しお茶目な人のようだ。


 そのまま促されるように家の中へと招き入れられたオレは、モンチの部屋があるという二階へ案内された。狭い階段を横抱きで登るのは少し窮屈だったが、腕力には自信があった。花屋というのは意外と力がいる商売なのである。


 電気がつけられた6畳ほどの狭い部屋はピンク一色だった。ベッドの上にも可愛らしいぬいぐるみが所狭しと置かれ、まさに少女の部屋という感じだ。


 「驚いたでしょ? この子、実はカワイイのが好きなのよ」


 モンチの母親はいたずらが成功したとでも言わんばかりに、クククッと笑う。


 確かに今住んでいるモンチの部屋は、衣食住を満たす為だけの色のないシンプルな部屋だった。


 ただそれは部屋というものに興味が無くなっただけで、その仕事っぷり(結婚式のプロデュース)を見れば、モンチが可愛いもの好きであることは、長年の付き合いがあるオレは重々承知していた。


 そんなことよりもオレは、思わず視界に飛び込んできたものに驚いて、それどころではなかった。


 部屋の入口正面にはモンチが子供の頃に使っていただろう学習机があった。そこには幾つかのスナップがあり、学校で撮ったであろうものなどがコルクボードに重ねて貼ってあった。いわゆる青春の1ページというやつである。


 ただそれとは別に、明らかにスナップではないA5サイズの遺影のようなものが、机の上に丁寧に三つ並べてあった。


 一人は細面の若い男性であり、おそらくモンチの父親なのだろう。子供の頃に病気で亡くなったという話は聞いていた。


 その隣はおばあさんで、雰囲気が何となくモンチに似ていた。モンチの猫のような大きな目はこのおばあさんから受け継いだものだと判る。


 そして最後の一枚。一番右に置かれたその写真の人物に、オレは見覚えがあったのだ。


 「どうかした? このカワイイ部屋。そんなにびっくりした?」


 「あっ、いえいえ」


 つい立ち尽くしてしまっていたオレは、慌ててモンチをベッドに寝かせた。

評価、ブクマして頂ければ、有り難く思います。

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