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十五少女異世界漂流記【改】  作者: GAYA
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第47話 砂漠地帯の激突

 突如、砂漠のストーンヘンジに現れた3人の姿にイリアが目を剥く。

「え!? ど、どこから!?」


 モエ達は円の中心付近から現れた。

 そして、こちらに向かって来る。


 それなのでイリアには3人が何もない所から、ふいに現れたように思われたのだ。


 そこで、モエがイリア達を順に見回して説明する。

「そこの緑の石や。その石碑が森の中と繋がってんねん」


 驚いてイリアがモエの背後にある石碑を凝視する。

「そっか……石碑ね……」


 へそ出し乙葉はツインテール桐子が手にする大剣を見上げながら呆れる。

「その剣。よくそんなのが持ち上がるわね」


 桐子は剣を肩に担ぎながらドヤ顔で答える。

「ボク専用の武器さ。やっと見つけた」


 イリアは智世に耳打ちする。

「あの石碑は前に利恵が見つけたのと同じやつみたいね」


「うん。だから地図に星印がついてたんだね」

 そう言って智世はスケッチブックを、ぎゅっと抱いた。


 モエが自分の戦斧と桐子の大剣を見比べながら尋ねる。

「そっちの様子はどうなん?」


 それに対して桐子は複雑な表情を浮かべる。

 桐子はヘレンとモエの衝突を間近で見ている。

 そして、モエに会うのはその時以来だからだ。


 桐子は言葉を選びながら答える。


「何人かのグループに分かれて別行動をとってる。玲実と双子は相変わらずマイペースでボク等とは関わりが無い。だから何やってるか分からない。利恵と和佳子、それから愛衣さんはまだ雪の町に居ると思う。ボク達はその雪の町から出てきたところさ」


「雪の町やて? そうか、ホンマに雪が降ってんねんや……」

 モエはそう言って少し考え込んだ。


 そこで乙葉が桐子に尋ねる。

「ね、ところで、あの女を見なかった? 外人の女。アナタ達、あっちから来たんでしょ?」


 へそ出し乙葉の質問に桐子とイリアが顔を見合わせる。

 智世も口をつぐむ。


 乙葉はそんな3人の様子を見て顔を引きつらせる。

「知ってるんでしょ? 隠さないでっ!!」


 乙葉の怒号に智世がビクつく。


 桐子が「どうしたんだよ。何をそんなに怒ってるんだい?」と、乙葉をなだめようとする。


 桐子達は野乃花が殺されたことを昨夜ヘレンから聞いていた。

 だが、桐子は知らないことにしておいた方が良いと考えたのだ。


 乙葉は冷たい視線を桐子達に向ける。

「関係ないでしょ。てか、アナタ達、まさか、あの女とツルんでるんじゃないでしょうね?」


 乙葉と桐子のやり取りを黙って聞いていたイリアが挑発するように言う。

「そうだと言ったら?」


 桐子が「おい、イリア!」と、困った顔を見せる。


 イリアの一言で、せっかく事を荒立てないようにしていたのが無駄になってしまった。


 乙葉はショットガンをぎゅっと握り直して、きっぱりと言う。

「アナタ達も敵とみなすわ」


 乙葉の視線に対抗するようにイリアは睨み返す。

「くだらないわね……」


「なにぃ!」と、乙葉がショットガンを構えようとするところでモエがとりなす。


「乙葉、もう、ええやん。この子らは関係ないやろ。もう行こうや」


 乙葉は舌打ちしながら銃口を下す。


 それまで黙っていた詩織も乙葉を落ち着かせようとする。

「そ、そうだ。あ、あっちは、きっと寒いよ。ゆ、雪だからね」


「せやな。ちょっとこの格好では耐えられへんかもな」


 モエがそう言うのを聞いて桐子が「そうだ」と、思いついて荷物に被せてあった上着を差し出す。

「ボク達の上着をあげるよ。持って歩くのは邪魔だから」


 イリアはあまり乗り気ではないが「私のもいいよ」と、革ジャンを手にする。


「ホンマか? 悪いな。それは助かるわ」


 詩織もお礼を言う。

「あ、あ、ありがと。で、でもいいの?」


「いいよ。ボク達は森の方に向かうから。多分、もう使わないと思うし」


 モエは桐子から詩織はイリアから防寒具を受け取った。


 しかし、乙葉だけは智世の差し出すハーフコートを一瞥してそっぽ向く。

「私は要らない」


 桐子が苦笑しながら言う。

「いや、持って行った方がいいぜ。きっと後悔するから」


 それを聞いて乙葉は渋々、智世の手から上着を引っ手繰る。


 智世は何も言わなかったが不満そうな顔だ。

 イリアも苦々しそうに首を振る。


 乙葉は憮然とした様子で「行くわよ」と、桐子達に背を向けて歩き出した。


 モエが「すまんな」と、片手でゴメンという風な仕草をみせて乙葉を追う。

 詩織はペコリと丁寧にお辞儀をしてそれに続く。


 乙葉達の後ろ姿が遠ざかったところでツインテール桐子が溜息をつく。


「ふぅ。なんだろ。あの態度。乙葉ってあんな子だったっけ? もっと明るい元気な感じだったはずなんだけどな」


 イリアは、やれやれといった風に首を振る。

「凄く感じが悪いわね。まあ、こんな状況じゃ分からなくもないけど……」


「そうだな。精神的に参ってるのかもな」

 桐子は俯きながらそう呟く。


 智世はスケッチブックの背表紙をぎゅっと握って言う。

「みんな不安なんだよ……」


「だな。ボクも結構、メンタルにきてるし……和佳子もそうだったのかもな。いや、みんな多かれ少なかれ壊れかかってるのかもしれない。その点、イリアは偉いよ。最初の頃と全然変わらないもんな」


 イリアは首を振る。

「そんなことない。もとからこういう感じだから変わらないように見えるだけよ」


 なんだか、しんみりした空気になってしまった。


 そこで桐子が思い出す。

「そうだ。イリア。あの動画の事、言わなくて良かったのかな?」


「良かったんじゃない?」と、イリアは素っ気ない。


 智世も頷く。

「私も言わなくて良かったと思う。だって、あの子……乙葉ちゃんだっけ? ちょっと目がイッちゃってたから」


 智世はあの動画が示す恐ろしい情報が乙葉に渡ることを恐れた。


 平気で人に銃口を向けるような人間が、あの情報を入手してしまったら暴走してしまうのではないかと感じたのだ。


    *    *    *


 ツインテール桐子達と別れて、しばらく歩いていた時だった。


 先頭を進む乙葉とその後ろを歩いていたモエの耳に「うっ!」という詩織の呻き声と『パァン!』という銃声が同時に飛び込んできた。


「な、なんや!?」と、モエが振り返って詩織を見る。


 詩織は「ううっ……」と、肩を押さえてしゃがみ込んでいる。


「詩織! 大丈夫か?」と、駆け寄ったモエが目を見開く。


 左肩を押さえる詩織の右手が赤い。

 その手の平から血がはみ出してくる。


「撃たれたんか!?」


 モエは即座に思い出した。自分が撃たれた時のことを。


 見えない相手から狙撃される恐怖。

 それを思い出してモエは身震いする。


「くそっ!」と、乙葉が今来たルートの先を睨みつける。


 この場所からは先ほど立ち寄ったキノコ岩の群れが小さく見える。


「やっぱり」と、乙葉は吐き捨てる。


「どういうこっちゃ?」と、モエが乙葉の顔を見上げる。


「グルなんだ。アイツ等、あの女とグルなんだよ!」


 乙葉は突如、荷物を放り出して桐子達の居るストーンヘンジに向かって駆け出した。


「おい乙葉! どないする気や!?」


「引き返して、やっつける!」


「ちょい待てや! 敵を増やす気か?」


「関係ない!」


 乙葉はショットガンだけを持って走っていく。


 モエは慌てて乙葉を追いかけようとする。

 だが、詩織を放っておく訳にもいかない。


 すると詩織がモエに懇願した。

「お、お願い。行って。わ、私は、か、かすり傷だから」


「アホいうなや。結構、血が出とるやん」


「ほ、ホントに平気だから。そ、それより乙葉ちゃんを止めないと」

 詩織は気丈にもそう訴える。


 モエは少し迷いながらも詩織の意思を尊重することにした。


「せ、せやな。分かった。ほな、行ってくるから。じっとしとき!」


 そしてモエは詩織を置いて乙葉を追った。


 その頃、何も知らない桐子達は銃声に驚いて顔を見合わせていた。

 イリアが「銃声? どこから……」と、眉を顰める。


 桐子はキョロキョロしながら「近かったよな」と、困惑する。


 目のいい智世も注意深く周囲を観察するが特に変わった様子は無い。

 その代わりに前方からこちらに向かって走ってくる乙葉の姿が目に入った。


 智世が首を傾げる。

「あれ? 戻ってきた……」


 桐子も首を捻る。

「本当だ。あいつ、何をそんな急いでるんだろ?」


 その間にも乙葉が、みるみる近づいてくる。

 何やら叫んでいるようだが聞き取れない。


 イリアが荷物を置いてハルバードを手にする。

 そして冷静な口調で2人に注意を促す。

「気を付けて。何か様子が変……念の為に武器を持って」


 イリアの険しい顔つきに桐子がごくりと唾を飲む。

 そして言われるままに地面に転がしていた大剣を拾い上げる。


 智世は無言で荷物をそっと下ろすと、その中から拳銃を取り出した。

 そこでようやく乙葉の言葉が聞き取れた。


「ふざけんなぁ!!」


 乙葉の絶叫にイリアの顔が強張る。

 桐子は戸惑う。

 智世は膝をガクガクさせながら踏ん張る。


 乙葉は3人の手前まで走ってくると急に立ち止まり、きょろきょろと周囲を見回す。

 そしてショットガンを構えて怒鳴った。

「アイツはどこ!?」


 その剣幕に押されて桐子が「な、何のことだよ」と、怯えながら答える。


「隠すなっ!! この辺りにいるのは分かってる!」


 乙葉の言葉にイリアが噛み付く。

「言いがかりは止して! さっきから何なの? 頭おかしいんじゃない?」


「なにぃ!!」

 乙葉は顔を歪めると微かに笑みを見せた。

 が、それは残酷な殺人者が殺意を見せた時のようないびつな笑みだった。


『バンッ!』と、乙葉は躊躇することなくショットガンを発射した。


 撃つことを確信していたイリアは、乙葉の直前の動作を見て智世を突き飛ばし、自分も横に回避した。


 逃げ遅れた桐子だが反射的に持っていた大剣を顔の前に翳した。

 それが功を奏したものの、大剣の刃に『キンキンッ!』と、散弾が2発当たった。


 乙葉は「くそっ!」と、さらに接近して2発目を撃とうとした。


 桐子が叫ぶ。

「智世!」


 それを聞いた智世が立ち上がりながら乙葉を睨む。


「うっ!」と、乙葉の動きが止まる。「な、何で?」


 智世は金縛りの能力で乙葉の動きを封じた。


 その機を見逃さず、イリアがハルバードを持って乙葉に殴りかかろうとする。

 が、それよりも一歩早く、桐子が乙葉に向かってダッシュして右の拳で乙葉の顔面を殴りつけた。


 桐子に先を越されたイリアが「な?」と、驚く。


 乙葉は桐子に殴られて「ぎっ!」と、声を漏らして上体を反らすが、尚も金縛りから逃れられない。


 乙葉は苦悶の表情を浮かべて「ぐ、く、動か……ない」と、呻く。

 だが、ショットガンは離さない。


 そこへ乙葉を追うようにモエが走ってきた。

「ちょい待てや!」


 モエは戦斧を手に全力でこちらに向かって来る。

 と、その時、乙葉の金縛りが解けた。


「くっそぉぉ!!」


 乙葉が体勢を立て直す。

 そして『バンッ!』と、ショットガンを発射する。


「いっ!」と、智世が目を瞑って耳を塞ぐ。


 散弾は智世のすぐ近くの地面に着弾した。


 即座にイリアがハルバードを振って乙葉の手元を狙う。


「このぉ!!」と、イリアがハルバードの斧部分でショットガンの銃身を上から叩く。


『ガキン!』という激しい音がして、乙葉は「うぐっ!」と、ショットガンを落としてしまう。


 イリアは武装解除を目的に最初からショットガンを叩き落とすことを狙っていたのだ。


 だが、モエの目にはそうは映らなかった。

 モエはイリアがハルバードで乙葉に斬りかかったとみて「何しとんねん!」と、激高した。

 そして走るスピードを増す。


 モエの能力は加速力とジャンプ力を飛躍的に高める脚力だ。


 モエは驚異的な勢いでダッシュしてくると高くジャンプしながら戦斧を振り上げた。


 それに気付いたイリアがハルバードを握り直して防御しようとする。

 だが、モエは宙を舞うようにイリアに急接近する。


 イリアの防御は明らかに間に合わない。


 モエの戦斧が振り下されるのとイリアが「くっ!!」と、覚悟したタイミングが重なった。


『ガチィン!!』


 そこにツインテール桐子の大剣が割り込んだ。

 モエの戦斧がイリアの顔面を捉える寸前で、大剣の刃がそれを紙一重で防いだ。


「なんや!」と、モエの顔が歪む。


 モエは痺れる手を庇いながら着地、バックステップで距離を取る。


 その隙に乙葉がショットガンを拾いあげて、走りながら銃口をイリアと桐子に向ける。


「死ねっ!!」

「だめっ!!」

 ふたつの叫びが響く。


 そこで乙葉がまたしても金縛りで動きを止められた。

 智世の目は赤く、その視線の先には固まった乙葉の姿があった。


 乙葉は引き金が引けずに「く、ま、また……なんで」と、呻く。


 イリアは乙葉を睨みつける。


 そしてハルバードを握り直すと「もう許さない!」と、走り出す。

 今度狙うのは武器ではない。

 乙葉を止めるには手加減など出来ない。



 イリアは乙葉に接近しながら十分に力を溜め、「ああああっ!!」と、渾身の突きでハルバードの先端で乙葉の腕を狙った。


 金縛りで成す術の無い乙葉が「くそぉ」と、叫ぼうとするが思うように声が出ない。


 ハルバードの先端が乙葉の腕を貫こうとしたまさにその時、『ジャキン!!』と、イリアの視界の外から横入りした黒い線がハルバードに絡まった。


 それは、あっという間に二重三重に巻き付き、ハルバードの勢いを削いだ。


「な!?」と、イリアが手を止める。

 そして自らの武器に巻きつく鎖のような物体が飛んで来た方向に目を遣る。


 そこで見た光景にイリアは「あなたは!?」と、驚愕する。


 イリアのハルバードを止めたもの。

 それは詩織の鎖鎌だった。


 20メートル先で詩織は肩で息をしながら鎌を左手に持ち鎖を右手で握っている。

 それがイリアの手元まで繋がっている。


 モエがそれを見て「詩織!」と、叫ぶ。


 それに応えるように詩織はチラリとモエを見ると軽く頷く。

 そして悲壮感漂う表情でイリアに向かって言った。

「そ、そ、それ以上は……許さない!」


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