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十五少女異世界漂流記【改】  作者: GAYA
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第28話 殺しの為の交換条件

 事前に情報を得ていたおかげで、玲実と双子の3人組は、早々に湿地帯で武器を発見することが出来た。


 双子の姉の望海はドヤ顔で棍棒こんぼう墓標ぼひょうの十字架を指し示す。

「ほら、あったじゃん!」


 お嬢様の玲実がマジマジと十字架を観察する。

「へえ、こうして実物を見ると……何か不思議よね」


 望海が妹の梢の腕を引っ張る。

「ほらほら。見てみなって! ホントに『KOZUE』って彫ってあるよ」


 梢は「なんか嫌だな……」と、それを確認してゲンナリする。


 やはり墓標に自分の名前が刻まれていると良い気はしないものだ。


 玲実が十字架に立てかけられた棍棒を見て「野球のバットみたい」と、顔を近付ける。

 そして「にしては短いわね。子供用?」と、首を傾げる。


 確かに玲実が言うように棍棒は長さが50センチぐらいしかなく、ビニール製の『おもちゃ』のバットのように見える。


 突起物など無く、つるっとした表面をしているために、余計にそう見えてしまうのだ。


 白地に金色の模様が施されている形状は、ボウリングのピンにも似ている。


 玲実が「なんか武器じゃないみたい」と、何気なく手を伸ばす。


 と、指先が触れる瞬間に接触箇所せっしょくかしょがスパークして「ぎゃっ!」と、玲実が手を引っ込める。


 指先から伝わった電気刺激が、玲実の上半身にビリビリッと伝わる。

 その強烈な電撃に、玲実は尻もちをついて呆然とした。


 望海と梢も電撃棍棒の威力と玲実の反応に驚愕する。


 玲実がフラフラと立ち上がりながら怒りをあらわにする。

「バッカじゃないの! 誰よ! こんな物、放置したのは!」


 それは八つ当たりでしかなかった。

 だが、確かに理不尽だ。

 触ってみたくなるような可愛らしい形状をしておきながら電撃を浴びせてくる。


 望海がゴクリと唾を飲む。

「凄い……てことはアタシが触っても同じことよね。武器は持ち主しか使えない」


 望海はそう言って隣で立ち尽くす妹の顔を見る。

 そして「触ってみなよ」と、促す。


「えぇ……怖いよ」と、梢は尻込みする。

 が、望海は「早く!」と、譲らない。


「分かったよ」と、梢が諦めたように棍棒に手を伸ばす。


 すると何事も無く、普通にそれを手にすることが出来た。


 望海が「ほらぁ! やっぱりぃ!」と、はしゃぐ。


 玲実は「なんなの?」と、目を丸くする。

「さっき食らった電気ショックは何だったのかしら」


 梢は戸惑いながらも棍棒を掲げる。

 時折、棍棒の先端で『バチバチッ』と、電気が小さく跳ねる。


 それを見守りながら玲実が言う。

「とりあえずひとつ。この調子で武器を集めるわよ」


 そして3人は早速、次の目的地を目指すことにした。


 湿地帯を抜ける際に、先頭を行く望海が中央の矢倉を眺めながらいう。

「たぶん、アレが地図に書いてある建物みたいね。なんだろ? あれ」


 梢もその方向に目を向ける。

「見張り小屋なんじゃないかな」


 望海は「行ってみる?」と、興味がありそうだが、玲実が却下した。


「無駄だよ。だって、あんな高いところ、上れそうにないもん」


 望みは矢倉を注視して納得する。

「あ、そっかぁ。ハシゴでもないと無理だね」


 望海は少しガッカリしているが、あの小屋の中にヘレンが潜んでいるとは知る由も無い。


 地図と地形を見比べながら梢が前方を指差す。

「お姉ちゃん。その先を左だよ」


「分かってるって。その先がジャングルになってんだよね」


 何事も無く順調なペースで3人は湿地帯を抜け、さらにジャングルの森へと足を踏み入れる。


 そして数歩進んだところで「あ!」と、望海が立ち止まった。


 それに呼応するかのようにモエが「あ」と、顔を上げる。


 ちょうど森の入り口付近で3人組はモエと出くわした。


 モエが警戒を解く。

「なんや。あんたらか……」


 所在なさそうに突っ立っているモエのことを望海が不思議そうに見る。

「そっちこそ何やってんの? こんなところで」


「ああ……ちょっとな」と、モエは言葉を濁す。


 見張り小屋を見張っていたとは敢えて口にしなかった。


 梢が、モエの立っている位置から数メートル先にシートがあることに気付いた。

「あれ? あれは……」


 見るとシートの傍で、ともに地べたに座り込んでいる乙葉と詩織の姿が見える。


 玲実が異変に気付く。

「どうかしたの?」


 玲実に問われてモエが目を逸らす。

「いや。ちょっとな……」と、モエの歯切れが悪い。


 玲実が「ねえ! 何やってんの?」と、乙葉達に声を掛ける。


 しかし、乙葉と詩織は玲実達に顔を向けようともしない。


 望海と梢が顔を見合わせて同じようなタイミングで首を傾げる。


 そして梢がシートの膨らみと血痕を見て青ざめる。

「え? まさか……」


 梢はモエ、乙葉、詩織を順に確認する。

 そして一人足りないことに気付いてしまった!


 そんな梢の険しい表情に対して、モエが力なく首を振った。

「野乃花や。ヘレンに撃たれて死んでしもた」


 望海が「うそっ! なにそれ!?」と、反応する。


 梢は真っ青になって口元を覆い、悲鳴を堪える。


 玲実が物凄く嫌そうな顔つきでシートを二度見する。

 そして大きくかぶりを振った。


 わがまま3人組は、何ともいえない暗い雰囲気に完全に飲み込まれてしまった。

 このまま通り過ぎてよいものか、流石の玲実も躊躇ちゅうちょしているようだ。


 やがてモエが髪を掻き上げながら尋ねる。

「あんたら、この先に行くつもりなんか?」


 モエの質問に玲実が代表で答える。

「ええ。そのつもりよ。武器が必要なの」


 そんな玲実の表情を見て、モエは溜息をついた。

「そっか……なるほどな」

 そして考え込む。


 自分達と同じように玲実達3人も武器を集めようとしている。


 探索に非協力的でワガママだった玲実が武器を欲しがるなんて、どういう風の吹き回しかと思った。


 と、そこでモエにある考えが浮かんだ。

 あのオアシスで水中に沈んでいた武器がよぎったのだ。


 それが『グレネード・ランチャー』という名称であることをモエは知らなかったが、形状からして乙葉のショットガンよりも威力がありそうだということは推測できた。


 モエが玲実に向き直る。

「せや。玲実。あんた、武器を探しとる言うたな?」


「そうだけど?」


「だったら取引せんか?」


「取引?」と、玲実は真意を探ろうと上目遣いでモエの顔を見た。


「せや。ウチがあんたの武器の在り処を教える。その代わりにやって欲しいことがあんねん」


 モエの申し出に玲実は警戒する。 

「はあ? 意味わかんないんだけど? 何か企んでる?」


「交換条件や。どや? 悪くない取引やろ?」


 モエの提案に対して玲実は得意げにチラシの裏の地図を見せた。

「要らない。自分で探すから」


 モエが驚く。

「な、その地図……どこで手に入れてん?」


 望海が智世に描かせたものは、驚くほど忠実に地図を再現している。


 玲実はそれをヒラヒラと見せつける。

「フフ。それは内緒。どう? これって、あなた達の持ってる画像と同じでしょ?」


 玲実にドヤ顔を見せられたモエは、一瞬、動揺したが鼻で笑う。

「フン。無理やな。たぶん、自力で探しても見つからんで」


「え? なんでよ?」と、玲実が眉を顰める。


「その地図には載っとらんからや。あんたの武器は×印のところやないで」


「え? そうなの?」


「ウチらが偶然、見つけた。めっちゃ分かりにくい所にあったで」


「だったら教えてよ。どこで見つけたの?」


「せやから交換条件て言うてるねん」


「んもう。何なのよ。私に何しろっていうの?」


「そなに難しいことやない。あんたの武器で撃って欲しいんや」


「はあ? 撃つって何を?」


「ここに来る時、見たやろ。あの見張り台。あれを撃ってくれたらええねん」


「そんなもの撃ってどうするの?」


「あの中に立てこもっとる『人殺し』に復讐するんや」


「ヒトゴロシ? どういうこと?」


「野乃花を狙撃した奴や。あいつを小屋ごと消し炭にしたんねん!」 


「え……それ本気で? え? 中に人が居るの? でも、それじゃ死んじゃうんじゃない?」


「ええねん。いや、できればホンマはこの手で殺りたいトコなんやけどな」


 そう言うとモエは冷めた目つきで含み笑いを浮かべた。


    *    *    *


 結局、玲実はモエの交換条件を受け入れることにした。


 玲実の武器が水中に沈むオアシスは、砂漠の中央付近にあるが、石碑を使えばショートカットできる。


 なので、モエと玲実の2人で回収して来ようということになった。


 森と砂漠を繋ぐ石碑による転送に興奮していた玲実だったが、モエが早足でどんどん先を行くので直ぐに音を上げた。


「超疲れた。もう無理。ちょっと休もうよ」


 モエが振り返って溜息をつく。

「もうちょっとや。ホンマにすぐそこやで」


「ええ……じゃあ、せめてペース落としてよ」


「しゃあないな」

 そういってモエは首を竦める。

 確かに焦っていたと自省する。


 玲実を連れてオアシスまで往復しても夜までには十分、時間はある。

 それなのに、ヘレンに対する怒りにせき立てられていた。


 目的はただひとつ。

 玲実に武器を与えて、あの見張り小屋を攻撃させることだ。


 とはいえ、この我儘わがままなお嬢様に言うことを聞かせられるのか?


 モエは内心、苦慮くりょしていた。

 交換条件とはいったものの、玲実が約束を守るという保証は無い。


 うまく、おだてながらコントロールするしかないのだろう。

 だが、こうやって2人で行動していても正直、あまり仲良くはなれそうになかった。


 モエが歩く速度を緩めたので玲実はホッとして汗を拭った。

「暑いわねぇ。砂漠って、思ったより超、暑いのね。マジで参るわ」


「そらそうや。けど夜は夜で、めっちゃ冷えるんやで」


 玲実が周囲を見回して心配そうに言う。

「ねえ。この辺は変なモンスターとか居ないよね? 隠れるところ無いから怖いわ」


「モンスターやて? ああ、怪物のことか」


「さっきの森。あなた達、あの森の辺りをずっとウロウロしてたんでしょ。ドラゴンには遭遇しなかったの?」


 それを聞いてモエが振り返る。

「え? 何でそれを?」


 モエの反応に玲実が驚く。

「嘘? やっぱ居たの?!」


 モエは静かな怒りを秘めた目つきで言う。

「ドラゴンか。確かに会うたで。けど、何でそのことを知ってるんや?」


 モエの問いに玲実が、一瞬、しまったという顔をした。

 そして言い訳する。

「あ、いや……あの子がね。見たっていうか、絵に描いたっていうか……」


「知っとったんか!」

 モエは立ち止まって大きな声を出してしまった。


 玲実は、あの森にドラゴンが居ることを黙っていたのだ。


 なぜ教えてくれなかったのかと言いたい気持ちをぐっと堪えて、モエは背を向けた。


 そして再び歩き出す。


 無言でスタスタ歩くモエ。

 その背中に声を掛けられない玲実。


 利害関係で一緒にいるだけの2人に会話は無かった……。


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