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十五少女異世界漂流記【改】  作者: GAYA
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第20話 さぼり組、動く!

 お嬢様の玲実れみは、電気コテで巻き毛を手入れしながら望海のぞみの報告を聞いていた。


 そして「ふうん」と、一回だけ興味なさそうに相槌あいづちを打った。


 南風荘組の動きをスパイしてきた望海の情報は、重要なものばかりだった。


 双子の妹のこずえは真剣に話を聞いている。

 しかし、まるで他人事のように聞き流そうとする玲実の態度は望海を苛立いらだたせた。


 望海はムッとしながら尋ねる。

「ねえ、アタシ等も動いた方が良くない?」


 だが、玲実は自慢の巻き髪を手入れすることの方が大事なようで「そうね」とだけ答える。

 それは適当に答えているだけのように望海には聞こえた。


 玲実の代わりに梢が賛同さんどうする。

「そうだよ。アタシ達も武器を持った方がいいよ!」


 心配性の梢にとっては他の子達の動きが気になって仕方がない。


 望海は彼女なりに状況をよく分析しているようで、武器の必要性をく。


「正直、ウチら皆から浮いてるよね? それどころか思ってる以上に嫌われてるかもしれない。昨夜の嫌がらせは、そういうことなんだと思う」


 昨夜の嫌がらせというのは夜中に窓ガラスを何度も割られた件だ。


 委員長気質の眼鏡少女の利恵りえは否定していたが、玲実は利恵が犯人だと踏んでいた。


 望海は客観的に自分たちの立場を把握している。


「他の子達が、どんどん武器を持ったらどうなると思う? 石を投げ込まれるどころの話じゃないよ。たぶん、もっとマズイことになる」


 望海のかたり口に梢が不安げな表情を浮かべる。

「そんなの……嫌だ!」


 望海は断言する。

「でも、争いは起こるよ。間違いなく!」


 流石さすがに玲実も手を止めて望海の言葉に耳を傾ける。

「争い? まさか」と、玲実は首を捻る。


 だが、望海は真剣な顔つきで続ける。


「根拠はあるわ。食料よ。このまま助けが来なければ必ず食料が無くなるはずよ。あのイリアってハーフの子も言ってたことだけど。おそらく食料が減ってきたら奪い合いになるわ」


 さらに望海はモエが自分達だけ武器を持とうとしていること、それに対抗して利恵達も自衛じえいの為に武器を探しに行くこと、過去に何者かが戦った痕跡こんせきがこの島のあちこちに存在することを根拠に自分達も武器が必要だと訴えた。


 しかし、玲実は、まったく乗り気ではない。


 彼女の態度にイライラしていた望海が急に立ち上がって厳しい顔で尋ねる。


「それでも何もしないで、ここに籠城ろうじょうするつもり?」


 すると玲実は、望海と目を合わせようともせずに首を振った。

「他人のことなんてどうでもいい」


 その回答を聞いて望海は小さく溜息ためいきをついた。


 そして、最後通牒さいごつうちょうを突き付ける。

「そう。じゃあ、好きにすれば? アタシ達は別行動させてもらうから」


 そこでピクリと玲実が反応する。


 望海は妹をうながす。

「行こ。梢。アタシ達2人だけで」


 梢は玲実をチラ見して答える。

「そうだね。仕方ないね。一緒に行動するのはこれまでだね」


 望海が歩き出そうとする。

「うん。どこか別な場所に移動しよう」


 双子のやり取りを聞いて玲実の顔色が変わった。


「それは嫌……」

 そう呟いて玲実はコテを床に落としてしまった。


 続いて玲実は「ひとりにしないで! お願い!」と、望海の足にすがりついた。


 その様子は芝居しばいがかっていた。

 だが、小刻みに震えているところなどは演技には見えない。


 高飛車たかびしゃキャラの玲実が取り乱したように懇願こんがんするさまに望海と梢は戸惑った。


 望海が「いや、その……」と、助けを求めるように梢の顔を見る。


 梢も玲実の豹変ひょうへんに驚きながらもフォローする。

「だいじょうぶだから。一緒に行くなら、ね?」


 玲実は泣きながら梢の言葉にウンウンと頷く。


 玲実の態度の急変に望海と梢は言葉を失った。


 何とも言えない空気が流れて玲実の嗚咽おえつだけが聞こえる。


 しばらくして玲実がゆっくり立ち上がった。

 涙で顔はグシャグシャだが、その目は力強さを失っていない。


 梢が「玲実ちゃん?」と、玲実の表情を伺う。


「大丈夫。ゴメン。取り乱しちゃって……」

 玲実の意外にはっきりとした口調に望海も驚いた。


 そして慎重に意思を確認する。

「てことは行くのね? 武器を探しに」


「ええ……行くわ。ひとりになりたくないもの」

 そう言って玲実はしゃんと背筋を伸ばした。


 それはいつもの気高けだかい玲実らしい姿だった。


    *   *    *


 砂漠のオアシスは不思議な空間だった。


 巨大な水溜みずたまりを中心にして、それは砂漠の真ん中に、ぽつねんと存在していた。


 水が溜まっている部分は幼児向けプールぐらいの深さと広さだ。

 んだ水は空の青さを含んでキラキラ輝いている。


 背の高いヤシの木が数本、それ以外にも緑が周囲を縁取ふちどっている。


 その側には大きな直方体の一枚岩いちまいいわが3つ、『コ』の字型に並んでいて日影ができている。


 へそ出し乙葉が水に浸かりながら声をあげる。

「ぬるーい! でも気持ちいーい」


 グラマー野乃花は、つんいで手足を水中に沈めている。

「でも、底の方は冷たいヨ!」


 モエと詩織は日陰ひかげ一息ひといきつきながら、水筒すいとうの水で喉をうるおす。


「元気やな。2人とも」

「そ、そうだね。で、でも気持ち良さそう」


「詩織も入ってきたらええやん」

「い、いや。私はいい。水着、持ってきてないし」


「大丈夫や。乙葉なんかセーラー服のままやん。野乃花かて着替え持ってきとらんのに躊躇ちゅうちょなく飛び込みよったで」


「ま、まあ、すぐ乾くとは思うけど、私は遠慮しとく」


 乙葉と野乃花は小さな子供のように水に浸かってはしゃぐ。


 しばらくして野乃花が「ひょっ? 何だコレ?」と、素っ頓狂とんきょうな声をあげた。


「どうしたの?」と、乙葉が下半身を水にひたしたまま、野乃花に近付く。


「ワワ、こ、これって!」


 野乃花はひとりでパニックになりながら手を水中でバタバタさせている。


 そして「エイ!」というけ声と共に水中から何かを引っ張り上げた。


 はじめはそれが何か誰も分からなかった。

 だが、それが銃のような物であることに気付くのにそう時間はかからなかった。


 乙葉が目を丸くする。

「嘘!? これってショットガン?」


 確かにそれは乙葉のショットガンに似ている。


 だが、それよりは銃身じゅうしんが、ずっと短くて全体の造りが重厚じゅうこうな感じがする。


 真ん中には大きなシリンダーがえられていて、そこに短い銃身が直結しているようにも見える。


 正確には『グレネードランチャー』なのだが、モエ達はそれに対する知識は皆無だった。


 野乃花が「重いヨ~ てか、何コレ?」と、乙葉にそれを持たせようとする。


 受け取った乙葉が感想を口にする。

「まるで小さな戦車だね。これはどうやって構えるんだろ?」


 乙葉は色々と試してみるが、ライフルやショットガンのように構えるには重すぎた。


 そこで小脇こわきかかえるようにして左手で銃身の下にあるグリップを持つのが最も安定することに気付いた。


 勿論、引き金は固くて引けない。


 モエと詩織も水の中に入ってきた。

「おーい。どないしてん? なんやそれ」


 野乃花がグレネードを見つけた場所は、少し深くなっていて腰のあたりまで水にかってしまう。


 モエがグレネードを眺めながら言う。

「なんや? これも武器なんか?」


 詩織が目をパチパチさせる。

「で、で、でも、地図の池に×なんかついてたっけ?」


 モエは首を振る。

「いいや。×がついとったんは、もうちょい上や。白い☆のところに2つ」


 モエはそう言いながら地図の中の位置関係を思い出していた。


 はじめ、このオアシスは目的地だと思っていた。

 しかし、『☆』印に該当するようなものは見あたらない。


 地図上の『☆』印は、微妙にこのオアシスの上に位置しているようにも解釈できる。


 さらに☆に『×』が2つ重なるように書かれていたので、武器があるとしたらそこだとモエ達は考えていた。


 それなので思わぬところで発見したこの武器に違和感を覚えたのだ。

「その武器は地図と合わへん……そういうパターンもあるんやな」


 そのとき、乙葉が「やっぱりあった!」と、水中から何かを引っ張り出した。


 好奇心旺盛こうきしんおうせいな元気娘の乙葉は、いつの間にか潜って水の底を探していたのだ。


 グラマー野乃花が「エ? 何が?」と、乙葉の引き上げた物体を注視ちゅうしする。


 詩織が「お、お、お墓……」と、顔を強張こわばらせる。


「ホンマや。例のやつか。どれどれ」


 モエが十字架に刻まれた文字に目を凝らす。

「レ、ミ……玲実か」


 モエの言葉に野乃花が頷く。

「みたいだネ」


 乙葉が十字架じゅうじかを、しげしげと眺めて首を捻る。

「なんで水の中に? 地図上の記載きさいとはちょっと違うよね?」


「せやな。地図だと二つの×が隣接しとるし、☆に相当する何かがあるはずや」


 乙葉が尋ねる。

「レミなんて子いたっけ?」


 野乃花が答える

「居たヨ。ちょっとお嬢様風の綺麗な子」


 乙葉が思い出してゲンナリする。

「ああ。あの問題児もんだいじね」


 そこで詩織が「も、も、もしかして!」と、口を開く。

「ち、ち、地図には、バ、バツの印が11個しかなかったよね?」


 乙葉が「え? そうだっけ?」と、きょとんとする。


「せや! バツの数が足りひんてことや」


 野乃花はピンと来ない。

「どういうコト? 野乃花わかんないヨ」


 詩織は、野乃花にも分かるように丁寧ていねいに説明する。


「だ、だから、私達の人数。ほ、ほら。15人居たでしょ? ひとり欠けちゃったけど。と、と、ということは武器の数も15あるはずなのよ」


「せや。なのに地図上の×は11個。4つも足りへんのや」


 野乃花が不安そうな表情を見せる。

「エ? じゃあ、野乃花の武器は無いかもしれないってこと?」


 野乃花の泣きそうな顔を見て乙葉とモエが顔を見合わせる。


 そこで詩織が首を振る。

「そ、そうとも限らないよ」


「なんでや? せやかて×の箇所が……」


「で、でも、現にここに武器とお墓が、あったよね? ち、地図にない場所にこれがあったってことは、か、必ずしも地図が合ってるってわけではないんだよ。きっと」


 乙葉が納得する。

「なるほどね。私が見た見張り台の地図は誰が書いたものか知らないけど、書きかけだったのかもしれない。あるいは全体像は把握はあくできてないってことなのかも?」


 詩織が頷く。

「お、お、お墓だよね。元々は。と、ということは、この地図を書いた人は、少なくともその時点では生きてたってことになるよね?」


 モエも合点がてんがいったようだ。

「なるほどな。アレを書いた人間が死んだか、生きてここを脱出したかは分からへんけど、あの×印は誰かが死んだ場所を示しとるんやな……」


「マジで?」と、乙葉が嫌そうな顔をする。「誰かが死んだ所に私達の武器があるなんて気持ち悪い。しかも私たちの名前入りのお墓とか……」


「それが分からへんのや。なんでウチらの名前が墓なんかについとるんやろ?」


 改めて理不尽りふじんとも思える事実に4人は嫌な気分になってしまった。


「とりあえず。水から上がろや」


 野乃花が「コレはどうするノ?」と、グレネードを持て余し気味に言う。


「置いとけばええやん。どのみちウチらには使えんのやし」


 乙葉も冷めた口調で同意する。

「そうだね。別にあの玲実って子に教えてあげる義理も無いし」


 それを聞いて野乃花が「了解~ ホイ!」と、手を放す。


『ドポン』と水中に沈むグレネードランチャー。


 それを眺めながらモエが「ほな、行こか」と、皆をうながした。


 目的の場所には×印が2つある。


 ということは2つの墓と2人分の武器があるはずだ。


 それに『☆』の記号の意味も気になった。


 野乃花か詩織の武器があれば良いのだが……謎は深まるばかりだ。



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