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十五少女異世界漂流記【改】  作者: GAYA
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第2話 人の消えた町とショットガン

 小さな港町のメイン通りと思われる道路をはさんでは10軒ほどの民宿が並んでいる。


 おそらくは釣り人を相手にした商売なのだろう。


 どの建物にも軒先のきさきにバケツや釣竿、網が干されている。

 漁師が履くようなゴム製の長ズボンも吊るされている。

 それらはどれも民家を改造したような素朴な宿だった。


 雑貨店のような入口を構える民宿の前で、ショートボブでグラマーな野乃花と、へそ出しセーラー服の乙葉が声を張り上げている。

「スミマセーン!」

「誰かいませんかぁ!」


 店の中からは何の反応も無く、2人は顔を見合わせる。


「駄目だ」と、乙葉が顔をしかめる。

「誰も居ないのかナァ」と、野乃花が耳をそばだてる。


 しんとした店内には人の気配がまるで無い。


 カップ麺やスナック菓子、缶詰や米が陳列された棚は、何となくほこりかぶっていそうな印象を受ける。


 洗剤やテッシュなどの生活雑貨も売られている。


 しかし、店番みせばんをしている人間が居ないのに入口は開けっ放しだ。

 しかも奇妙なことに柱の日めくりカレンダーの年号がなぜか26年前になっている。


「なんか怖いヨ」と、野乃花は乙葉の服をまんだ。


 そのせいで乙葉のお腹が露出する。

 乙葉のセーラー服はすそが短いのでぐにおへそが見えてしまうのだ。


「ちょっと野乃花! 引っ張んないで。お腹、出ちゃうんだけど」

「あ、ゴメン」


 赤いリボンのセーラー服姿の乙葉に対して、野乃花は赤い蝶ネクタイ付きのブラウスに膝上20センチのスカートをいている。


 中わけショートボブの彼女は童顔どうがんな割に女らしいムッチリした体つきをしているので太ももの露出が目立つ。


 結局、誰も居ないので2人は諦めて通りに出た。


 すると他の民宿で同じように声を張り上げる『ぽっちゃり系』の和佳子とツインテール桐子の姿が目に入った。


 へそ出し乙葉が難しい顔をしながら和佳子たちに近付く。

「あっちは駄目だったよ」


 それを聞いて、ぽっちゃり和佳子が首をすくめる。

「ここも同じみたい」


 ツインテールの桐子も「人っ子ひとり居やしねえ」と、首を振る。


 そこに愛衣めい敏美としみが合流する。

「駄目ね。誰も居ないわ」と、愛衣は首を振る。


 ラインが紫色の古風なセーラー服を着た愛衣がそう言うと何だか重みがある。


 その隣で敏美が三つ編みを揺らせながら大きく頷く。


 そこに眼鏡っ子委員長の利恵も加わった。

「そっちはどう? こっちは誰も……」


 揃って首を振る面々。


 へそ出し乙葉は呆れたように言う。

「なんで? 入口は開いてるのに?」


 グラマーな野乃花は「みんなどこに行っちゃったのカナ?」と、鼻にかかったような声を出す。


 ぽっちゃり系の和佳子はアヒル口で首をかしげる。

「お祭りとか運動会とかで、どこか一か所に集まってるとか?」


 民宿街には住人の姿が、まったく見られなかった。


 それどころか静かな街並みには犬や猫などの生き物すら存在しない。

 その奇妙なシチュエーションに7人は言葉を失った。


 沈黙を破るように姉御風あねごふうの愛衣が口を開く。

「もう少し奥に行ってみる?」


 愛衣が落ち着いて見えるのは古風なセーラー服のせいもあるが膝下丈ひざしたたけのスカートをいているのもある。


 やや茶髪がかった編み込みアップスタイルの髪型はヤンキーというほどではないが姉御肌っぽい雰囲気をかもし出している。


 そんな愛衣に敏美が同意する。

「ですよね。じゃあ、山の方ですかね」


「そうね。高いところに登ってみるのも手かも」と、愛衣は山を見上げる。


 それを聞いてぽっちゃり和佳子がゲンナリする。

「ええ~ 山登るのやだ。疲れたし。お腹すいた」


 ぽっちゃり系の和佳子はデブではないが肉付きが良い。

 ただ、見た目の通り運動は好きではないようだ。


 姉御肌の愛衣が皆の顔を見ながら言う。

「じゃあ、二手に別れましょう。私は乙葉さんと利恵さん、それから桐子さんと上に行ってみるわ。敏美は和佳子さんと野乃花さんで砂浜が見える方に行ってくれるかしら」


 敏美は不満そうに「ええ~ わたし、先輩と一緒がいいのに」と言ったが、愛衣に「頼んだわよ」と言われて渋々、了承した。


 山登りをまぬかれた和佳子はホッとしている。


「さ、行きましょ」と、委員長気質の利恵が先頭で歩き出す。


 民宿街の途切れたところで道が分かれていた。


 山道に向かう愛衣・利恵・乙葉・桐子。


 砂浜の方面には敏美・和佳子・野乃花が向かうことになった。


    *   *   *


 山道をしばらく登ったところで、こじんまりとした神社があった。


 短い石段を上って振り返ると民宿街を見下ろすことができる。


 小さめの鳥居とりいから本堂までは10メートルほどしかない。

 そこにいたるまでの石畳いしだたみには狛犬こまいぬがワンセットで配置されている。


 眼鏡っ子委員長の利恵が汗を拭いながら境内けいだいを見回す。

「ふう。ここも誰も居ないか……」


 木製の鳥居には小さな穴が幾つも空いている。


 へそ出し乙葉がそれに気付いて苦笑いを浮かべる。

「ちょっと、なに? この神社。超ボロくない?」


 ツインテールの桐子が男言葉で「なんか色々とすさんでんなぁ」と、頷く。


 良く見ると鳥居の穴は銃弾を受けたような痕跡こんせきだった。


 向かって左側の狛犬は顔の半分が欠けているというよりもスッパリと切り落とされている。

 それに石畳には焼け焦げたような跡が見受けられる。


 それらを観察しながら乙葉が呆れる。

「誰かが暴れたみたい」


 乙葉と桐子は真っ直ぐ本殿ほんでんに向かう。


 桐子が本殿に入る階段の手すりに何気なく目をる。そして黒く変色した血の手形を発見した。

「ん!?  なんだコレ?」と、桐子の顔が強張こわばる。


 その時、本殿の裏で愛衣が大声を上げた。

「みんな、ちょっと来て!」


 姉御肌の愛衣に呼ばれて利恵、乙葉、桐子が急いで本殿裏に集まる。


 裏手に回った途端にツインテール桐子が「え!?」と、立ち止まる。


 へそ出し乙葉も目を丸くする。

「お墓!? 神社なのに?」


 委員長タイプの利恵は眼鏡を触りながら目をしばたたかせる。

「お墓にしては真新しいように見えるけど?」


 集まった3人の反応を眺めながら愛衣が腕組みをして直立している。


 そして彼女の側には十字架じゅうじかかたどった白い墓標ぼひょうがあった。


 さらに墓標には白っぽい色のショットガンが立てかけてある。


 ツインテール桐子がショットガンに手を伸ばす。

「この銃はなんだ? 誰がこんなもの……」


 桐子は細い腕を伸ばしてショットガンを拾い上げると、それを構えてみせた。

「わお。ゲームの武器みたいだ」


 ショットガンのバレルや銃身は白く塗られていて神殿の装飾のような模様が金色でほどこされている。


「随分、派手ねぇ」と、へそ出し乙葉が感心する。


 桐子が「やべぇ。本物みたいだ」と、ふざけてショットガンを乙葉に向けた。


「ちょっと、やめてよ!」


「おもちゃだよ。ホラ。引き金、引けないし」

 桐子はそう言って引き金を引いてみせたが、びくともしない。


 それを見て安心した乙葉が抗議する。

「もう。止めてよね」


 ショットガンで遊んでいる2人をよそに墓標を観察していた委員長利恵の表情が引きつる。

「ちょっと……これ……」


 へそ出し乙葉が利恵の横に来て墓標を覗き込む。

 そして「いっ!?」と、しり込みする。


 墓標には『OTOHA』と刻まれている。


「こ、これは……」と、乙葉が激しく動揺する。


 利恵が顔を強張らせながら言う。

「ぐ、偶然だよ。偶然……」


 そこにショットガンを持ったままのツインテール桐子が寄ってきて冷やかす。

縁起えんぎ、悪ぃ。てか、この銃の持ち主がオトハって名前の人なのかもよ」


 そう言って桐子はショットガンを乙葉に押し付けた。

「ちょっと止めてよぉ」と、乙葉が引きつった笑顔でそれを受け取る。


 桐子が「乙葉。試しに引き金引いてみなよ」と、あおる。


「なに言ってんの。どうせ、おもちゃなんでしょ……」

 乙葉が苦笑いしながらショットガンをぎこちなく構える。


 そして引き金に指を掛けるとカチリと引き金が動いた。


『バンッ!』という発砲音! 


「ヒッ!」と、眼鏡を飛ばしながら利恵が尻もちをつく。


「ちょ……マジかよ」と、腰を抜かしたツインテール桐子のミニスカートからは、ピンクの下着が丸見えになっている。


 姉御肌の愛衣は腕組みしたまま固まっている。


「な、なんで?」と、撃った張本人ちょうほんにんの乙葉が呆然とする。


 銃口が向けられていた方向では散弾さんだんが本堂の壁に無数の穴を開けていた。


 乙葉は「玩具おもちゃじゃないじゃん!」と、ショットガンを放り出す。


「嘘だろ? さっきは確かに……」と、桐子が信じられないといった風に首を振る。


 委員長タイプの利恵が立ち上がりながら訴える。

「と、とにかく、そんな危ない物は返して!」


 ツインテール桐子は納得がいかなそうな顔でショットガンを拾い上げる。


 そして試しに引き金を引いてみるが固くて動かない。

「やっぱダメじゃん。さっきと同じだ」


 利恵が「ちょっと桐子さん! 危ないから!」と、青ざめる。

「おっかしいなぁ」と、首をひねりながら桐子がショットガンを墓標に立てかける。


 しばらく呆然としていた4人だったが、愛衣が疲れたような顔で皆を促す。

「いったん戻りましょ。島民はここにも居ないみたいだし」


 利恵も神妙な顔つきで頷く。

「確かに。これより上に行っても無駄だと思う」


 山道を登ることを断念して4人は来た道を戻ることにした。


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