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十五少女異世界漂流記【改】  作者: GAYA
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第19話 武器探索

 委員長気質いいんちょうきしつ利恵りえが中心となる南風荘なんぷうそう組は、多数決で武装することを決めた。


 ツインテール桐子きりこは、自分を納得させるように何度かうなづく。

「そういうことなら仕方ないね。ボクも出来るだけのことはするよ」


 桐子は武器を持つことに最後まで反対していた。

 だが、皆で決めたことには素直に従うつもりのようだ。


 ただ、何か気に掛かることがあるようで、智世のスケッチブックの地図を眺めながら首をひねる。

「11個か……なんでだろ?」


 利恵が桐子の顔と地図を見比べながら尋ねる。

「11個? 何が?」


 桐子はあごに指をえながら答える。

「バツの数だよ。もし、このバツ印が武器の位置を示してるなら15個あるはずなんだけどな」


 利恵がその言葉の意味に気付く。

「そっか! 私達15人分の武器があるなら『×』の数が足りないってことね」


 利恵の指摘に他のメンバーが顔を見合わせる。


 桐子は疑問ぎもんていする。

「おそらく、ひとりにつき武器は1つ。そう考えると、この地図のバツ印が正確とは限らない」


 ぽっちゃり和佳子わかこが顔をしかめる。

「あれえ? でも、砂浜のバツ印は私の武器があった所だよ?」


 イリアは冷静に分析する。

「私の武器も病院にあった。それも地図上のバツと一致する。偶然にしては出来過ぎだわ。ひとつやふたつなら偶然かもしれないけれど」


 利恵も頷く。

「そうね。乙葉さんの武器、ヘレンさんの銃もバツ印の場所と一致するわ。てことは、やっぱりこのバツ印は合ってるんじゃないかしら?」


 和佳子は険しい表情で利恵の言葉に付け加える。

「それからモエって子の台詞。あの子の武器もバツ印と一致してたはずだよ。この森の方角」


 そうなると、やはりこの地図のバツ印は武器のを指し示していると考えるのが妥当だとうだ。


 利恵はメガネに触れながら確信する。

「そこまで一致してるなら、信じるしかないわね。この地図は武器の位置を正確に記しているのよ!」


 ツインテール桐子が頷く。

「なるほどな。だからモエって子は、この地図の存在を隠そうとしたのか」


 この地図は、乙葉がある場所で入手した画像が元だが、モエはこれを皆で共有することを拒んだ。


 ぽっちゃり和佳が心配する。

「もし、争いになった場合、武器を持たない子は不利になってしまうね」


 利恵は腕組みしてうなる。

「うーん……バツ印が足りないってことは、武器が手に入らない場合もあるのね」


 イリアが推測する。

「確かに、武器を得られない子が居たら……いや、何でもない」


 桐子は頭がこんがらがってきたようだ。

「ううっ! どう解釈したらいいんだ? なんで人数分の×が無い? 単に書きかけの地図ってことなのか?」


 それを受けて考え事をしていた姉御肌の愛衣が口を開く。

「これ以上考えても仕方が無いわ。取りあえず、バツ印を頼りにその場所に行ってみましょう」


 結局、武器探索のチーム分けは、イリア・智世・桐子の3人。

 そして利恵・愛衣・和佳子の2組になった。


 怪我人けがにんであるヘレンは頭数あたまかずには入れないことにした。

 だが、一応、声をけておこうと、桐子が松の間に向かった。


 しかし、いつの間にかヘレンの姿はそこに無かった。


 ヘレンが消えたという報告を聞いて委員長の利恵が心配する。

「どこに行ったのかしら? 2階は?」


 桐子が首を振る。

「いや。2階は立ち入り禁止にしてるだろ」


 敏美としみが首を斬られて惨殺された事件の後、2階への階段は立ち入れないように椅子やテーブルを積んでバリケードを組んでいるのだ。


 それに、死体しかない2階にヘレンがわざわざ行く必要性は無いはずだ。


 そこで、これまで一言も発言しなかった智世ともよが申し訳なさそうに口を開く。

「あ、あの金髪の子、ひとりで出て行ったよ。お昼ちょっと前に」


「え!? そうなの?」と、利恵が驚く。


「う、うん。リュック背負って銃を持って行った」

 智世はそう言って食堂の方を指差した。


 その方向には食堂があり、中には非常口として外に出られる箇所かしょがある。

 恐らくヘレンは黙ってそこから出て行ったのだろう。


 利恵は困ったような顔で首を振る。

「あんな大ケガで大丈夫かしら」


 それを聞いてイリアが「大ケガだって?」と、反応する。


 桐子が「ああ、そういえば君達には詳しく話していなかったね」と、イリアと智世に昨日の出来事を説明した。


 普段はクールなイリアも流石さすがにヘレンがモエの戦斧せんぷで傷つけられたくだりでは顔をしかめた。


「そんなことが……で、傷は深いの?」


「結構、重傷じゅうしょうだよ。ボクと利恵で止血したんだけど中々《なかなか》血が止まらなくて大変だったんだ」


 イリアは、やれやれといった風に首を振る。

「そう。もしかしたら薬が役に立ったかもしれないのに……」


 桐子が「薬だって?」と、目を丸くする。


「ええ。止血剤も痛み止めもあるわ。昨日、雪の街の病院で調達ちょうたつしてきたの」


「なんだよ。早く言ってくれれば良かったのに」


 桐子はそう言って残念がるが、昨夜のイリア達は疲れ果てていて誰と話すでもなく風呂に入って直ぐに眠ってしまったのだ。


 イリアが「ごめん。そうだよね……」と、うつむく。


「しょうがないよ」と、智世がイリアの手を握る。

「イリアちゃんは悪くないよ。彼女が戻ってきたらてあげればいいじゃない?」


 利恵がそれを聞いて言う。

「私からもお願いするわ。ヘレンさんを治療してあげて。病院の薬があるなら心強いもの」


 その時、13時を示す時計の音が流れた。


 それを聞いて桐子が立ち上がる。

「行くなら早く出ないと。暗くなるまでにはここに帰ってきた方がいい。夜は危険だ」


 利恵も立ち上がる。

「そうね。夜までには戻ってくるようにしましょ」


 ヘレンの行方は気になったが、利恵・愛衣・和佳子の組は砂浜で和佳子のトライデントを回収し、山道を経由して『★』と『×』が並ぶ箇所を目指すことにした。


 一方のイリア・智世・桐子組は、港を越えた森の先にある『×』印をあたることにした。


    *   *   *


 モエ達4人は、温泉に隣接する小屋を出発して移動中だった。

 ジャングルを抜けた先は砂漠地帯だ。


 乙葉おとはのスマホにおさめられた地図を眺めながらグラマー野乃花が言う。

「なんだかこの島、ハガタカの頭みたいだネ」


 並んで歩く乙葉がそれを聞いて突っ込む。

「なにそれ? ハゲタカって、どの辺が?」


「ン。この辺が。クチバシをパカァって開けたみたいじゃない?」


 野乃花には、この島がハゲタカの頭部を真横から見た図のように見えるらしい。


 確かにそう言われてみれば左方向を向いたハゲタカに見えなくもない。

 どちらかというとディフォルメされた漫画チックなハゲタカだ。


 島をハゲタカの頭部に見立てると、まず口が港、上のクチバシが民宿街、砂浜へと続く。


 反対に下のクチバシは湿地帯にあたる。


 その下クチバシからアゴに向かってジャングルがあって、この地図では真下部分にあたる温泉のある小屋は首の付け根といったところだ。


 また、山の部分は目に見えなくもない。そして、額から頭頂部にかけては雪に覆われた場所ということになる。


 詩織がスマホを覗き込みながら笑う。

「お、面白いね。そ、そうなると、この先は後頭部かな?」


 そう言って詩織が指差したのは地図で言うと右下、ハゲタカの後頭部にあたる部分だ。


 黙々《もくもく》と先頭を歩いていたモエが呆れる。

「何がハゲタカやねん。早よ行くで。暑うてかなわん」


 4人は残る武器を求めて砂漠地帯を歩いている。


 ジャングルのすぐ隣に、こんな広大な砂漠が存在すること自体、異様いように思われた。


 しかし、異形いぎょうの生物や武器が存在することを考えれば今更いまさら、驚くほどのことは無い。

 今となっては目の前の現実を黙って受け入れるしかないのだ。


 乙葉がセーラー服のスカートをバサバサまくってあおぐ。

「ああ! もうっ! 全部、脱ぎたい! てか水着で良くない?」


 グラマー野乃花もバテ気味で汗を拭う。

「そうだよネ。でも日焼けしちゃうヨ」


 そういう野乃花のデニムのホットパンツもピンクのTシャツも汗でびっしょりだ。


 モエは前方を見ながら溜息ためいきをつく。

かわえせえへん光景やなあ。どれぐらい来たんか分からんようになるわ」


 モエが、ぼやくように肌色の濃淡のうたんだけで構成される砂漠地帯のビジュアルは単調で、延々《えんえん》と砂山が並んでいるだけのように見える。


 そのせいで遠近感えんきんかんが狂ってしまう。

 頼りは地図に示された目印だけだ。


 詩織が風呂にのぼせた時のように顔を紅潮こうちょうさせて言う。

「そ、そろそろ何か見えてきてもいい頃だよね?」


「おかしいな。ホンマに迷ったんやないやろな?」


 モエの言葉に野乃花が泣き言をいう。

「そんなのヤダ! このままじゃ暑くて溶けちゃいそうだヨ」


 足元からは照り返しの熱が容赦ようしゃなく上がってくる。

 汗がめどなく流れて4人は汗だくだ。


 モエがグイッと首の汗を拭って皆をはげます。

「みんな頑張りや。もうすぐ何か見えてくるはずやで。地図を信じるんや」


 地図によるとこの砂漠の右端にはオアシスのような場所がある。


 具体的にオアシスと書いている訳ではなかったが、池のように見える楕円形だえんけいにヤシの木のようなイラストがえられていることから、モエはそれがオアシスではないかと踏んでいるのだ。


 ここまで来るのに2時間は歩いているだろうか。


 さらに30分ほど進んだところでモエが最初にそれを発見した。

「あったで!」


 砂山をひとつ越えようと頂点に立った瞬間、前方に黒っぽい岩、そして青と緑が目に入ったのだ。


 モエに続いて頂点に到達した乙葉が顔を輝かせる。


「やった! わあい!」

 乙葉は歓喜の声をあげながら突然、走り出した。


「ちょい待ち」と、モエが止めようとするが、乙葉は結構なスピードで駆け下りていく。

「おいおい。焦ったらアカンて……」


 目的地は、ここからはそれほど離れてはいないが、この炎天下えんてんかでのダッシュは熱中症ねっちゅうしょうになりかねない。


 心配するモエをよそに乙葉は元気にけていく。


 その後姿うしろすがたを見て野乃花が、ほっぺをふくらませる。


「乙葉ちゃん、ズルいゾ!」

 そういって野乃花まで走り出す。


「なんやねん。さっきまでヘロヘロやったくせに」と、モエは苦笑いを浮かべる。


 そこに遅れて到達した詩織も野乃花達の後姿に目を細める。

「よ、よっぽど嬉しかったんだろうね」


「せやな。ま、ええか。ウチらも急ご」

「う、うん。そ、そだね」


 砂漠にオアシス。

 地図上ではその近くに『☆』印と×が2つ記されている。


 武器やお墓、あるいは何かあるとしたら、この場所だと思われるが……。


 何も考えずに水に向かう、へそ出し乙葉とグラマー野乃花とは対照的に、モエは気を引き締めた。


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