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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

拷問おじさんの手作りスープ

作者: ヒロモト
掲載日:2023/11/16


梅木組は今。全盛期を迎えていると右目に眼帯をしたイカツイ体の若頭補佐の織田は思っていた。

梅木組は街のよろず屋として草むしりからドブさらい。チンピラ達の喧嘩の仲裁。風俗のツケを貯めている客への取り立て……街の住民が困っているなら何でもやった。

今どき珍しい任侠系の極道として信頼も厚い。

大浴場には自分を含め4人の構成員がいる。

銃創と刺し傷だらけの元傭兵で寡黙な舎弟頭の黒岩。

身体を洗いながらも鋭い眼差しで出入り口と夜景の見えるガラス張りの壁を警戒している。


「力を抜け黒岩。ここは地上20階だぞ?海外じゃないんだ。誰もガラスを突き破って飛び込んじゃこない」


「はい」


元傭兵として言いたいこともあるだろうが、余計なことは何も言わずやるべきことを自分で考え即座に行動に移す。

組織に1人はいて欲しい男だ。

殺しからご近所トラブルまで全力でこなす。

織田が黒岩に出会った時。黒岩はヤクザに喧嘩を売ってまわる死に場所を探す街のキ○ガイだったが、織田と命がけの喧嘩をして敗北し、織田に惚れ梅木組に入った。


「〜♪〜♪」


全裸で踊るバタくさい顔のハンサム。与路島よこしまミゲル。

傭兵を辞めた黒岩が組に誘ったハーフの男でターバンを被ればアジアンセレブ。宮廷衣装を着れば高貴な欧州の王子様にも見える。

たくさんの女をソープに沈める撃墜王であり、ご近所の奥様方のアイドルだ。

ハイビスカスの入れ墨も世界でこいつしか似合わない。


「織田さんも踊りませんか?」


「踊らねぇよ」


「黒岩は?」


「ノー」


「あれま」


極道にしては目上に対する口の聞き方が軽すぎるが、不快な感じはしない。

これがセカンドパートナーどころかトゥエンティーパートナーまでいる男の魅力だろうか?

組では舎弟だが舎弟頭の黒岩と五分の兄弟分なのでポジションがややこしい。


「……」


3人から少し放れた場所で防水使用の自作タブレットでなにやら作業をしているのが下っ端の岡江水琴ミコトである。

長い髪で身体が細くヒゲも体毛も生えていないので女に見える。


「風呂でタバコを吸うやつぐらいは見たことあるけどタブレットってのは初めてだ」


「すいません。……依存症なもんで」


目上の人間の前で無許可でモバイルを使うなんて本来許されない。織田はぶん殴って躾けてやりたかったが、ミコトは梅木組の稼ぎ頭である。

裏バイトの斡旋からハッキング。大麻成分の含まれたグミの販売。

この世界にいて危ない橋を渡りながら軽犯罪、指導も含めて一切警察にデータが残っていないのも素晴らしい。

ミコトは梅木組に履歴書持参でやってきた男で、組長の梅木に気に入られ組員になった。

いくら何でも無謀だろうと織田は思ったが、彼は結果を出した。


今の梅木組は全員優秀だ。

金を生み出していることもそうだが、何より『危険察知能力』が非常に高い。

この梅木組で最も必要な能力だ。


「ちょいなちょ〜いな〜♪よいよい♪皆さんこーんばーはーと」


あばら骨が浮かび上がる程痩せた気の弱そうな中年男が浴場に現れた瞬間、空気が一気に重たくなるのを感じた。

黒岩は鋭い眼差しを止めて目尻を下げ、ミゲルはダンスを止めて笑顔を消し、ミコトはタブレットを伏せて床に置いた。

そして全員が立ち上がりタイミングを合わせ金原に最敬礼をした。


(これがこいつらの優秀なところだ)


梅木組若頭。金原。

暴力の世界において『悪魔』と呼ばれる拷問魔。

自分が家族とみなした者や警察などには絶対に何をされても怒らないが、敵とみなせば容赦なく痛めつける。

織田以外の組員はみな予備知識無しで金原が一番危険なやつだとすぐに察知し服従している。


(俺以外は兄貴の拷問を見たことがないのにな)


金原の拷問を見せられるのは若頭補佐の織田の仕事だった。


(もしかしたら初対面でタメ口だったのを根に持ってるのかもな)


「織田君。湯加減はどうです?」


「最高ですね」


「ソープランドにしちゃあ上出来でしょう?イオンなんたらのなんとか石の湯らしいです」


「勉強になります」


『みんなでお風呂入りに来なさい』と金原から事務所に電話がかかってきたので組員総出で金原が取り立てを承った風俗ビルにやってきた。

金原が来いと言ったらすぐに来なくてはいけない。


「この景色を皆に見せたかったんです」


ガラスの前に仁王立ちする金原。

「ありがとうございます」と礼をする4人。

織田はチラリとガラスに映る金原のペニスを見た。

1センチあるかどうかの真正包茎だった。


風呂上がり、織田は金原に別の階の浴室に呼ばれた。

浴槽の中の湯はボコボコと音を立てて沸騰している。


「何でも三日坊主の私にもとうとう趣味が出来ました」


それが料理だと言う。


(……ソープランドで料理って)


「料理の命は火力!ソープランドのボイラーって凄い火力ですね」


「はい」


『臭い』とは言えなかった。

織田の目の前には3日間煮込み続けた『ソープを使用して未払いで逃げてブラックリストに入れられた』浴槽一杯の『よそ者』のスープ。

金原に捕まり、身ぐるみを剥がされ拘束され生きたまま煮込まれたのだろう。

金原の拷問に馴れつつある織田もこれには効いた。

胃から口内に上がってきた昼飯の親子丼を慌てて飲み込んだ。

織田はこのスープをゴロッとしたトマトの原形が残った骨付き肉のスープと思い込む事で発狂を免れた。


「どれ。味見を」


金原がオタマでスープをすくって「アチチ」と言いながら飲んだ。

ただでさえ垂れている眉がさらに垂れた。

当たり前だが美味くはないようだ。


「料理……飽きました。私が長続きする趣味ってこの世に無いのかもしれません」


舌をペロっと出して笑う金原を見て織田は


(あんたはいい加減拷問に飽きろ)


と心のなかでツッコミを入れた。















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