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近くて、遠い   作者: ミノミーの
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第一章 2

 沈みゆく夕日があたり一面を茜色に染める。

 放課後、静かな田んぼ道を家に向かって歩いていた。

 隣には美香がいる。彼女と一緒にこの道を歩くことが、私の小さな楽しみだった。

 次から次へと話題が途切れることなく出てくるというわけではないから、無言の時間が多いのだけれど。いや、むしろそっちのほうが多いな。

 何も話していなくても、美香の隣は私にとって、落ち着いていられる場所のひとつだ。

 たまに彼氏とか彼女の隣が一番落ち着くなんていう人がいる。なんだよそれ。爆発しろよ。

 ……決してひがみではありませんよ、これは。

 こんなことを考えられながら歩いていられるのも、今隣にいるのが美香だからだろう。隣にいるのが彼女以外であったなら、もっとこう、あれこれ考えてしまう。

 家までの道のりの半分くらいまで来たとき、ふいに美香が口を開いた。


「愛華、彼氏作る気ないの?」


「かれっ……え?」


 突然のことに戸惑ってしまう。思い出してしまうから、この話題はできるだけ避けるようにしていた。それに美香もおそらく気づいていたのだろう。

 今日の昼にあんな話をしたからか……。今回ばかりは避けることもできなそうだ。


「いい加減彼氏作って慣れないとさあ、それいつまでも治んないよ?」


「うっ……わかってるよ。でも……」


 私だって、わかってはいるのだ。こんなトラウマいつまでも持ってても仕方がないし、私にとって損にしかならないことくらい。

 ……でも、頭ではわかってても克服が難しいのがトラウマというものだ。

 うなる私を横目に見ながら、美香が言葉を続ける。


「あんなことがあったんだし、気持ちは十分わかるよ。でも――」


「されたこともないくせに、簡単に気持ちがわかるだなんていわないでよ!」


 反射的に言い返してしまう。中途半端に同情されるのは嫌だ。だが、後になって考えるとあんなふうに言い返さなくてもよかったと思う。

 ……後から思ってる時点でもう遅いか。いくら後悔したって、一度出てしまった言葉はもう取り消せない。


「……ごめんね。愛華の気持ち考えきれなくて」


 私の方こそごめんね。そう言おうと思って口を開いたが、声が出なかった。

 美香が歩くペースを速めているのがわかる。

 言わなきゃと思っても、声が出ない。

 結局言えなくて気まずい空気を持て余してるうちに、分かれ道まで来てしまった。

 美香は先に角を曲がっていってしまった。

 ……彼女には悪いことをしてしまったな。後でちゃんと謝っておこう。

 振り返ると、夕日がむかつくくらいきれいなオレンジ色の輝きを放っていた。


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