生徒会選挙(終)終戦処理
当選発表は昼休みの放送で行われる。だから、正直な話関係者は気が気じゃない。
俺はどうでもいいけど、あいつら(実相寺、浅葱、冬月)はどう思っているのだろう?どちらにしろ落選覚悟だろう。
朝、教室でどこかで見たことがある奴がいるななと思ったら、生徒会副会長が、人の目を気にして教室に来ていた。なんで来るんだ。
仕方なく俺が行くと、副会長が
「屋上へ行ってください、お願いします」
と書かれたスマホのメモアプリを見せてきた。わざわざこんなことをしてくるというからには、何かのっぴきならない理由があるのだろう。
屋上に向かうと、例の生徒会長がいた。生徒会長もスマホのメモアプリを見せてきた。
「お前たちは選挙では落選した しかし、俺は平凡で常識人が生徒会に入るより お前たちの非凡に賭けてみたくなった だから改竄して実相寺を当選者にした 頑張ってくれたまえ なお他言無用 屋上から降りたらこの話は忘れろ」
「読んだか」
「読みました」
無言で生徒会長は降りた。でも、俺が庶務になるわけではないから関係ないといえば関係ない。
と思っていたら、当選者発表でエライことが起きることになった。
昼休みの放送で、12時10分の発表に、皆は放送のスピーカーに耳を澄ませていた。
「庶務の当選者 実相寺律」
8組で歓声が上がる。ここまでは俺の予想範囲内。
その次が問題だ。
「庶務は生徒会法10条により、立候補時に副庶務を2人まで自由に指定することが出来ます。任期は庶務に準ずることになっています。ここ4年間活用がなかった制度ですが、実相寺庶務は利用の意思を立候補のときに書面に提出いたしましたので発表します。副庶務 1年7組杉崎大助 1年8組浅葱陽 以上です」
放課後 当選者は全員生徒会室に集合 ということだ
8組の教室のドアを開け、猛然と律のところに向かっていった。
「律をちょっと借りるわ」
律の方を乱暴に掴み、外に出そうとすると一緒に弁当を食べていた浅葱が、俺の腕を馬鹿力で殴るので、俺は掴んだ腕を放した。
「絵描きの肩に何してるんだこの馬鹿者!!!肩が上がらなくなったらどう責任取るんだ」
「もう、どうでもいいから2人ともついてこい」
人気のない廊下へ2人を連れて行く。
「浅葱、お前も共犯なのか?」
「いいや、そんなの知らなくてびっくりしてた」
二人の視線は律へ注がれる。
「いや、その、楽しく活動できそうだなって………ねぎちゃんとは」
「じゃあ、俺は?」
「………ただ、一緒に、活動したかった」
………何を言うんだ、俺に。
「一緒に活動したいっていうんだから、そんなに怒らなくてもいいじゃん」
と浅葱は簡単に言った。
「俺の何が、お前にわかるんだ」
「わからねえよ、この陰気なインテリ精神的引きこもり。腐って濁ってる。外へでろ。過去に何があったか知らないが、はっきりしろ。前を向け」
「前を向いたやつがそんなに偉いのか?前を向けないやつなんていっぱいいるんだよ、お前が運の良い境遇にいるからそう感じるだけなんだ。それを自覚しろ。そして偉そうでわかったような説教は二度とするな。馬なんか前しか走らないから超偉いぞ。何でもかんでもハッキリしなきゃいけないのか。お前はグラデーションがないやつだな。単純なやつだ。お前の頭は1か0しか無いのか?それならば美術科より情報処理の道に進んだほうがいい。仮に俺が前を向いてないとして、そのバカにしたような説教は何だ。この風見鶏、鳥頭め」
と言った瞬間、思いっきり平手打ちを食らった。
「この浅葱を舐めんな」
「………もうやめて」
律が、座り込んで小さい方を震わせながら泣いていた。
とても可愛そうで見てられなかったし、ただ哀れだった。自分自身で泣かした女がこんな泣き方をするなんて、ただ虚しくて、目を背けた。
「行こう、律。大助、お前はこんな律の姿を見たかっったのか。最悪、バカ、死ねばいいのに」
何も反論できず、へたり込んだ。
放課後、生徒会室に渋々行く。
庶務(実相寺 1年生、副庶務 浅葱、杉崎、)
会計(鶴屋 1年生)
書紀(初見 2年生)
副会長(佐々木 2年生 夕立 2年生)
生徒会長(藤永 2年生)
以上、新生徒会集合。
旧生徒会からバッチをもらった。
旧生徒会長なんか、この場で全員を代表して言うとかいうくせに、一言
「頑張って」
それだけかよ………まあいいや。この会長の考え方は、俺には伝わった(一応忘れてないといけないんだっけ?)。みんながみんな理解してなくてもいいんじゃないっすかね。
主要ポストは2年生に握られている。
むくれた実相寺と律は俺に近づきもしない代わりに鶴見と仲良くなっていた。どうせ俺のことをキモオタインテリ精神的引きこもりとでも論評しているのだろう。
生徒会会議は毎週月曜日放課後にある(と聞いた)
あ、監査委員は、監査委員会室でやってるらしい。俺にはなんの関係もないけど?






