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虚空の空を、見続けるということ  作者: 林檎蜜柑
生徒会選挙編
5/13

生徒会選挙(4)候補者議論会<1>

 中学生の時に一家離散し、実相寺家に拾われました。勉強が得意で県1位をずっと維持してきました。だから、実相寺のお父様から、政治家になるか?法律家になるのか?それとも何かの技術者になるのか?とよく訊かれました。しかし、それを訊かれても心が虚しく、悲しいように思われてなりませんでした。なお悲しい。心がこもってない「すんません」「ごめんなさい」いうたら許してくれますか?



 選挙運動は終わり、投票日の4月27日の前日の候補者議論会を待つだけとなった。候補者と候補者が選んだ補助人が、現生徒会が出したテーマにしがって、全校生徒の前で討論し、投票の参考にする。

 考えてみればエグいシステムだ。

 浅葱を始めとする独特の演説で、ダークホースとなっているらしいという話を聞いた。でも俺のせいじゃないからな。浅葱と律と冬月の努力で、なんとなここまで来たと信じたい。

 候補者演説会の前日の夜、律が

「候補者演説会の方針をたてよう」

 と言ってきたので、一笑に付した。

「そんなもん、ない。だいたいテーマ自体もらってないので、対策自体不可能だ。余計な事を考えず寝た方がいい。下手な考え休むに似たしって言うだろ」

「まあ、確かに」

「そういうこと。寝とけ」


 当日、体育館に全生徒が集結し(当たり前)長机、マイク、スピーカーなど手際よく並べてあってので、非常に感心した。

 長机に二席(候補者と補助人が座るのだろう)マイクが1人にあたり1台分ある。

 どうも、庶務から先にやるようだ。

 俺と律の席は端っこだった。端っこは縁起がいいと思っている。オセロでも隅っこは取れないでしょ?

 隣の机のやつが話しかけてきた。

「こんなところで会えて感無量だよ、僕は」

 成績で県1位2位を争い続けた西川だった。

「………そうか」

「もうちょっと気の利いたこと言えよ………」

「今回は、俺は傍観者だ。お地蔵さんだ。意識しなくてもいい」

「面白いことを言うもんだな」

 そう言っている間に、腕に「庶務」とか「副会長」とかの腕章をした人がマイクを配っていた。

「はい皆さん、ご静粛に。ご静粛に。………いい加減黙りましょうね。候補者演説会を開催します。庶務→会計→書紀→副会長→生徒会長の順で行いますので。監査委員については、本年度は試験的に行いませんのでご注意のほどお願いします。わかりましたね、では庶務の方から早速初めさせていただきます」

「とりあえず、第一テーマとして明るい学校づくりでお願いします」

 それを聞いた瞬間、傍観者と決めていたのに、中学生の時からの鬱屈を重ねた気持ちがそうさせたのか、全身の血液が逆流したような感覚を覚えた。気がついたら、何かを発言しようとした率のマイクをひったくって、発言し始めていた。

「そんな学校作れるわけ無いでしょ。いかにも苦労を知らないボンボンが好きそうなテーマだな。変わりたくても変われない人なんていっぱいいますよ。きれいな花を100束集めるのに、どれだけの枯れた花、美しくない花を捨てるかわからないんですか。光を強く当てれば当てるほど影が強くなりますよね。そういうことです。いろんな境遇の生徒がいるのに、いい年こいた高校生が明るい学校づくりとか本気で思ってるのって狂気の沙汰としか思えない。皆同じように生まれて、生きて、死ぬことはできないんですよ。明るい学校なんてボンボンの金持ちしかいない学校だったら可能性ある。高校生になればそういった社会的なテーマというか、問題に気づいてもいい年なはずだ。それなのに平然とそんな寝言をテーマに持ってくる神経はどうかしてると違いますか?」

 いつの間にか、俺の声は中学生の時からの鬱屈を晴らすべく、怒号となっていた。

 周り、ドン引き。南極みたいな冷たさ。もうここから帰りたい。律の面目まで潰してしまった。

「えーちょっと………」

 5分ぐらい現生徒会役員が奥でもぞもぞしていた。向こうの思い描いていたシナリオとはあまりにもかけ離れてしまった、まさか演説人にテーマ自体を論破されるとは思わなかったのだろう。

「ではちょっとテーマを変更して………」

「ちょっと待った。俺は生徒会長の鴻池だ」

 なんか知らんが生徒会長が乱入してきた。

「お前、名を名乗れ」

「杉崎大助というんだ」

「なぜテーマを否定した」

「テーマに値しないテーマだ。もう少し寝られたテーマがでてくるんだと思ったら、寝ぼけたようなテーマがでてこっちが面食らっちまったよ。中学生じゃないんだよ、俺たちは」

 この頃になると、俺の頭も多少クールダウンしてきた。

「杉崎は明るい学校づくり自体を否定するのか?」

「そりゃあね、どうせ来るなら明るい学校のほうがいいだろう。だけどね、作るのは無理だと俺は思うわけだ。俺が思うだけで、他の人が出来ると思うなら、それで結構だと思う。テーマを否定したけど、あなた達の活動を否定しているわけでもないし、これから将来に渡る取り組みを否定するもんじゃないよ」

「わかった。これからの発言を許可する」

 いちいち文句を言ったぐらいで発言が許可制とは、ここはどこかの不穏な国なんでしょうか?

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