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結婚式を明日に控えた男とその妹

 お兄ちゃん、久し振り! 

 もう、びっくりしたよ! まさか、あのお兄ちゃんがプロポーズしたなんて! 

お母さんから電話で聞いたときめちゃくちゃびっくりしたよ!


……なんでここに来たのかって?

そんなの、明日の結婚式に参加するために決まってるじゃん!

なんでそんな意地悪言うの!妹のことが嫌いなのかー?


……え、結婚式の招待状の返事が無いから来ないと思ってた?


───嘘!? そんなハガキ送ってくれてたの?

いやー、ごめん。 多分間違えてチラシと一緒に捨てたんだと思う……

本当にごめん……


ってなんで爆笑してるの!お兄ちゃん?!

……昔と変わらず、おっちょこちょいだなぁって?


っ!そんなことないしー!

これでも会社では頼りにされてるんだから!


……取り敢えず部屋に上がれって?

今、私のことを適当にあしらおうとしてるでしょー!

……本当? 

───しょうがないから信じてあげる!

じゃあ、お言葉に甘えて部屋にお邪魔するね!

お邪魔しまーす!




彼女さ……違った! 婚約者さんは今どこにいるの?

……へー! 実家に帰ってるんだ。

まあ、親と色々話したいことあるだろうしね。

お兄ちゃんは会わなくていいの?お父さんお母さんと。

……あははっ! 今さら話すことなんてないか!

別に婿入りする訳でも無いもんね。


あ、そうだ! ちょっとお願いがあってね?

……今日、ここに泊まらせてくれない?

ビジホの予約、取り忘れてさー

え、実家に泊まればいいだろって?

嫌だよ!家に帰ったら絶対、結婚はまだなのかって口うるさく言われるじゃん!

お兄ちゃんはいいよねー!  

もう婚約してるから、親にヤイヤイ言われないもんねー!

……え! 泊めてくれるの?!

───よし!宿泊代が浮いた!

いやいや何も言って無いですよっ!お兄様!

いやー、お兄ちゃんの部屋に泊まるの超新鮮だなー!


え。布団は婚約者さんのでいいかって?

……うん!全然いいよ。……大丈夫

そっか、そうだよね。婚約者さんとは前々から付き合ってたんだもんね。

……当たり前だろって?まあ、そう言われるとそうなんだけど。


…………


───あー!お腹空いた! 何か無い? お兄ちゃん!

え、婚約者さんが作ってくれたハンバーグがある?


……それ以外で

っ! いいでしょ! 何か他にないの?!

え!何か作ってくれるの?! やったー!

文句は言うなよって? もちろん、言いませんよ!







めっちゃ美味しい! お兄ちゃん、ナポリタンとか作れるようになったんだね! なんか手慣れてたし、結構作ってる感じ?


……そっか、婚約者さんに、教えてもらったんだ。


……なんか、変わったね。お兄ちゃん。

いやいや!悪い意味じゃなくてね!

なんか、お兄ちゃんがずっと遠くに行っちゃたような気がしちゃうんだよね。

私も、同じように先に進んでいるつもりなのに、お兄ちゃんだけがずっと先に……


……ごめんね、湿っぽくしちゃって! 忘れて!

なんか、恥ずかしくなってきちゃった……!

お兄ちゃん、ビール無い? アルコールでこの気持ち、誤魔化したいんだけど!





あー! いい感じにフワフワしてきた!

え? ほどほどにしとけって? 

あははっ! 分かってまーす!




……え、何か辛いことでもあったのかって?なんで?

お前は嫌なことがあると、やけ酒をするって

……ははは、変なとこで鋭いよね。お兄ちゃんって。


話してみろって?

いや、でも。

……


……実は失恋したんだよね、私。

ずっっっと、その人のことが好きだったんだけど。

ぽっと出の女に盗られちゃた。

……まあ、いつかはこうなる運命だったんだけどねー


その男はどんな男だったんだ、って?


……まず、めちゃくちゃ口が悪いの。

初対面の人だったら、自分が嫌われてるんじゃないかって勘違いしちゃうくらいにはね。

まあ、根は優しいから、一緒にいるうちに慣れるんだけど。


あと、心配性。

お前は私の親なのかってくらい、私のことを心配してくるの。飯はちゃんと食べてるのか!とか、会社に慣れたか?とか。

……ほんと、ウザイくらい。


ウザイくらい口が悪くて、ウザイくらい心配性で、


───ウザイくらい優しいの……っ!



……ごめんね、結婚式前夜にこんな話聞かせちゃって。

お兄ちゃんはもうお風呂入った?

……じゃあ、私もちょっとお風呂に入ってきていい?

ありがと。


……どうしたの、お兄ちゃん。


……ほんと、本当にあなたって人は、どこまでも


ううん、何でもない。ありがとう、お兄ちゃん。

……困ったことがあったらちゃんと相談する。






 

……お兄ちゃん、寝た?


…………


……実はね、招待状。捨ててなんてないんだ。

今もテーブルの上に置いてるの。

返事を書いちゃったら……本当にお兄ちゃんが遠くに行ってしまうようで。

───バカだよね! 私! そんなことしたって事実は変わったりしないのに……


私、憎いの。私からお兄ちゃんを奪った、あの女が。

お兄ちゃんとの血の繋がりが。

本当、この世から消えてほしいほど。

私の方が先に好きだったのに。

私の方が、ずっとお兄ちゃんを愛しているのに。

なんで、なんでっ 私がお兄ちゃんを諦めなきゃいけないのっ?


……お兄ちゃんの手足を縄で縛れば、明日の結婚式に行けなくなるかな? 

そうすれば、私がお兄ちゃんと結ばれることは無くても、お兄ちゃんが誰かと結ばれることは無いよね?


お兄ちゃんの胸にナイフを突き立てれば、お兄ちゃんは何処にも行かなくなるかな? 

そのあとで私も後を追えば、きっとあの世で一緒になれるよね?


……でも、駄目なの。それじゃ駄目。それは私のエゴだもの。

私の大好きな人には、世界一幸せになってほしいから。

私の大好きな人には、悲しい顔なんてしてほしくないから。



……だから最後に。

最後にこれだけは許して欲しいの。



───んっ


このキスで、私はあなたのことを諦めるから。

この夜の思い出を宝物にして、私はこれから生きていくから。

























うん!いい感じ! タキシード、めちゃくちゃ似合ってるよ!


あ!お兄ちゃん照れてるー! 可愛いー!


あははっ!ごめんごめん!ちょっと茶化しすぎたかな?


……ねえ、お兄ちゃん。婚約者さんのこと幸せにしてあげてね。


うん!いい返事!

あっ!もちろんお兄ちゃんも幸せになってね!自分が幸せになることも大切なんだから!


え? とって着けた感がある?

気のせいだよー! 全く!人のことを何だと思ってるの!


あ!お兄ちゃん、そろそろ行かないと!

綺麗な花嫁がお兄ちゃんを待ってるぞ!








あ!お兄ちゃん待って!


んふふ!





























大好きだよ!お兄ちゃん!














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