Epilogue.2匹のモモンガ
「ごめんうっちー。多分これだと思うんだけど」
「大丈夫大丈夫。公理んありがと。マイちゃん結構適当だから何とかなると思う。これって新しいケージ?」
「そうそう。あんまり違いはないけれど」
「なら大丈夫。なんとでも言いようある。それにこの小さい子も貰っていいんだよね」
「ああ。オーナーに確認した。税込で3万3000円」
「オッケオッケ。後で払うよ。公理ん建て替えといて」
そのピンク髪のホスト、内倉遼平が言うにはケージを含めて環境を変えてしまえば多少の違いは感じても気がつかないんじゃないか、という。どうやらそのマイという客はファッションで飼っているだけで、飼う手前、きちんと世話はするがそれほど執着しているようではないそうだ。
「執着してるならホストになんて預けないって」
「そういわれればそんな気はするが、それはそれでどうなんだ」
「越前さん? そっから先は俺の仕事だから心配しなくて大丈夫」
結局、そのマチェテの様子や態度が違っても、別の個体がいるから緊張してるとか馴れ馴れしくなったとかで誤魔化し、小さいモモンガは仲良くなったからその客にプレゼント、というよくわからない話をするらしい。
「そんなに上手くいくものなのかね」
「いくっていうんだからいいんじゃないの?」
「ホストの接客というものはよくわからんなぁ。それでいいなら別にいいんだが」
それで梅宇はホストクラブのバックヤードで水を借りて文鳥に餌をやっていた。それで梅宇は日当分は働いた気になった。
慌ただしくしていて文鳥に餌をやるタイミングがなかなかとれず、連れ歩くしかなかったのだ。1日1回外に出すのも2回目を出し続けるのも同じだろうという理屈だ。なにせ文鳥の雛は1日4~5回餌を与えないといけない。
けれども不思議なことにモモンガ はそんな言い訳でなんとかなったらしい。それで梅宇と智樹はバーで祝杯を上げている。
そんなわけで結局いつものように朝まで飲むことになった。
徳田は明日から店に出られるそうだから、梅宇は正式に0時を回った今日から再び自宅警備員になったのである。
智樹は結局暴れていつも通り酔い潰れたので仕方がなく肩をかしながら、梅宇は智樹のマンションに向かう。反対の手には文鳥が眠る籠を持って。
文鳥は寝ているのか、籠が揺れても気にしないようだった。
「明日の朝、店が開く前に返さないとな」
Fin




