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嘘吐きな彼女とロボットくん

作者: 朝霧 陽月

 彼女は嘘吐きだ。


「あ、ロボットくん!! また会ったね〜

 えっこの怪我? 別になんでもないよ……。

 全然痛くないしヘーキヘーキ」


 会うたびに新しい傷を増やし自分が近寄るまでは泣いているクセに、コチラに気付くと笑顔を作り何でもないと笑う。


 彼女は嘘吐きだ。



「えっ、これ私にくれるの? ありがとう!

 実はあんまり食べてなくてお腹が空いてたんだ……ロボットくんは優しさね」


 彼女は嘘吐きだ。


 昨日晩から彼女が帰らずに、ずっとここいたことは知っている。

 だから彼女はあまり食べてないのではなく、全く何も食べていない……彼女は嘘吐きだ。



「あ……ロボットくん……今日も私に優しくしてくれるの? ありがとう……。

 私ね……人間よりロボットの方が好き。

 だってキミたちは私を傷つけたりしないでしょ?」


 彼女が初めて本当のことを言った。

 雨が降りしきる中でずぶ濡れになりながら。

 今までに見たことないほど焦燥とした顔で、消え入りそうな声でそう言った。


「……ごめん、おかしなこと言っちゃったね。

 なんでもないよ……」


 そうしてまた彼女は笑顔を作り、なんでもないと嘘を吐いた。




「ねぇ……ロボットくん……なんでうちにいるの?

 なんで……なんで……」


 家に帰ってきた彼女は、コチラをみて呆然と呟いた。


「家の人が……みんな床に倒れてるの……?」


 それは自分がそうしたからだ。

 彼女を傷つける存在を排除しなければならないと、そう感じたから。


 本当は『ロボット工学三原則』で人間を傷つけてはいけないと定められているけど、自分はそれ以上に彼女を優先しないといけないと感じたんだ。

 理由は分からないけど。


「もしかして私のために……?

 それならごめんね……こんなことをさせてごめんなさい……」


 危険を排除すれば彼女が笑ってくれると思ったのに、予想に反して彼女は自分を抱きしめながら泣き出した。


 その言葉は嘘じゃなかったけど、だからこそ分からない。

 どうして自分は彼女を泣かせてしまったのだろうか……。

 そして、どうすれば本当の意味で彼女を笑顔に出来るのだろう。



 自分はロボットだから人の心が分からない……。

 彼女はいつか自分を優しいと言ってくれたけど……優しさが理解出来ない役立たずの自分は、今泣いている彼女のなぐさめ方ひとつも分からないんだ……。

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