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第2章⑤悪魔の失敗 人間の失敗

彼女の体を覆う光は消えていた

僕の目からは生気の光が消えていた。

「さて、これであんたの願いは」

「お前は馬鹿か馬鹿か馬鹿か」

僕は列挙した。

「言葉を繰り返すのはあたしの個性だから取らないで」

こいつ、自覚していたのか。

というか、そんな問題じゃない。

「そんなことより、お前、自分で何をしたのかわかっているのか?」

「え?人間になった」

「そうだよ。お前は人間になったんだよ。悪魔じゃなくなったんだよ」

「そうだよ。なにをそんなに焦ることがあるの?」

至って平静。

「だってお前、悪魔だったのが人間になったんだよ。これからどうするの?悪魔の世界に戻れないんじゃ?」

「あー、それなら大丈夫だよ。そのときは魔法というか超能力というか、さっき人間になったことの反対をすれば」

ニシーっと笑顔。

「でも、それって、悪魔の能力だろ?人間になった今でも使えるの?」

「えっ?」

止まる動き。

彼女の額から汗が出てくる。

平静に笑顔を保つ。

「ちょっと待ってねー……」

震える声。

彼女の汗が顔を覆う。

崩れていく平静と笑顔。

「あっ、あはは、はーはは」

壊れた様子。

雨にあったようにびしょびしょになる全身。

平静と笑顔はどこえやら。

「――天気予報って、晴れと言っておけば8割当たるんだよ」

彼女は菩薩のような表情で明後日の方向を向いていた。

おーい、戻ってこーい。


「だってだってだって、こんなことになるなんて思わないじゃない!超能力を使えなくなるなんて思わないじゃない!悪魔に戻れないなんて思わないじゃない!」

「いや、普通は思うだろ。少なくとも考える」

正気に戻ったらこれはこれで面倒くさい。

「じゃあ止めてよ、なんで止めないの?止めてくれたらいいじゃない!」

「いや、止めようとしたが」

マシンガン責任押し付けトークをやめて欲しかった。

「どうしよ?誰か助けてください。どうか、神様―!」

とうとう悪魔が神様に願ったよ。これで願いが叶ったら、お前は神様のしもべな?わかったな?

一生懸命に天にお祈りをする女性とそれを呆れた様子で見ている男性のところに、声をかけてくるもの。

「そこのあなた!」

僕は後ろを振り返ると、いかにも高校時代に生徒会長でもやっていたのかと思うくらい真面目そうな女性が……って、さっき外でナンパされていた女性だ。

「そうよ、そこのあなた!こっちを向きなさい」

その視線は僕の後ろに飲み会の後半の飲兵衛へのコップのごとくなみなみと注がれていた。

「あ、あたし?」

そうメフィスが職務質問を受けたように返事するやいなや、真面目女子は虎が獲物を襲うがごとくで突っ込んできた。

 アワワワと逃げ場を失った獲物のように右往左往するメフィス。

 それを動物チャンネルのカメラマンのごとく見ている僕。

 2人の距離が縮まり、いよいよ狩られるシャッターチャンス。僕はその映像を目に焼き付け用としていた。

 逃げ遅れる獲物。問答無用に追いかける狩人。

 顔のあらゆる穴から液体をぶち流す獲物。息一つ乱さずに足を流す狩人。

 滑って転んでの獲物。滑らかに狩りを遂行しようとする狩人。

 と、僕の目の前で僕の足に何かが引っかかる感触。

「痛っ」

と思うやいなや。

「きゃあああああ!」

「わあああああ!」

すごい勢いで狩人が獲物に飛び込んで、ブサイクに当たり跳ね返り転がり、壁にぶつかり頭を抱えてミミズのようにのたうち回った。

獲物のほうはショックからかぶつかったからか、カニのように泡を吹いて気絶していた。

――これって、ぼくのせい?


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