第2章③悪魔の目的
「だーかーら、なんで閉じるの?!」
途中まで見たdvdを巻き戻ししすぎて最初から見てしまっている状況を思い出した。dvdと違うのは、早送りできない点だ。
「なんか、腹たったから」
「どういうことどういうことどういうこと?どこに腹たったの?そんなところないでしょ?」
やばい、スキップ機能が欲しいくらい腹立つ。
「まあ、どんな人間にも欠点の1つくらいあるから気にしなくても」
「だーかーら、あたしは悪魔だって言っているでしょ?あんたのような人間と違って、願いを叶える超能力を持っているのよ。わかる?超能力よ?願いが叶うのよ?悪魔よ?こんーなあたしがわざわざ契約してあげるって言っているんだから
さっさと……」
――本を閉じた。
「ごめんなさい。もう本を閉じないでください」
おしとやかに懇切丁寧に最高に土下座している悪魔がいた。
「それで、どうして契約をする理由を調べられないんだ?」
「ごめんなさい。調べることがタブーとなっているんです。ごめんなさい。親にも先生にも誰にも聞くことができないのです。ごめんなさい」
彼女は土下座と説明を交互に繰り返す。
「もちろん本とかを調べることもできないのか」
「ごめんなさい。本も無理なんです。ごめんなさい」
「となると、どうしようもないか」
「ごめんなさい。どうしようもないんです。ごめんなさい」
いや、謝りすぎて逆に腹たってきた。
「もう謝るのはやめてくれ。それよりも、本当に超能力を使って願い事を叶えることはできるのか?」
「うん。だいたいのことはできるよ」
「だいたい、ということはできないこともあるのか?」
「うん。人殺しとか、悪いことはできない」
「なんでできねーんだよ?悪魔じゃねえのかよ?」
「正確に言ったら、できるけどあたしがしたくないだけ。趣味じゃないもん」
あっけらかんとした顔でいい趣味してるなこの悪魔は。いや、いいんだけどさぁ。
「でも、僕じゃなくてもいいんだろ?ほかの人でも」
「そうでもあるんだけど、そうでもないんだよ」
どゆこと?
「そうでもあるけど、そうでもない?」
「うん。実はこの本を手にとった人は何人かいたんだ今までも。でも、誰1人として僕の封印を解けた人はいなかったんだ。ただ文章を読んだだけ。だから、あんたじゃないとダメかもしれない」
なるほど、だからさっきまで必死の形相だったわけか。まあ、今でもなに食わぬ顔をしながら目の奥では訴えかけてくるものがあるわけだが……
腹をくくるか。
「じゃあ、願いを言えばいいんだな」