認めなくないものだな
以前に別の場所で投稿したものを
此処にも投稿させていただきました。
「おはよう、優一」
「おはよ由美」
朝、友人と待ち合わせした場所に少し遅刻しそうな時間に
出かけようとしたところで幼少からの腐れ縁、俗に言う幼馴染に出会った。
美人であり、近所でかなり有名な人物である。
由美は、すっといきなり俺に何かを手渡してきたと思うと
「優一、……17年間黙ってたんだけど今言うわ――愛してる」
美人な幼馴染からの唐突な告白、常人ならば泣いて喜び慌てふためく展開だろう。
――だが、俺は違う。
「残念だ、三日前に同じセリフを聞いた俺としては何一つ喜べない」
渡してきた物をさりげなく由美に返す。
「解ったわ……でもこれだけは受け取って」
先ほど返した小包をまた俺によこす、悲しそうな瞳で俺を見てくるが
これは演技だと自分に言い聞かせ乗り切る。
「遠慮しておく」
俺は渡された小包を頑なに拒んで、受け取ろうとしない。
「何で?! 私の愛の結晶が迷惑なの?!」
「じゃ……じゃぁ聞こう、……中身は何だ?」
完璧な演技をする由美に、俺は落ち着いて質問する。
こいつとは17年も身近に暮らしてきたんだ、演技や嘘など見分けるくらいはできる。
それでも心が揺らいでしまうのは男だから仕方が無い。
「何って……ちょ、チョコレートよ」
「へぇ、で? カカオは何%だ?」
「5%よ」
「…………残りは?」
「愛情よ」
真顔で言ってくる由美に俺は完全に呆れる。
「そうか……お前の愛情はいったいどんな成分でできてるんだ?」
「もちろん――愛よ」
臆面も無く言いのける由美に逆に俺が恥ずかしさを覚えてしまう。
周りから見れば惚気だろう、だが然るべき人間が見ればここは戦場だ。
「おーい優一、遅いから迎えに来てやったぞー」
そして此処に然るべき人間ではない者が来てしまった。
「誰だこの美人は?」
由美に気づいた友人は俺の肩をいきなり掴んで引っ張り顔を近づけてくる。
「白い悪魔だ」
「嘘付け! こんな美しい女性が赤い彗星と激闘を演じるはずが無い! そう俺の命を駆けてもいい!」
「認めたくないものだ、現実ってのは」
そうか、なら駆けてみるといい、俺が小声で呟いた瞬間。
「そこの君――愛してるわ、だから受け取って」
「――――僕もです、麗しきお嬢さん」
何てノリのいい男だ、一瞬の疑いも無く真に受けて由美から小包を受け取りやがった。
「それじゃまたね」
それだけ言い残し由美は帰っていった。
そして取り残されたのは俺と幸せの絶頂に居る友人と、手渡された小包。
友人は颯爽と手渡された小包を開けていく、そこには黒い塊が入っていた。
「これは何だ?」
「5%のカカオと95%の愛情で作られたチョコレート(?)だそうだ」
「愛の結晶と言う訳だな」
友人はそのチョコレート(?)に噛り付いた。
しばらく、ベキッとかガキッとか硬い物を無理やり砕く音がした後に、バタッと人が地面に倒れる音が続いた。
音源は俺の友人、先ほどまで幸せの絶頂に居た人物だ。
「これは……チョコレートじゃない」
「95%の中身は確実に毒物だ、由美はなここら辺じゃマッドサイエンティストで有名なんだよ」
持ち前の美しさもさることながら圧倒的な行動力と奇行で有名な奴だ。
「三日前にも似た様なのを渡されてな、まぁ6年近く前から定期的にこのイベントが発生してたんだが、
そのときもお前のように近くに居た奴にそれが手渡されてな、暫く体中がしびれて動けなくなってたよ」
「……奴は悪魔か?」
「言ったろう白い悪魔だと」
「図ったな貴様……」
忠告はしたはずだ。
「ちくしょう……何で僕がこんなめに…………」
「簡単さ」
白い悪魔、赤い彗星、犠牲者ときたら言うことは一つだ。
「――坊やだからさ」




