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7.私は、騎士の誓いを拒む

「まず城に戻る」


緋色マントさんの持ち主は大人だった。そして馬を走らせてきたようで、もれなく二人乗りに。


「無駄に力をいれず背を預けてくれた方が楽です」


大人宣言撤回します。優しさ足りません。と思いながらふと至近距離の為振り向いた時に気づいてしまった。


緋色マントさんの首筋に流れた汗を。


青い目の冷たそうな色とついでにシルバーの髪で涼しさを背負っているのは単なる私の思った感想で。


緋色さんの他にも数名馬で来てくれていた。私は、何も気にしていなかった。


そうだよね。


突然、腕の中から人がいなくなって驚かないはずはないよね。心配はされてないだろうけど汗をかくほど探してくれた。


「探してくれて有り難うございました」


気持ちとは裏腹に私の声はとても小さかった。もしかしたら聞こえなかったかも。それか聞こえていても返事なん来ないかなと思ったら。


「早く見つけられてよかった。この季節は夕方からかなり気温が下がります」


なんか怖いけどいい人な気がする。さっきより少し体の力が抜けた。だけど同時になんでか背中の暖かさと微かに漂う香りにドキドキする。


何でだろう?



***



「勝手にいなくならないように」


緋色さんは私が借りている部屋のドアの前で着替えたら迎えにくるからと何回か繰り返し言うと去っていった。後にはクールビューティーな二人の侍女さんを残して。


「ど、どうも」


私は、馴れないドレス姿で緋色マントさんの前にたった。


あの後、すぐに二人の侍女さんに、お風呂に放り込まれた。お風呂は一人で入ったけど、そこからが早送りだ。ポニーテールの髪は一部編まれてサイドに流され、服は裾の長い淡いグリーンのドレスに軽くお化粧までされた。


「付いてきて下さい」

「あ、あのマントありがとうございました。シワがついちゃってごめんなさい」


緋色マントさんは、無言で私を見下ろした後、背を向けられたので慌てて畳んでおいたマントを渡した。


「謝る必要はない」


緋色さんは、私からマントを受けとると広げて着つけた。一瞬、翻るマントがかっこよくて魅せられた。


「時間がない」

「あ、はい!」


その声で我に返った私は急いで彼の背中を追いかけた。



***



「楽にしなさい」

「…はい」


返事はしたものの、そう言われてその通りにできる人は何人いるのかな。


学校の教室くらいの広さの部屋に通されてみれば、何段か階段の先に背もたれがやたら高い椅子に座る王様というトップが鎮座していた。


人生初の王様、陛下とのご対面は、緊張しかない。それがいくら優しそうな人でも。


その陛下のお話は緊張の上をいき私を困惑させた。


「昔、飢饉が訪れると他の場所から力を持つものを召喚した。だが、一人の人生を犠牲にして成り立つ世界は果たして本当に正しい事なのか?」


聞かれてるのかな?


「…私は、わかりません。一人の犠牲で沢山の人が助かるなら、自分が国を守る側なら全く揺れ動かないと言ったら嘘です」


甘いと承知で続けた。


「第三の選択を模索するかもしれません」

「ほう。例えば?」

「自分達で飢饉に備え被害を少なくするよう備蓄する。また異常気象なら暑さ寒さに強い食物の品種を探す。あとは」


先を続けろと言われたので最後の手段。


「召喚しても、役目が終わったら必ず負担がない形で元の世界へ帰す」


そんな感じかな。


「成る程。だが今回、貴殿は昔の聖女とは違う。神殿から連絡が来ていた。最後の聖女が来ると」


最後の聖女?


「召喚がなくなったのは、一番の理由は強い魔力を持つ者がいなくなった。すなわち喚べなくなった。二番目は最初の人を犠牲にしてやるべき事かという理由も大きいが」


力がないと此方に喚べない。


「私は、誘われました。その時は何をするのかも知りませんし、気のせいだと半信半疑でした」


あの時は、緊張と寝不足で。まさかこんな状態になるなんで発想すらなかった。


「それは我々とは、人とは異なる者ではないのかね?」


目の前の人は何を言わせたいのか。


「私は、勝手に蝶々さんと呼んでますが、人じゃないと思います。また私は帰れないけど、この国にいるのは長くないので図々しいですが、隅でいいので寝る場所を貸してもらえると助かります」


一気に言った。


「勿論用意しよう」


あっさり了承してもらえた。でも、なんか返したいな。


「見返りに私は、何が出来るかを考えます」


陛下は、口を挟ませないよう言葉を発する私に笑った。そして滞在の条件として二人の護衛騎士をつけると言われた。


いらないと言える雰囲気じゃなくて。作業に必要になってしまった緋色マントさんと、理系っぽい金髪の騎士さんが決まった。


これがまた儀式があるようで。跪かれ出された鞘に入った剣に触れればおしまい。


簡単な事だけど、次の緋色のマントさんの言葉で剣に触れようとした私の手は止まった。



「命をかけてお護り致します」



そんなアッサリ知りもしない私に命をかける?


りっちゃんの、六花が、誰もいない病室で死にたくないと一人震え泣いている姿を思い出した。


ふざけんな。

簡単に言わないでよ。


「誓いは受けません」


私は、剣を手で払い落とした。

それがどんなに失礼なのか知らなかった。


違う。


緋色さんの驚いたような顔から怒りの表情に変化しても謝る気はおきなかった。


「命をかける護衛なんていらない」



──これだけは絶対譲れない。



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