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52.ライナスは呟く

「あれ? 団長殿はいないの?」


滅多に来ない珍客が深夜に現れた。この軽い口調の方の声は見なくても判断できる。


「先程帰宅しました」


かくゆう俺も帰宅する為に荷物を持った状態だが姿勢を正す。笑顔にとっととお帰り下さいと言葉をのせるのは忘れない。


「そう」


ヴァンフォーレ家の三男バース様は、夜な夜な令嬢をひっかけるのが趣味という噂が流れている。なんだろうね。中身は問題だが見目が良いと得だな。


「今、何か俺の悪口思ったでしょ?」

「とんでもございません」


察しがよさそうでなにより。しかし、男に観察されて嬉しいわけがない。


「まぁいないならしょうがないか。無駄に鬱ぎこむ義妹の為にこんなトコまで来たんだけど」


こんなトコとは何だと?


そりぁあな。確かにお家柄良しの近衛様方にしたらムサイだろうよ。ただ言い方が気に入らねぇ。


「奥様に会う為に慌てて帰られたようですが」


貴方様の出番は残念ながらないんだよ。


「なんだろう。丁寧なのにひっかかるなぁ」


わかっているだろうに。


「どうされますか?」


独り言だと見なし、伝えなければいけないのか聞く。こっちは団長のお陰で最近帰宅時間が遅く妻の機嫌と子供の父親離れが悪化して深刻なんだよ。


「伝言するほどじゃないし。また寄るよ」


意外なことにあっさりだ。拍子抜けなのが顔にでたのか。


「副団長、面白いね。俺と同じ匂いがするよ」


やめてくれ!

冗談キツイぜ。


「そんな畏れ多い」


平民からの成り上がりの俺とかたや力のある古い家柄の三男坊様だ。この返答間違ってないだろ。


「またまた。そうだ、我が妹は婚姻したばかりだが夫は一人だ。兄としては護りが強いほうがいいと感じてね。ウチの妹どう?」


なんだろうかね。

不愉快極まりない奴だ。


「ご冗談を。むしろヴァンフォーレ様が欲しているように見受けられますが」


処罰対象になりかねないが知るか。幸い部下はさっき見回りに出た。現在、室内には俺達だけだ。


「ふーん。奴が背中を任せるだけあるじゃん」


これが本性かね。まあ一部なんだろうが。ゆるっゆるのガラ空きが見る間に変わる。


「互角かな。いや俺が押されるかな」


剣を抜かなくとも考えていた事は同じのようだ。


普通に笑えば、まあ悪くねぇな。生意気なのは変わらんがな。


「申し訳ございませんが、何を仰りたいのか分かりかねます。失礼ながら退出してもよろしいでしょうか?」


「ああ、時間とらせちゃったね」


「とんでもございません」


わかってんなら早く帰れや。


「妻子が待っておりますので失礼致します」


団長と坊っちゃんのお陰でとっくに寝ているだろうがな。


俺は、坊っちゃんが扉の前から左に移動したので、遠慮なく帰宅させてもらう事にした。


「ぶれない部下がいて奴は恵まれてるな」



彼は、背後で独り言にしては大きな声で呟いていた。


「関わりたくねぇ」


あーいう、予想外な主に面倒事を発生させそうな奴には極力近づかないのが一番だ。


「嬢ちゃん、団長でよかったのかもな」


バースと会話をし、アイツはないなと改めて思ったライナスであった。







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