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34.私は、新たなスタートをきる

「ヒイラギ、そうじゃない」

「でも」


握られた手は移動し、私の両方の頬を包む。

まるで壊れ物のような触れ方に戸惑った。


「私は、同情だけで命を与えるような人ではない。貴方だから決めた。また、そこにいる素の助けなしでは不可能だった」


蝶々さんまで?


『ヒイラギ 本当は 生きたい また その人 強く望んだ ヒイラギが 生きて欲しいと』


自分は生きたかったのだろうか?


「ヒイラギは、目覚めた後、言葉が通じなく文字も学び直したのだろう? そのように生まれ変わったと思いこの世界で最初から始めてみないか?」


やり直す。再スタート?


「私は、お荷物です。役に立たない」


これから専門に通うはずだったから、知識なんて小説に出てくる様な極めた優れたものもないし力もない。


「私を見ろ。最初からと言っただろう? 生きるのに意味はない。生きて最後まで全うするだけだ」


強い迷いのない瞳に圧倒される。積み重ねてきたものが違いすぎる。


「それに私は、結婚なんて尚更無理です」


道が分からなくて。ぐだくだな自分が嫌になりながら言葉を吐き出し、いまだ外されない手のせいで見つめ合うその顔は。


「なんで、笑ってるんですか?」


目をほそめて優しく笑っていた。


「ただ側にいてくれればいい。貴方が、心から笑い喜ぶ姿をみせてくれれば何も望まない」


「あっ」


頬から離れた手は、私の頭を軽く撫で額に何かが軽く掠めた。


そういえば、ここパーティー場所だよ!


「私、あんなに礼儀作法習ったのに!」


「そうだねー。仲が良いのはいいけど続きは場所変えてもらいたいね。まぁお兄様は、兄離れが寂しいかなぁ」


頭を抱えた私に、さらに追い討ちをかけるようなバースさんの台詞。そして冷静沈着なフランネルさんは、また氷の表情に戻り陛下に何か言っている。


「騒がせて申し訳ございません。また無礼ではありますが、聖女は疲れている様子の為、退出させて頂きたく」


ありがたい。私も、色々限界きてる。


「蝶々さん? 大丈夫?」


肩に留まっていた蝶々さんは、小さくなった体でフランネルさんの近くに飛んでいくと点滅しながら話す。


『フランネル ヒイラギ 大事 する?』


「蝶々さん、声でるの?」


頭の中だけに流れてくる言葉は、今、実際に耳から入ってきて、周りも固まっているから蝶々さんの声は皆にも聞こえているみたい。


「ああ。誓う」


フランネルさんは、驚くこともなく返事をした。蝶々さんは、彼の周りを一周すると、私の前まで戻ってきた。


『ヒイラギ 名前 ありがと もう行かないと 眠る』


「蝶々さん」


最近は、姿が見えなくて、小さな綻びが出てきて鍵をかける時だけ呼ばれて閉めた時、声だけ聞けた。


さっきの転移も、もう遠くまで転移する力がなかったのかもしれない。


手を伸ばすと指に留まった。


『ヒイラギ 幸せ 蝶々も幸せ』


「蝶々さん!」


ふわりと指から離れていく蝶々さんは、私の周りを回ると、黄色の光の粉を沢山降らせながら消えていった。


「ヒイラギ」


肩にフランネルさんの手が置かれた。


「私、蝶々さんがいてくれたから、頑張れた」


ずっとあの小さな光に護られていた。


「今度は、私がいる」


引き寄せられた腕の中は、ちょっと蝶々さんのほっこりする光に似ているなぁと思った。


「はい」


なんだか目尻から出てきそうな物を堪えるのにいっぱいいっぱいで、そっけない返事しか返せなかった。



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