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3.私は、また追う

「あれ…?」


急に目が覚めた。


また寝てたのかな。ゆっくり起きたら、やっぱり見覚えのある部屋だ。


「わっ」


薄明かりの中、自分が寝ているベッドの縁に人の頭を見つけ思わず声が出てしまい慌てて手で自分の口をふさいだ。


まだ室内は暗いし顔は伏せているのでよくわからなかった。でも、髪を1つに結んだ女の人だ。そこでやっと気がついた。


そうだ。私は剣を使って。


自分の体を触った。肌触りのいい服の上からさすり軽く押してみたけど痛みもない。これは夢の続きとか。でも、そうしたら…六花りっかは?!


『片割れ 無事 見る?』


「え?」


声がしたと思ったら。ぽっと小さな光が点った。


「蝶々さん? って」


寝てる人が起きちゃうと女の人の様子をうかがった。


『眠らせた 起きない 大丈夫』


黄色く光る蝶々が更に緩く上下に浮きながら私の目の前に近づいてきた。


『向こう 見る 今度 最後 会えない 皆 忘れる』


「会えない?」


『そう 向こう 二人の対 変わる 一人 なる』


「…私は、存在しなくなるって事?」


黄色の光が強くなった。

その通りと言っているようで。


『どうする 扉 閉まる もうすぐ』


「行く」


すぐ動かないといけないらしい。

しかも。


「またそこから?」


返事はないけど、ついてこいというように蝶々は、窓を通り抜けバルコニーで待っているようで。


「はぁ。わかったよ。いくよ行きますよって開かない」


前回簡単に開いたガラスの扉は押しても引いても動かない。鍵は外したのに。


『魔法 使われてる 解く』


声なき声がした直後、抵抗もなく開いた。バルコニーから木から降りたと気づいたのかな。


そして、そうかと。今、此処は違う場所なんだとほんの少しだけ理解した。


「二回目でも気が進まないなぁ」


下を見下ろした。前回は必死だったからできた。今は、逆に集中できないから降りるのが怖い。


でも会いたい。

じゃあどうする?


「頑張る」


この一言しかない。


落ちる事なく、なんとか擦り傷で済んだとほっとすれば。


『先 行く 捕まえて』


「えっ、また?」


遅い、早く来いというように蝶々は、黄色の光を点滅させ私はまたダッシュするはめになった。


「はぁはぁ。きっつ! って同じ所?」


霧は前よりもかなり薄いから周囲がぼんやりと把握できた。どうやら、かなり広いようだ。林を挟み奥にも同じような場所が見えた。


そして、一番の問題は、この場所にいるのは私だけではないようで。


男の人達が剣をぶつけ合っていた。空気を読まない蝶々さんは、なんと真ん中を突っ切っていく。


「嘘でしょ?! ちょっ」

「うわっ? 何だ?」


交差しあう刃と刃の間を通っていくので、皆が気がつき始めた。


『ここ 嫌い 多い』


蝶々さんが何故か点滅している。その光は弱くなり今にも消えそうになってきていて。私は、蝶々さん目指しダッシュし。


「えっ?誰だ?!」

「ちょっと体を借ります! ごめんなさい!」

「なっ!」


怪しむ顔をしたガッチリ体型のお兄さんに突撃し、私の重さで前屈みになりかけた瞬間、跳び箱の時のように跳躍をつけ肩に登り片足を蹴って跳んだ。


「消えないで!」


会わせて。


「捕まえた!」


私は、両手が塞がった後を全く考えていなかった。いやにスローモーションで地面に顔から落ちていく。目を閉じ実際はできてるのか分からないけど体を丸めようとした。


──痛みがない?


覚悟していたのに、痛みも衝撃もなく。そろりと閉じていた目を開けば。


「貴方は一度ならず二度も」


あの、霧の中で会った綺麗で怖い人だった。落ちる瞬間キャッチしてくれた?


「あ、ありがとうござ…蝶々さん!」


点滅する光が弱い。

ど、どうすれば?!


『人 多い 離れる』


私は、抱えてくれ、今は降ろしてくれた人を見上げた。


「ここ、この場所をもう一度だけ貸してください」

「何をするつもりだ。また己に刃を突き立てるのか?」


静かな口調なのが怖い。この人だけじゃない。今、静まりかえっている、この場にいる人達の雰囲気が。見た目じゃなくて中身が違う。


「しません。ただ会いたいんです。私の妹に。お母さんお父さん、兄に」


もう、これを逃せばない。

二度と会えない。


「お願いします」


手のひらに留まったままの蝶々が小さくなっていく。


「蝶々さん!」


どうしよう。

もう。


「彼女から距離を。あの柵まで下がれ!」



回りの人達に言った後、視線が下がり私に戻った。


「えっ、あ。ありがとうございます」


何をされるかとつい警戒したら、違った。

私の肩にかかる鮮やかな緋色のマント。自分のをかけてくれた。きっちり巻かれ首元で結ばれて。


そういえば寝起きで飛び出してきた。


「私が危険だと判断したら中断させてもらう」


平坦な抑揚のない声に無表情の顔だったけど。


「はい!」


私は、距離を置くために離れていく後ろ姿に返事をした。


「蝶々さん。これで大丈夫?」


私の声に点滅してた回数が減っていき、小さく透けかかっていた体が黄色に戻って。


また手のひらから蝶々さんから風が生まれて。


六花りっか…りっちゃん!」


姿見の鏡の先には六花がベッドに座っていて。本を読んでいる手は止まり。


『…ひいちゃん?』


六花の視線は私を確実に捉えていた。




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