表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/57

2.私は、剣を手にして

「はぁはぁ」


自分の息づかいが煩い。


どれくらい移動したのか。ただえさえ見たこともない場所なうえに霧が濃い。


「はぁはぁ。あれ、いない? 嘘っ見失った?」


どうしよう。見つけないと!


「あっ」


急に何かにぶつかりそうになって、慌てて避けた為に足がもつれ倒れるなと思ったら。


「大丈夫ですか?」


誰かが二の腕を掴んで転ぶ寸前に助けてくれたようだ。


「此処は第一と第二の訓練場だ。隊以外の女性はこの場内へ入る事はない。失礼だが朝の訓練の為にいるのではないように見えますが」


ほんの少し風が吹いて霧が薄くなり、お互いが顔を見つめあった。


「その姿は」


目を驚きに見開いた背が高く綺麗だけど…怖い。そんな男の人が立っていた。


なんか不味い気がする。


一瞬だけ緩んだ腕を急いで外し、一歩下がれば、その男の人の後ろに見つけた!


「待って! 蝶々さん!」

「待ちなさい!」


男の人の長い腕に掴まりそうになり大きく横にジャンプし、そのまま前にスライディングのように移動し手を思いっきり伸ばした。


砂にもろに体をうちつけ頬が痛い。でも。


「掴まえた!」


潰さないように膨らませていた両手をそっと広げたら。


つむじ風が生まれた。


「なっ」


私の少し後ろにいる人も驚いたようだ。


「これは」


黄色の風が止めば霧もすっかり消えた。


『ここ 見る それを刺す ここに渡る』


声が聞こえた瞬間、姿見くらいの長い鏡のような物が目の前にあった。


その鏡がゆらめき波紋が生まれ。


「…六花りっかだ。六花!」


病院のベッドにいる六花が映っていた。前に進んで鏡に触れようとしたら。


『早く 送らないと 消える』


右上に消えたと思った蝶々がふわふわ漂っていて。それに気をとられていたら両手に何か熱い物が。


「これは剣?」


鞘のない剣が私の両手に置かれていた。剣は私が完全に触れると光が収まり、同時にずっしりとした重さを感じしっかり握りなおす。


やることは、やらないといけない事は分かった。だけど、まさかそんな事を。


「貴方はいったい何を」


「すみませんが逃げも隠れもしないんで、私から離れて黙っていて下さい」


後ろの男性に振り向きもせずお願いした。今、私の心臓は、ものすごい速さで動いている気がする。


ドクン ドクン


鏡を見れば、痩せこけ顔色が悪い六花がいる。ふいに遮る人が。看護士さんだ。素早く動く姿が見えてその手はナースコールのボタンを押した。


『急いで 消える』


──六花!


「…蝶々さん、信じていいの?」


返事はなかったけど、強く光った。


剣の柄を握ったけど、やりづらい。刃の部分を両手で握ったけど切れなかった。


「貴方は何を!」


思いっきり力を込め押した。


息が止まりそうだ。

痛い痛いよ。

でも。


呼吸を浅くしながら倒れないように足を開き次にくる衝撃に耐える。


「あああっ!」


まだ声が出たのが驚きだ。

引き抜いた剣先を鏡に向けた。


倒れそう、ダメだ。今、倒れたら。


「届いて」


ぬるりとする柄をしっかり握りなおし、鏡に突き入れた。


鏡に激しい波紋が生まれる。


六花の顔が見づらいよ。鏡の向こう側では医師まで増えていた。


早く早く。


腕に力を入れる。その剣はゆっくりと鏡の中に入っていく。だけど、あと少しなのに最後がなかなか入らない。


どうしよう。

間に合わない。

嫌だ。


「嫌だ! 六花りっか!」


不意に自分を覆うほどの大きな影が。同時に自分の手の上に暖かさを感じた。


「押せばいいのか?」


声がでなくて頭の上の人物に頷いた。加勢してくれた人の力も加わり柄まで埋まる。


「入った!」


波紋は激しさを増しそれから鏡が弾けた。

六花、六花は!



最後に聞いたのは、剣をさしこむのを手伝ってくれた人が医師をと慌てる声だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ