18.フランネルの部下達
「団長! あの子、数日前の見張り塔の聖女様ですよね? なんであんなにやつれちゃってるんですか?! しかもあの怪我けっこう深いですよ!」
ノットが騒ぐ。
「なんか団長に怯えてましたけど。あと我々が聞いてはいけないような内容というか」
「フィックス!俺達初めて見たけど、子供じゃないか」
いつも用件しか発言しないフィックスの言葉に室内の声が増す。
だが次の言葉に声は止んだ。
「団長、あの子死ぬんですか? 俺たちの国の世界の為に」
ライナスの発言は、皆を黙らせるのに充分だった。
極秘通達がきていても、もう訓練場に娘が現れた時点で口を目を閉じさせるのは不可能だった。私は、そのまま私の部下達に伝えた。
「そうらしいな」
嘘を言っているようには見えない。この一見華やかそうな騎士なんて所詮汚い事をする場面が多々あり、またそれをしてきた者達も私と同様に感じているはずだ。
「ライナス、それはまだ目を通していない」
副団長のライナスは、私の机の未処理の束を持ち席にもどっていく。
「とりあえず団長は家に早急に帰宅して、あの傷を治癒してきて下さい。獣の爪のようですが北では毒を持つ動物もいるとか。団長なら解毒も可能でしょう?」
私に有無を言わせないと睨み付けてくるライナスに驚きを覚えながらも返事をした。
「ああ。そうだな」
足元に残された血と水滴を見て馬をやめ転移する事にした。移動する瞬間。
「行って下さいと言いましたがここは転移禁止ですよ!」
ライナスの叫ぶ声がした。
* * *
たった今、先程会った娘が聖女が近々死ぬという重たい空気が色濃く残るなか、場違いな発言が耳に入った。
「なぁ、賭けないか?」
隊で一番横にも縦にも大きい男、ダンが言い出した。確かあの聖女が踏み台にしていたな。思いだしつい笑ってしまった。
「あ、副団長!」
「ダン、俺も混ぜてもらおう。内容はこれでどうだ? 」
「成る程! 皆やるか?」
さあ、我らが団長はどう動くか。