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12.私は、仕方なくお願いをする

「フランネル様。明日から鍵をかけるのを手伝ってもらえますか?」


私は、緋色マントの騎士さん宅に滞在4日目の朝食の場に珍しく席にいる人に話しかけた。


あれから、ろくに話もせずにきた。考えた結果、夜から夜明けにかけ私はこっそり翔んだ。この世界各地を。


ただ鍵をかけるのにも小さなものは一人で出来るけど、大きな最初の搭のような規模の物は難しいと蝶々さんに言われたのだ。


実際、連日鍵をかけ続け寝不足もあるのかフラフラだった。


「なら、夜ではなく昼間に」


やっぱり夜にいないのは気づかれていたか。でも、今の緋色マントさんからは怒っているような気配はない。無表情は変わりないけど。


「はい。ありがとうございます」


「いや」


少し目が開いて驚いたようだった。


団長さんというのは、どんな仕事をするのか正直よくわからないけど、フローラさんと交代で家にいない時は、朝早く出かけ夜は遅いようだから忙しいのは理解できた。


突然現れたよくわからない人に生活のペースを乱されているであろう彼にはお礼くらいは言うべきだと思っている。


「ご馳走様でした。お庭少し散歩させて下さい」


私は食事もそこそこに席を立った。


それを見送る兄妹と執事。


フランネルは娘の顔を今日間近で確認し、ひどく驚いていた。


「たった数日で何故あんなに生気がない?」


「おそらく一晩中いないのです。睡眠、精神的、肉体的疲労もかなりのものかと」


「注意は」


私の言葉に妹は諦めた顔をしていた。


「兄上なら1日に1回くらいなら転移できる力があるかもしれませんが、私にはそこまでの力もない。それに目的地は、聖女しか知らないので追いようがないのです。最低限、他国から護り、滋養のある食事を召し上がってもらうくらいしか…」


確かに私なら多少の無理をすれば転移は出来るが、力が足りず行きのみになってしまうだろう。


「神殿預かりにすればよかったのだろうか」


私の言葉もフローラによって即座に切り捨てられた。


「逆に四六時中見張られるとなれば、あの方には更に精神的な苦痛を与えると思います」


久しく食事を共にしていなかった妹は、私に目を向け珍しく提案をしてきた。


「あの方は、ヒイラギ様とお兄様は、一度話をちゃんされた方がよいと思います」


何故?


「ヒイラギ様は、我々と距離をわざととっています。それに鍵をかける為に各国を飛び回っているわりに何の質問もしてこない」


普通なら、もっと聞いてくるものではないのか? 食や文化。言葉や歴史など。


世界が違う場所から来たのだ。


「また彼女は、女性が好む服や装飾品をねだることもせず、ただ一つ。やっかいになるから兄上の、家の迷惑にならないよう外出をした際などの最低限のマナーだけ教えて欲しいと仰いました」


フローラは、先程いた今は空席の場所に目を腫らして、それを悟られないように髪で隠していた聖女に、たった数日を共に過ごしただけだというのに好感を抱いていた。


彼女は、人よりも他者の様子に敏感でまた聡い。


だからこそ。


「兄上なら、もしかしたら」


聖女が、怒りを感情をむき出しにした姿を見せたのは兄にだけだった。兄もまた、あんなまして陛下がいる人前で怒気を露にするなんて生まれて初めて見た。


「聖女は屋敷に来た日、帰る術がないと言いました」


兄の手が止まった。


「何が言いたい?」


「この国に長くいるつもりもないと言ってましたよね。かといって今の様子だと他国に行くとは思えない」


口を拭き立ち上がり振り向きざまに伝えた。


「あくまでも私の考えですが、彼女の寿命は鍵をかけ終われば同時に」


最後まで言わずともわかったらしい。

我が兄ながら頭は良いのに何処か抜けている。


「聖女様は、この後お休みになると思いますので夕刻前がよろしいかと思います」


お兄様、早く自分の想いに気がつかないと手遅れになりますよ。


兄に挨拶もせず私は城に顔を出すため今度こそ退出した。




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