表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/57

1.私は、目覚め追う


『起きて』


『早く 起きて 間に合わない』


誰?


『あなた 大事 人 消える』



私の大事な…人。



六花りっか!」



いきなり起きたからか目眩がして頭を押さえた。


「ここは」


暗がりで確認すれば自分が寝ていたのは、アンティークのようなベッドだ。


「夜明け?」


鳥の囀ずりは、カラスでもなく雀でもなく綺麗な声。私の服装は足首近くまである、あわせの病院で着替えた服一枚。


「そうだ。りっちゃん!六花りっかは!」


パニックになる私の目の前にゴルフボールくらいの黄色の光が突然現れた。それはよく見ると蝶々の形をしている。


「呼んだのはあなた?」


『早く 付いてきて じゃないと 大事な人』


言葉が単語のように、ぼんやりと頭に入ってくる。


「あっ、待って!」


その蝶々は、大きな窓ガラスを通り抜けていく。急いでベッドから出て足元に置いてあったルームシューズらしき履き物を借り、ふらつきながらその窓へ。


開けたとたん、ひんやりとする冷たく清んだ空気に迎えられた。やはり外の空の色は夜明けぐらいか。


「蝶々さん!」


小さなベランダ、バルコニーからは霧で覆われていてよくわからない。黄色い蝶々は、バルコニーから下へと飛んでいく。


『早く 早く』


高さはマンションの2階くらいだが飛び降りるという行為は無理だった。


『間に合わない』


悩む間にも蝶々にせかされ焦りと苛立ちが生まれる。


「ああっ、もう!」


ふと、半円を描いているバルコニー近くに繁る木の中の一本に目がいった。


いけるかもしれない。


「怖いし痛い」


木登りなんて小さい時田舎でしたくらいだ。落ちたくない一心で手を慎重に下にずらす。


「はぁ。降りれた」


心臓に悪い。でも息を整える時間はくれなくて。


『広い場所 こっち 早く』


私は、ふわふわと飛んでいく蝶々を追いかける為に霧の中を走り始めた。


「はっはっ」


大事な人、六花を助けてくれるという声だけを信じて。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ