第8話
もう一話できました。
よろしくお願いします。
おのれ!ブランドー!
俺を将来養ってくれる大切な者たちを奪おうとしているだと!
いいだろう。ブランドー、お前が俺から奪おうとするなら、俺は俺の将来のために全てを守ってみせる。
俺は決意新たに、孤児院に向かった。
孤児院に到着すると、ミレーユが出迎えてくれた。
俺を中に案内してくれるとキールに会った。
キールにウルフを1421匹狩ることは出来なかったことを告げた。
キールは笑って許してくれた。昨日あれだけ説明してくれたのにすまない。
だが、いい知らせがある。俺がD級に昇格すればギルドが貸してくるということだ。キールにその事を伝えるとどうしてそこまでしてくれるのか、聞いてきた、いずれ頼ることになるからそのときは養ってくれと言っておいた。キールは泣いて了承してくれた。
よし、これで将来の不安が一つ解決した。
side キール
「お帰りなさい。キッドさん」
ミレーユさんが、キールさんを出迎えに行った。
今日来てくれた。僕昨日のことがあり、もし無理なら来てくれないと思っていた。今日も来てくれたってことは、もし
かしたらウルフ1421匹狩ることが出来たのではないかと期待していた。
「キッドさん。お帰りなさい。どうでしたか。」
「キールか。すまない。ウルフを1421匹狩ることが出来なかった。」
キッドさんが僕に謝った。
やっぱり無理だった。そうだよね。昨日計算した数に間違いはないけど、やっぱり無理だよ。そもそもウルフがそんな数いるわけがない。
でも、僕はキッドさんが逃げない人でよかった。キッドさんみたいな人がいるということが僕にとって救いだ。
「いいよ。やっぱり無理な数だったし。」
「だが希望はある。」
「えっ?」
「俺がD級冒険者に昇格すれば、ギルドから金貨5枚を貸してもらえる。」
「そ、そんな!」
僕は驚いた。だって、僕たちの借金を代わりにギルドから借金をして返そうとしてくれている。
僕たちにはキッドさんに何も出来ない。
キッドさんに何の得もないのにどうしてそこまでしてくれるのか。
「どうしてそこまでしてくれるしてくれるんですか?」
「子供はいつか大きくなる。そしていつか俺も弱くなる。そのとき、キールやここのみんなに俺を助けて欲しいからだ。」
「!!」
僕は衝撃を受けた。キッドさんが僕達に助けて欲しいと言った。そんなことできるわけがない。でもキッドさんは大きくなったらといった。弱い僕がいつか強くなったら、未来はわからない。でも分かることはある。
「う、うん。僕が、ギ、ギッドざんをダズける、よ。絶対に、ダズけて、みせる!」
僕は力強く言いたかった。なのに涙が出て、ちゃんと言えなかった。
「そうか。よろしく頼む。」
キッドさんは僕の言葉を信じてくれた。
いつか僕もキッドさんみたいになりたいな。
side out
俺は今日の分の寄付をミレーユに手渡した。借金の返済の目処がついたことを伝えた。ミレーユは感謝していた。そしてここに来るまでにブランドー商会のヤツに邪魔されたことも伝えた。俺はブランドーにこの孤児院は渡さない。この孤児院は俺が守ることを伝えた。
今日も泊まっていって欲しいと言われた。やっぱり養ってくれる存在は有難い。
夜にミレーユが俺の寝床にやってきた。今まで不安だったのだろう。最後には泣き疲れて寝てしまった。
俺はミレーユを一緒に寝かせてやった。
side ミレーユ
「ミレーユ、今日の寄付金だ。」
今日もキッドさんが寄付を持って来てくれた。
「ありがございます。キッドさん。」
本当にこの3日で、とても助かった。キッドさんには感謝してもしたりない。
「借金のことだが。」
キッドさんが借金のことを切り出した。
今日の寄付金でも昨日の話の額には足りない。元本を返しきれない。
キッドさんはこの話には関係がない。私がブランドーさんの妾になればこの孤児院を残せる。
だから、もう大丈夫です。この3日で夢を見れた。だから、
「返す目処がついた。」
「えっ!」
「D級に昇格すればギルドから金貨5枚を借りることができる。」
私はまだ夢を見ているみたいです。でも、
「キッドさん。そんなことをすればあなたが借金をすることになります。」
私はもう十分夢を見れた。でもこれ以上はキッドさんに迷惑をかけれない。
「俺がしたいからそうしている。」
「‼︎」
「俺はここが大切だ。だからしている。」
「も、もう少し甘えても、いいですか?」
「ああ。構わない。」
「キッドさん。本当にありがとうございます。」
ああ、嬉しい。
まだ夢を見てもいいですか。
「今日、ブランドー商会の奴らに会った。」
ブランドー商会!私はその言葉で夢から醒めた。
そうだ。ブランドー商会がいる限りこれを越えても、また困難が訪れる。
きっとまた、キッドさんに迷惑をかける。
だったら早い方がいい。
今日は警告だけだったかもしれないけど、キッドさんに危害が加えられたら、私はその事が一番つらい。
「キッドさん、やっぱり…」
「俺が守る。」
「‼︎」
「この孤児院もここの子供たちもミレーユも、俺が守る。」
ああ。どうして。どうしてそこまで。私、期待していいですか?
私はキッドさんに何もできないのに、
もしよければ私を…
「キッドさん、今夜も泊まっていってくれませんか?」
「いいのか?今日も泊まって。」
「はい。もちろんです。」
「では、今日も世話になる。」
私は、キッドさんを今日も泊まってくれるようにお願いした。
今夜、私はキッドさんに私の全てを捧げよう。
夜、キッドさんの寝室前で私はウロウロしていた。
いや、でも今日がお疲れかもしれないし、それにやっぱりはしたない。
いやいや、キッドさんにできることなんてこんなことしかない。
よし、女は度胸。
コンコン
私はキッドさんの部屋をノックした。
「どうした」
「あの、一緒にいていいですか?」
「ああ。構わない。」
私はキッドさんの部屋に入り、彼に抱きついた。
「どうした。ミレーユ。」
「私の話を聞いてもらえますか?」
「ああ。構わない。」
「私はお父さんとお母さんが病気で死んで、お爺ちゃんが経営していたこの孤児院に来ました。
ここはその当時は都市の領主様から援助を受けて、経営していました。
ですが、領主様が亡くなり、次の領主様は財政建て直しということで、この孤児院への援助が打ち切られました。お爺ちゃんは領主様に再三お願いに上がりましたが、やっぱり無理でした。
悪いことは重なるもので、祖父が病気になり間もなく亡くなりました。
私はこの孤児院を守るため、祖父の後を継ぎました。ですが、私は何も知りました。
経営することの難しさ、お金の有り難さ、そして、人の怖さ。本当に何も知りませんでした。そんなときにキッドさんに出会いました。ありがとうございます。人が優しいことを教えてくれて。」
私は自分の全てを吐き出しました。
「そうか。ミレーユ、よく頑張った。」
「キッ、キッドさん。」
キッドさんは私の頭を撫でてくれました。
「今までよく一人で頑張った。ミレーユが頑張ったから俺はここに来れた。
ミレーユや子供たちに出会えた。だから、これからは俺が守る。」
「キッドさん。」
私はキッドさんを見ていた。とても近くで、でも、なんだかよく見えない。
目から涙が出て、どんどん見えなくなる。
私はキッドさんに抱きついて、声を押し殺した。
子供たちが寝ている。起こすわけにはいかない。
キッドさんは私を抱きしめてくれた。声が外に聞こえないように強く抱きしめてくれた。
ああ。好きです。キッドさん。
今回苦労しました。おかくなければいいのですが。