第7話
今日はここまでです。よろしくお願いします。
やれやれ。いくら腹が減っているからといって、やるわけにはいかない。
これは俺を養ってくれている、ミレーユの弁当だ。
奴が子供であれば、この弁当を餌に好感度を上げて、将来は俺を養ってくれるかもしれないが、大人ではダメだ。将来性がない。
まあ、ちょっと叱っておいたか、これからはしないだろう。
どうやらエリーの確認が終わったようだ。
いくらくらいになるだろう。多いといいな。
side ギルド職員エリー
「キッドさん、確認終わりました。」
キッドさんが私のところにやってきた。さっき、評判の悪い冒険者のカーズさんに因縁をつけられていたし、冒険者の人って、血の気が多くて、こういう揉め事は毎日あります。
まあ、C級なので、キッドさんより等級は上ですけど、紳士さでは、圧倒的に格下でした。
キッドさんに頭を撫でられていて、子ども扱いされていましたし。
でもいいな、私も頭を撫でてもらいたい…
違う!違う!そうじゃない、私は安い女じゃないんです!
いくら私が用意したクエストを普通の人の半分の時間でクリアしてきたからって、すぐには堕ちませんから、覚悟しておいてください!
いけないいけない。冷静になりなさい。私はギルド職員。キッドさんから全幅の信頼を寄せられる優秀なギルド職員。一人に固執してはいけません。冒険者に平等でなければいけません。でも、誠実な方にはちょっとサービスしてもいいですよね。
「キッドさん。今回の結果です。まず都市の周辺のモンスター退治ですが、完了です。こちらが銀貨1枚になります。次にウルフの討伐ですが、こちらは合計5匹ですので、完了です。クリア報酬銅貨20枚です。また、ウルフ1体で銅貨5枚ですので、銅貨25枚です。よって合計銅貨45枚になります。次にボアの討伐ですが…」
「どうした、少なかったか?」
「いえ、昨日も思いましたが、ちょっと多すぎでして、えっと、合計185匹です。ですので、ボアの討伐は完了です。クリア報酬銅貨20枚になります。また、ボア1体で銅貨6枚になります。よって銅貨1110枚です。銀貨11枚と銅貨10枚になります。合計で銀貨11枚と銅貨30枚になります。次に薬草の採取ですが、こちら薬草5束分になります。えっと、たくさん採られていましたが、状態が良くないものがありましたので、これが精いっぱいです。ごめんなさい。」
「いや、俺の採り方が悪かっただけだ。エリーの責任ではない。」
「はい。えっと薬草の採取はクリア報酬が銅貨10枚です。薬草1束で銅貨2枚ですので、銅貨10枚になります。合計は銅貨20枚です。、最後に毒消し草の採取も5束分です。クリア報酬が銅貨10枚です。毒消し草も1束で銅貨2枚ですので、銅貨10枚になります。合計は銅貨20枚です。」
「わかった。いくらになる。」
「全て合わせると銀貨13枚と銅貨15枚です。」
「昨日より多かったな。ありがとう。エリーのおかげだ。」
「いえ、キッドさんだからできたことです。」
ほんと、これだけを同時にこなすなんて、薬草と毒消し草は群生地が方向が逆なので、同時にやる人はいません。それにウルフとボアも生息地が違います、それにウルフは俊敏性が高く、ボアは耐久性が高いモンスターです。俊敏性と耐久性の両方を相手できるのはパーティを組んでいるか、ソロなら上級冒険者ぐらいです。辺境の都市では、あまりいません。なので、これも同時にやる人はいません。都市の周辺のモンスター討伐とはパーティで受けるには実入りが少ないから受けませんし、上級冒険者なんてうちにはテオさんしかいませんし、そんなクエスト受ける暇がありません。
だから、このクエスト5件セットでこなすなんて、さすがキッドさん。
これはやっぱりサービスしなければいけませんよね。
仕方ない。おねえさんがサービスしてあげましょう。
「お疲れ様です。キッドさん。そうだこれから一緒に飲みに行きましょう、ね!」
「すまない。ミレーユが待っているのでこれで失礼する。明日もまた来る。」
「あっ、キッドさん。」
キッドさんは颯爽とギルドを出て行った。
うう~、勇気を出して誘ったのに~。
でも仕方ありません。いきなりこんなこと言って、照れてしまったんでしょう。
それに急に距離を詰め過ぎました。焦りましたね。よし、じっくりと攻めていきましょう。
それにしても、ウルフはたぶん昨日キッドさんが討伐しすぎたから、数が少なくなったんでしょうし、ボアも相当減りましたが、明日の分、ありますかね?
とりあえず、ギルド長に報告しなきゃ。
side out
俺は昨日より多く稼いだことが嬉しかった。これで子供たちもたくさんメシが食える。きっと大きくなるだろう。それにキールのように頭がいい子がいるから、学校に行かせてやることもできるかもしれない。そうなれば、より一層、俺を養おうとしてくれる。餌が良ければいい魚が釣れるというものだ。
それに、借金を返す方法を早く教えてやろう。
俺は急いで孤児院に向かった。
孤児院には昨日来ていた、小柄な男と普通くらいの男がいた。
どうやら、俺に用があるようだ。普通くらいの男が俺を殴りかかってきた。いきなり何をする!
おれは訳を聞くと、俺がブランド―商会の邪魔らしい。
だから俺を襲って孤児院に近づけないようにしたかったらしい。
ふざけるな!俺を養ってくれる、ミレーユや子供たちがいる孤児院に行けなくなるだと!
俺の居場所を奪うつもりか!許さん。絶対に許さんぞ。ブランド―!
side ケンカ屋ナックル
「待ちな!」
「なんだ。」
「孤児院に行くのを止めな。そうすりゃ痛い目にあわずに済むぜ。」
俺は俺よりもデカイ奴にそう言って引き留めた。
昨日リドルの奴がボスに報告して、今日俺が出張ってきた。
確かにコイツ、只者じゃない。強さをビンビンに感じる。
このまま引くとは思えないが、俺が負けるとも思っていない。
「お前たちに命令される筋合いはない。俺は行かせてもらう。」
奴はそう言って、孤児院に行こうとした。
馬鹿な奴だ。おとなしく言うことを聞いとけば、痛い目に合わなかったというのに。
「しゃあないな、オラァァァァァ!」
「いきなり何をする。」
俺のパンチを紙一重でよけたか。そうこなくっちゃな!
「もういっちょ!オラァァァァァ!」
「ほんとに、何だ。」
「いい加減当たりな!オラァァァァァ!」
なんだコイツ!なんで当たらねぇ!
俺のパンチが見切られている?いやそんなわけねぇ。
こいつは手が出ないだけだ。
「へ、手が出ねぇか?さっさと引けば許してやったがもういい。ここからが本気だ!!」
「そうか、手を出していいのか。」
そいつは指を1本、人差し指を俺に向けてきた。
「手は出さない。指は出そう。」
「なめてんじゃねーぞ!!」
コイツは俺を指一本で倒そうというのか。
なめてんじゃね。そんな指へし折ってやる。
俺は奴の指をめがけて、渾身の右ストレートを放った。
ズブッッッ
俺の右ストレートは奴の指に命中した。
奴の指は見えない。俺の拳にめり込んでいるからだ。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
俺は自分の拳に奴の指がめり込む痛みで悲鳴をあげた。
「ふん。」
ズボッ
「ぐうわぁぁぁぁぁぁぁ!」
奴は俺の拳にめり込んだ自分の指を無造作に引き抜き、俺はまた悲鳴をあげた。
side out
side 借金取りリドル
ぐうわぁぁぁぁぁぁぁ!
俺の目の前でナックルの奴が大男に指1本で倒された。
そいつは俺の方を向き、
「何が目的だ。」
「ヒ、ヒィィィィ!わかった話す。だから許してくれ。」
俺は恐怖のあまり、全て話した。
「俺たちのボスは、孤児院のあの女が欲しいから、借金の方に手に入れようとしていた。だ、だけどあんたが来て、利子を返してきたから、俺たちのボスのブランド―さんは念には念を入れて、あんたを遠ざけようとした。だから、今日ナックルをあんたに差し向けた。」
あいつは俺の話を聞き、
「ふざけるな!ミレーユを奪うだと!俺の居場所を奪うつもりか!許さん。絶対に許さんぞ。ブランド―!」
「「ヒ、ヒィィィィ!」」
俺とナックルはあいつの怒髪天を付くような雄たけびを聞き、俺とナックルは必死で逃げた。
ボス、俺たち、やべぇ奴に手を出しちまった。
side out
ありがとうございました。