第6話
本日1話目です。よろしくお願いいたします。
孤児院の借金を返すため、ウルフを1421匹狩る予定だったが、
俺がD級冒険者になることで、借金が解決するようだ。アイデアをくれたギルド長には感謝が絶えない。
D級になるにはクエストクリア数を17件増やせばいいようだ。
1週間で17件増やす、など普通では無理だそうだが、やるしかない。
俺のここでの頑張りが孤児院の未来を、ひいては俺の未来につながる。ミレーユやリオン、キールが俺を将来養ってくれる。今頑張るしかない。
エリーが同時にいくつかをこなす方法を見つけてくれた。俺はその通りやればいいらしいのでラクができそうだ。
side ギルド職員エリー
「ギルド長、感謝する。」
「なに、ギルドのことは俺が一番詳しいからな。こういうやり方を知っていただけだ。」
キッドさんに感謝されて、ギルド長は笑顔を浮かべていた。
冒険者をサポートするギルド職員として、こういう姿には憧れます。
「しかし、1週間で17件のクエストをクリアする、このハードルは高いぞ。」
「なに、そうなのか。だが俺はやり遂げるさ。彼らの将来を潰すわけにはいかない。なら今を俺が頑張るだけさ。」
キッドさんは子供たちの将来に思いを馳せ、優しい笑顔を浮かべていた。
よし、キッドさんのために私の本気を見せてあげましょう!
「キッドさん。1週間で17件のクエストクリアを目指すため、私が全力でサポートさせていただきます。」
「そうか。エリーよろしく頼む。」
「はい!お任せください。では早速、今日の計画を立てましょう。同時にいくつかのクエストクリアすれば、今日の内で、5件をクリアできそうです。」
「そうか。エリーに全て任せる。俺はお前を信頼している。」
キッドさんが私を信頼してくれている。
疑って、尾行までした私を信頼してくれる。
こんなのズルい、私を堕とす気ですか。
ですが、私も安い女ではありません。
ええ、私の用意したクエストもクリアできないようじゃ堕ちてあげませんからね。
「ふ、ふん。そ、そんなこと言っても大変なのは変わりありませんからね、わ、私が用意したクエストちゃんとクリアしてくださいね。」
「ああ。任せろ。」
そう言って、キッドさんは笑顔を浮かべた。
最初は怖いと思っていた顔が、とてもワイルドで頼りがいのある顔だと思ってしまっていた。
side out
エリーから紹介されたクエストは都市の周辺のモンスター退治だ。
都市の周りをまわって、モンスターを退治すればいいだけだからすごくラクだ。
この時、ウルフを5体、ボアを5体を退治すれば、それぞれでクエストクリアになるらしい。
あと、薬草を5束分、毒消し草を5束分ずつ見つけるとそれぞれでクエストクリアになるようだ。
これが終わると5件を同時に終わらせることができるらしい。すごいラクだ。
出てくるモンスターは全部1撃だ。昨日、テオに教えてもらった戦い方はとても有効だ。
相手の攻撃のスキをついて、急所に一斬りを入れる、それだけだ。
あっ、あそこに薬草があった、これで5束分だ。毒消しはさっき5束分できたので、これで採取はクリアだ。
そういえば都市を出るときに孤児院で出会った兵士さんに再開した。俺を見て、謝ってきた。昔のことだ。気にしてない。俺の方こそ、俺が原因でミレーユに怒られていた。こちらこそ申し訳なかった。
side 都市の兵士スコット
「あ、あんたは。」
「冒険者のキッドだ。都市の周辺のモンスター退治の依頼できた。」
「やっぱり。この間はすまなかった。」
私は、先日誤認逮捕しようとしていた、善人に出会った。
彼はとても体が大きく、顔がとても怖い。だが、心のやさしい男だ。
そんな彼が今日の都市周辺のモンスター駆除を請け負ってくれた冒険者だった。
「ああ、そんなこともあったな。気にするな。俺はしていない。」
「ありがとう。本当にすなかった。」
「だから、いい。こちらもすまないことをした。仕事を全うしようとしただけで、ミレーユに怒られることになってしまったな。」
「いやいや、君にこそ謝ることは何もない。」
本当にいい人だ。体も大きく、心も大きい。
どこまでも優しい、いい男だ。
「では、よろしくお願いします。」
彼は都市の出入り口から外に出た。
そんな彼は、双剣を取り出し、モンスターに斬りかかった。
彼が1斬りするごとに、モンスターが倒されていく。
剣が全く見えない。すごいスピードで移動しながら、モンスターが斬られて、絶命していく。
まるで、カマイタチだ。
彼が動きを止めて、地に膝をついていた。
どうしたんだ、何か痛めたのか。
見ると彼は薬草を取っていた。モンスター退治しながら薬草採取まで同時にこなすとは。
私は彼が見えなくなってまで見ていた。
周りの同僚も、
「あの人、上級冒険者なんですか?」
「いや、一昨日冒険者になった駆け出しだそうだ。」
「えっ!駆け出し!あれで!」
「そうだ。ついでに私が誤認逮捕しそうになった人だ。」
「えっ!スコットさん何やってるんですか!」
「いや、孤児院にあんな風貌の男が現れたらな…」
「まぁ、わかりますけど。でも、顔は怖いですけど、悪い人ではなさそうですよ。」
「そうなんだよ!彼はな、自ら寄付をしに孤児院に行くような善良な人だ。」
「そ、そんな人なんですか。人は見かけではわかりませんね。」
「そうだな。ほんと、そう思うよ。」
私は彼を誤解から逮捕しそうになったが、彼は笑って許してくれた。
彼の評判を少しでも良くできるようにしていくことが、彼に対しての罪滅ぼしになればいいと思う。
彼が帰ってきた。早い。
今までの冒険者の中でダントツの早さだ。
「今戻った。」
「ええ、もう帰ってきたのか。ああ。お疲れ様。すごい早かったな。」
「ああ、昨日指導してくれた冒険者の教えがよかったからだろう。全てのモンスターが一撃で倒せた。」
「一撃!それは凄い。昨日指導してくれた冒険者は誰なんだ?」
「ああ、テオという冒険者だ。」
「テオ!?あの上級冒険者の!?」
「ああ。知っているのか。この双剣も彼からもらったものだ。」
あの上級冒険者のテオが彼を指導したか。
そして双剣までプレゼントしているということは、彼は弟子なのだろうか。
そうでなくても、ギルドの期待の星という奴だろう。
ますます、彼の凄さを感じたよ。
side out
俺はエリーにクエストクリアの報告に来ていた。エリーの協力で、俺のクエストクリア数が5件も増えた。
これで、F級冒険者だ。あと12件をクリアすれば、D級冒険者だ。
そうすれば孤児院が救われれる。みんな幸せ。俺の将来も幸せ。気分もルンルンだ。
あっ、そうだ。もう昼を過ぎている。エリーが確認を終わるまで、昼メシを食おう。
せっかくミレーユが作ってくれたものだ。楽しみだ。
俺がメシを食っていると、よこせと言ってくるやつがいた。そいつを見て、子供ではなかったため、無視して食べ続けた。そいつは俺のメシを床に叩きつけた。俺は落とされただけなので、拾って食べて、食べ終えた。そいつはまだ、何か言ってきたので、俺は優しくお引き取り願った。
side 新人イビリのカーズ
俺様がギルドで酒を飲んでいると、でけえ男がメシを食いだした。
最近調子に乗っている、冒険者キッドだとすぐに分かった。
奴はエリーちゃんに馴れ馴れしい奴だ。俺だって、対応してもらえねぇてのに生意気な奴だ。
ちょっと礼儀を教えてやるか!
「おい!お前、いいもん食ってじゃねーか。俺様に寄越しな。」
そいつは俺を見て、がっかりしたのか心底どうでもよさそうに顔を戻し、メシを食い続けた。
「てめえ!このカーズ様の言うことが聞けねぇてのか!」
そいつは今度は俺を見もせずに食べ続けている。
「この野郎!」
おれはメシのことなどどうでもよくなり、そいつの弁当を机ごとぶっ飛ばした。
そいつはそれでも俺を見ず、落ちた弁当を拾って食べ続けた。
「コ、コイツ!」
俺はここまで無視されて完全にブチギレていた。
ここまでコケにされて黙っていられるか!
そいつはメシを食い終わり、俺を見て。
「まだいたのか。」
俺はひたすら感情をぶつけた。
正直なにを言ったのか、全く覚えていない。
そいつは立ち上がり、俺の顔を掴んで、
「うるさい口を、この顔ごとを潰せば、少しは静かになるか。」
「ヒ、ヒィィィィィ」
俺は恐怖した。
なんだコイツ!おれは普段、大戦斧を使っていて腕力には自信がある。
その俺が両手で、コイツの手を外せねぇ。
しかも俺は宙に浮いている。なんだコイツ座っていたから分からなかったがとんでもなくでけぇ。
顔を潰されるどころじゃねぇ。
命ごと潰される。
ただどうでもよさそうに俺を殺そうとするコイツ。
いや、殺すなんて自発的なもんではなく、ただ息をするように自然におれの存在を消す。
俺がムシケラじゃねぇか!
そいつは俺に興味を失くしたのか、手を離した。
俺は地に落ちて、ただひたすらにギルドから飛び出した。
俺はC級冒険者として、過去に何体ものモンスターを狩ってきた。だがあんなの初めて見た。
過去に見かけて、必死で声を押し殺し、無様に逃げた、あの時のドラゴン。あの時以上の衝撃だ。
なんだあれ、なんだあれ、なんだあれ、
俺は何時も泊っている宿屋にすっ飛んで帰り、ベッドに飛び込み、体を丸めて、怯え続けた。
side out
ありがとうございました。