表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラクがしたい冒険者~誰か俺を養って~  作者: あさまえいじ
第一章
25/50

第24話

予約投稿です。よろしくお願いします。

「あたしが呼んだんだよ。キッド。」


俺を呼んだ客というのは、俺がよく知る人だった。


「なぜここにいる。キアラ。」

「あんたがこのケルヴィオンにいるって、親父に聞いてさ。それで様子を見に来たってわけだ。」


親父が、か。


side ギルド長マーキス

キアラ、とキッドが彼女の名を呼んだ。どういう関係なんだろうか。


彼女の容姿は非常に美しく、整っている。そしてその目は肉食獣のようにギラギラとしていた。


「俺をここに呼んだ、というのはキアラの差し金か。ブランド―。」

そうだ、まずはブランド―だ。

あいつは一体どういう理由で彼女をさらったんだ。


「キッドをここに呼んでくれ。キアラから当商会へ要望があってな、それでキッドを呼び出した。ああ、ミレーユに手を出していない。リオンという子供が暴れたから、少し、痛い目に会ってもらったが、それで急いでここに来てくれた。子供には後で補填しておく必要があるかな。」


なんていうことはない、というふうに言ってのけた。

こいつは、相変わらず、とんでもない悪だ。


「なぜ、ミレーユをさらった。」

「ミレーユはキッドが必ず来るための餌だ。だから攫わせ、ここに連れてこさせた。それに俺がここに連れてくることは不自然ではないだろう。」


そうだ。こいつがミレーユをさらったということを俺達はブランド―商会が焦ったと思っていたが、こいつの口ぶりからどうやら違うようだ。

俺が合点がいったと言った表情をしたことをブランド―は見抜き、


「どうやら分かったようだな。今回はキッドが目的で、ミレーユは餌にさせてもらった。だからこれは孤児院の借金とは関係がない。」


どうやら俺達は勘違いをしていたようだ。

そう考えに至ったとき、彼女が話し出した。


「さて、種明かしは終わったし、こっからはあたしの話だ。キッド。」

彼女はキッドを見据え、近づき、思い切り、蹴りを放った。


「いきなり何をする、キアラ。」

「いいねえ、あんたはやっぱり、いい。さすがあたしの自慢の弟だ。」


弟、キッドのことを弟といったか、この女。ということはこの女はキッドの姉か。

今までキッドに家族のことを聞いたことがなかったが、姉がいてもおかしくない。


女の攻撃はどんどん続く。

「オラオラオラオラ・・・」


キッドは避け、避けれないものを防いでいた。


「キアラ。いい加減にしろ。」


キッドは拳を放ち、彼女を引き離した。

彼女は満足したのか、笑いながらキッドに話しかけた。


「ははははは!サイコーよ、さすがキッド。我が最愛の弟よ。」

「キアラ。なぜここに来た。」

「だから、親父にキッドの場所を聞いて、会いに来たわけ。わ、か、る。」


傍若無人な振る舞いをしている彼女と彼女のペースに巻き込まれているキッド。まるで姉弟、いや姉弟か。だが、彼女はキッドを怒りの表情で見据え、言い放った。


「この馬鹿、馬鹿キッド。」

「いきなりなんだ。キアラ。」

「あんた、里を飛び出して、こんなとこで何やっているんだ。」

そうか、キッドの奴、家出してこの都市に来たのか。


「好きにしている。」

「はぁ?」

「親父に好きにしろ、といわれたから好きにしている。」

「あんたはも~!」

キアラがそうじゃないでしょ、といいたげな態度だ。


「いいから、帰るよ。親父にはあたしも謝ってあげるから。ね。」

彼女はさっきまでの荒々しい印象が引っ込み、ただ弟を心配する姉の顔をしている。


「いや、帰ることはない。」

「キッド、あんた。」

「親父にも話をした。俺は一族を抜ける。そうしたら親父は好きにしろと言った。だから俺は一族を抜け、この都市で好きにしている。」

「あんた、自分の一族を、家族を捨てるっていうのかい。」

「捨てる。」

「キッド!あんた自分の家族を捨てるって、いったいどうしちまったんだい。」

「おれは無理をしていた。ずっと、ずっと、俺がしたいことをしてこなかった。だから、一人になって好きなことをしている。」

「あんたはもう。はぁ~。」


彼女は弟のめんどくささにあきれている。

姉弟揃って、めんどくさいと俺は思う。


side out


キアラが来たのは俺を連れ戻すために来たようだ。

俺は帰る気はない。


俺は里では一族の跡継ぎであるということで、厳しい修行に明け暮れていた。そんな俺に自由はなく、常に不自由を感じていた。俺はこれまで、誰かに何かをされるではなく、一族を継ぐものとして、誰かのために何かをしろ、といわれ育った。

そんな俺にとっていつからか思ったことがあった。


もっとラクがしたい。


俺も誰かに何かをしよう。だから、誰か俺のために何かをしてくれ。

俺は何時からかそう思った。


俺の一族は他の国に出稼ぎに行く。

そこの国では日々の暮らしを懸命に過ごしている人たちから、奪うこと。

それが仕事の内容だ。


弱肉強食


弱いものを肉として強いものが食う。

親父や一族のみんな、それが自然の摂理だ、だからこれを覚えろ。と言われた。


奪う際に反抗する人たちはみんな殺した。

そんなことに疑問を持つな。そう言われて俺は育った。


そうして、俺は疑問を持たず、ただ壊してきた。


そんなとき、俺はただモンスターを壊した。

いつものように疑問に思わず、壊した。

そのあとに、子供に感謝された。

その子供はモンスターに狙われていたようだった。


「ありがとう。お兄ちゃん。」


初めてだった。誰かに感謝をされたことが。

その子供は、俺に花をくれた。

初めてもらったものだった。


誰かが俺のためにくれたもの。

それが俺には輝いて見えた。

心の底から湧き上がる何かが俺には分からなかった。


その子供は去っていった。

「ありがとう。」


俺がその子供を見たのは、その後一度だけある。

襲った村で道端で動かなかった。

もう動かない。だって胸に大きな穴が開いていたから。



俺は里に帰り、親父に聞いた。

なぜ一族は奪うのか、この答えを親父は答えた。

ラクだから。


苦労して育てる。苦労して運ぶ。苦労して売る。

苦労したくないから、持っている奴から奪う。

その方がラクだから。


俺は親父に殴りかかっていた。

俺も思った。ラクがしたい。

親父が言う、ラクがしたい。

答えは同じだ。でも、違う。

俺と親父の答えが同じでも、違うものがある。

親父のラクがしたいは自分がラクがしたいだ。

俺のラクがしたいはみんなでラクがしたいだ。


俺は思いをぶつけた。

親父にぶつけた。


そして里を出た。


だから、あんな一族に俺は戻らない。


ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ