第9話
本日1話目です。
よろしくお願いします。
昨日の夜はミレーユと一緒に寝た。
ミレーユが目を覚ますと、どうやら昨日のことを思い出したのか、慌てている。
俺に謝りながら、部屋を出て行った。
今日の朝メシの最中はミレーユが俺をチラチラと見ていた。
視線が合うと顔を真っ赤にして逸らし、また同じことを繰り返している。
俺は今日もギルドに向かおうとすると、昨日と同じく弁当を用意してくれた。
俺はそれを受け取り、ギルドに向かった。
今日も弁当をもらった。
これがずっと続けばいい。俺のこの生活と将来を守る為、今日も稼ごう。
side ミレーユ
「おはよう、ミレーユ。」
「‼︎」
私が目を覚ますと、目の前にキッドさんの顔がある。
昨日は全部、キッドさんに私の全てを伝えました。
頭撫でてもらいました。腕の中で泣きました。
恥ずかしくて顔が見れません。
「ごめんなさい!キッドさん。昨日は。」
「いい。俺は気にしない。」
キッドさんには少しは気にしてほしいんですけど。
私はキッドさんの部屋から出て朝食の準備をしています。
でも、昨日と今日のことを思い出してしまいます。
「うぅぅ…」
朝食を作るのを子供たちに手伝ってもらって、なんとか出来上がりました。
キッドさんが朝食を食べています。
その一挙手一投足に注目してしまいます。
でも、目が合うのは恥ずかしいです。
でも、また見てしまいます。
結局最後まで繰り返し、最後まで朝食を食べていました。
今日もお昼を渡して、
「行ってらっしゃい。キッドさん。」
「ああ、行ってくる。」
今日も言えた。こんな日がずっと続けばいいのに。
side out
今日もギルドに到着し、いつものようにエリーに声をかけた。
エリーがかなり慌てている。どうやら緊急事態が発生したようだ。
ギルド長も出てきて、状況を説明している。
どうやら、スタンピードが起こったようだ。
スタンピードはモンスターが押し寄せてくる現象のことらしい。
原因はブラッディーベアが眠りから目を覚ました。
昨日、一昨日にウルフとボアを大量に狩っていたため、都市の周辺にはまだ余裕があったようだ。
俺は討伐に参加することにした。
俺は都市の北から外に出て迎撃に向かった。
side ギルド長マーキス
なんということだ。
スタンピードが起こっただと。
昨日エリー君からキッドがモンスターを狩り過ぎたが、心配していたが、今なら言える。
喜びたまえ、おかわりならいくらでもあるぞ。…
ふぅ、落ち着け、私。 つまらんことを言っても現状が変わるわけがない。
幸いにもテオがいる。ギルド本部からの増援もいずれは駆けつける。
まずはスタンピードを食い止めることだ。
ブラッディーベアはその後だ。
まずは冒険者に現状の説明だ。
「みんな聞いてくれ。ギルド長のマーキスだ。単刀直入にいう。スタンピードだ。原因はブラッディーベアが目を覚ましたことだ。当ギルドの最上級冒険者テオはブラッディーベアの状況を確認しに行った。ギルド本部には連絡済みで増援が来る。みんなには増援が来るまで、スタンピードを抑えてほしい。」
俺の説明に冒険者たちからは色々な言葉が上がった。
「スタンピード‼︎そんなの聞いてないぞ!ギルドは何やってやがった!」
「そうだ!そういう情報はもっと早くに知らせろ!」
「!!!!!!!!」
冒険者たちは俺たちギルド職員を口々に批判しだした。
普段は纏まりに欠けるくせにこういうときだけ纏まりやがって!
俺は怒りに身を任せようとしているとき、一人の男が質問してきた。
「すまない。質問いいだろうか?」
質問者はキッドだった。
俺は先程の怒りを忘れ、キッドの質問に意識を集中した。
「なんだ?キッド。」
「まず、スタンピードとはどういうものなんだ?」
キッドからの質問は初歩的なものだった。
そうだ知らない者もいる。
経験が浅いものは知らないことがあるが、恥ずかしがって聞かないことがある。
こういう分からない時に分からないということは勇気がいる。
現にキッドを嘲笑う奴がいるが、ホッとしている奴もいる。さっき職員批判していた奴だ。
後で覚えていろ。
そうだ、キッドの質問に答えなくては。
「キッド、スタンピードとはモンスターの集団暴走という意味だ。
分かりやすくいうと、モンスターが大量にこの都市に押し寄せて来る、という事だ。」
「そうか。説明感謝する。すまないが次の質問だがいいだろうか?」
「ああ、何でも聞いてくれ。」
よく質問をしてくる。
冒険者にとって情報は命綱だ。こういう姿勢をさっきの馬鹿どもに見習ってほしいものだ。
「では、ブラッディーベアとはどういうモンスターなんだ。」
「ブラッディーベアは突然変異種のモンスターだ。
元はただのベアだと言われているが、それが何らかの影響で進化もしくは変異した存在だ。
普通のベアとは比べものにならない力や耐久性をもっている。」
「ブラッディーベアが目を覚ましたというのは?」
「ブラッディーベアは力が強いが体力が少ないようで、頻繁に眠りにつく。眠りにつく時、山や森の地面に穴を掘ってそこで眠る。相当深い位置まで掘るようで眠りについている時に攻撃できないほどだ。ブラッディーベアの眠りは3年から10年の間だと言われているが、今回は2年経っていない。早すぎるという状況だ。」
「そうか。分かった。感謝する。」
俺は可能な限りの情報を伝えた。
そうすると部下から報告があがってきた。
俺はその知らせを聞き、思わずキッドを見た。
「みんないい知らせだ。都市周辺のモンスター、ウルフやボアが都市を離れて逃げているようだ。
最近とある冒険者が数が減らしてくれたおかげだな。」
キッドは昨日はボア、一昨日はウルフを100体以上狩ったからな。
数を大きく減らした。いくら繁殖力の高いモンスターでも1日2日で元の数まで増えるわけがない。
数が減ったモンスターは数を増やそうと隠れるか別の場所に移動する。
そんなモンスターはスタンピードだからといっても出てこない。
だから止めるべきはブラッディーベアがいる森の方向だけだ。
一方だけであれば、やり方はある。
「みんな、これでスタンピードで警戒する方向はブラッディーベアがいる方向だけだ。ブラッディーベアは北の森にいる。つまり北の守りを固めれば、増援が来るまで耐えられる。」
これでこの都市を守る算段がついた。
「さぁ、ギルドからの緊急クエストだ。スタンピードから都市の防衛。このクエストを受ける奴はいるか。」
「俺が受ける。」
いの一番に声を上げたのは、キッドだった。やはりこの男だ。
誰かが声をあげるのを待っている連中はキッドが声を上げたことで続いていった。
「よし。北の出入り口に集合だ。」
俺は先頭を行き、キッド達が続いてきた。
side out
ありがとうございました。