ショートショート「虫歯」
作中に説明が無い場合はN博士とW君の二人が登場します。
N博士:発明家。
W君:N博士の助手兼モルモット。
「N博士、明日は歯の治療に行くので、午後15時ぐらいに引き上げます。永久歯の再生が出来るらしくて、その被験者に選ばれたんですよ」
「大丈夫なのか、その治療方法は」
「いつもの博士の発明に比べれば、かわいいもんでしょ」
話を聞くと同じ大学の医学部が研究している新しい虫歯治療方法ということで、N博士は興味を持って資料を取り寄せてみた。
虫歯になった歯が、自動で永久歯が生え変わるらしい。 その内容に疑問点もあったが、専門外のことで理解できないこともあり、医学部のことを信じることとした。
医学も日々進歩しており、予算を減らされないためにも負けてはいられないとN博士は自分の研究を再開した。
2週間後
「歯が、歯が」W君は涙を流しながら、N博士に何かを訴えていた。
「この前の歯が生え変わったか」
「無茶苦茶、痛かったんですけど。歯が抜ける時なんて最悪ですよ。激痛でのたうち回って、最後に口の中で何か爆発したんじゃないかって痛みが脳天に響いたかと思うと気を失ってました。
おまけに、おしっこ漏らしちゃうし」
「なあW君、言いたくないのだがな、この後虫歯になるたびにその激痛に襲われるのか」
それからというもの、虫歯を絶対に避けるためにW君は頭がおかしいのではと思えるぐらいに歯磨きをするようになったそうだ。
楽して何かを得ようとして、しっぺ返しをくらい、結局は真面目に行動するという、まんが日本むかし話にありそうな展開です。
こういう最後に「ちゃんちゃん」という感じで終わる話が好きです。この手の話を書きたくてN博士とW君を用意したものの、なかなか望むようなアイデアは出てきません。
植物を植えるかのように、永久歯の種を歯茎に植えると、歯が生えてくる時代がくるのではないかと期待していたのですが、私が生きているうちはダメのようですね。