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葉風
移ろって
ただよって
ぼんやりとしているだけ
濃紫の着物が
宵のなかで
さらり
あたしは水風船を片手に
ぱすんぱすんとやりながら
あぁそうね
あいまいに相槌を打って
きみにすくわれる金魚を
憐れんでいたのです
そっと
そっと
きみの髪の毛が振れる
葉風が
葉を揺らす風の音が
聞きたくて知りたくてたまらないのだよ
日々を歩く喧騒のなかで
ふとなにかを感じたくて
すこしだけ苦しくて
息が詰まりそうなのですよ
押しつぶされてしまいそうなのですよ
あぁまた
ねぇまた
きみは三百円のくじを引く
揺らめく群像の中
葉風だけが吹く