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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第一章 悪魔の潜む街
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VS 悪魔

 ゴードン達の背中を追っていくと、先ほどの酒場から少し離れた場所に広場があった。

 そしてその広場の中心……悪魔というには、あまりにも人間すぎる人物を囲んで、武器を持った人々の壁ができていた。


「私の用は勇者のみ。この街に逃げ込んだという情報は入っているんです。大人しく差し出してください」

「知らねぇって言ってんだろ! 第一、顔が割れてる勇者さまってんなら、街にいれば俺らも気づくはずだ!」

「おかしいですねぇ……これは皆さん、嘘をついているのでは?」

「くっ、話にならねぇ……本当に勇者さまがいるなら、さっさと倒してもらいたいぜ」

「貴方達を倒せば、勇者も出てきます……よね? 呼び寄せる為のエサにはなってもらいましょう」


 悪魔だ。

 見た目は人間だが、中身は悪魔そのものだった。

 その時、いつかの戦いの時みたいな声が聞こえた。


『――次に奴は、闇を放つ』

『――視界を失った人間の背後から、意識を刈り取る』


 ……何だ今の。

 周りを見てみるも、俺の方に視線を向けている人はいない。

 それに、脳内に直接響くような……。


「では皆さん、さようなら」

「逃げるのか! うっ、しまっ……皆、飲み込まれるな!」


 その時、悪魔の周囲から黒い霧が発生した。

 霧は、近くにいた男たちを瞬く間に飲み込み…………すぐに霧は晴れたが、飲み込まれた男たちは全員伏せていた。


 数秒。

 見渡せば、後からきたゴードン達以外の男は、全員倒れていた。

 というか、この街の戦闘員って男しかいないのか。


「さて、後は君たちか。君たちなら、勇者の居場所を知っているかい?」

「はっ! 知らねぇなそんなもん」

「では、残念ですね」


『――左から横薙ぎされる』

『――大男以外、立ち上がれない』


 ……大男というのは、ゴードンのことだろうか。

 いや、今はそんな場合じゃない!


「左だ!」

「っ!!」


 俺の叫びに、咄嗟に動けたのはゴードンだけだ。

 横からの攻撃に対し、持っていたハルバードで、防御する。

 そうやってゴードンが防御したおかげか、悪魔の動きは攻撃を防がれた状態で止まっていた。


「何、ですか。今の声は…………貴方ですか」

「うっ……」


 ゆっくりと。

 獲物を見定めるように、奴がゆっくりと視線を這わせる。

 こちらに向けられる全身を撫でるような視線に、思わず身震いしてしまう。


「っ、うらぁ!」

「邪魔です」


 防御した体勢のままゴードンが反撃をするが、すぐに返しの攻撃をくらって倒れてしまう。

 同時に、先ほどの攻撃を受けなかった数人も倒され、このだだっ広い場所に今立っているのは……悪魔と俺の二人のみ。

 おいおい、もっと頑張ってくれよ。


「先ほどの攻撃……貴方、視えてましたね?」

「いや、知らねぇな」

「……ほう、知らないフリですか。では……これはどうですかっ!」


 実際、攻撃なんて視えていない。

 ただ頭の声に従っただけだ。どちらかと言えば、予想できたというほうが正しいだろう。


『――下からくる……その後、右から蹴りがくる』

『――体勢を崩すが、反撃してはいけない』


 ……まただ。

 しかし、従わなければ俺もやられる!

 今は、この声だけが頼りだ。


 俺は奴の行動を見越して、左へ転がった。

 転がった後、先ほどまで俺の頭があった位置に、奴の蹴りが炸裂した。

 あの指示がなければ、聞こえたのは蹴りが空振った音ではなく、代わりに俺の頭が潰れるような音が響いたことだろう。


 俺も奴も、今は地面に手を付いたまま、いつでも立ち上がれる状態で様子を伺っている状態だ。


 今思うと、魔王といい、悪魔といい……序盤から大物ばかりだ。

 初心者らしく、まずはスライムあたりから戦いたいところだが。


「……やはり、簡単にはいきませんね」

「俺には効かないな」

「……なぜ、攻撃を仕掛けて来ないんですか?」

「一見隙だらけに見えるが、カウンターされそうだったからな」

「ほう……これはこれは」


 すると奴は、興味を失ったのか、こちらに背を向けて立ち上がった。

 チャンスだ!

 今なら、反撃は出来ないはずっ!


 俺は買ったばかりのダガーを抜くと、奴の背中に投げ飛ばそうと構える。

 投擲しようと力を込めた時、またあの声が聞こえた。


『――君は投げた武器で命を落とす』

『――動くな』


 っっ!

 その声に、強制力はない。

 ただ、俺の本能も危機を察したのか、奴に投げつけることは……出来なかった。


 お互いに動かないまま、数秒とも、数十秒とも言える時間が経過する。

 ……これじゃ、埒があかないな。


 俺は力を抜き、その場で構えを解く。

 それを察知してか、奴もこちらに振り返った。


「なあ、ここは引いてくれないか? お前の目的は勇者なんだろ? 俺らは関係ない。エサは……諦めてくれ」

「貴方は、引き際をわきまえているようですね……いいでしょう」


 いつの間にか、奴の背中には翼が生えていた。

 このまま何処かへ飛び去るのだろう。意外と話が分かるじゃないか。


「最後にお聞きします。貴方は勇者の仲間ですか?」

「ん? 残念ながら、俺はアイツの仲間じゃないみたいだ」

「そうですか。それでは…………死んでください」

「――ッ!」


 空へ飛んでいくと思ったが、そう思わせるのが奴の策だったらしい。

 奴は少しだけ空へ飛んだかと思うと、放たれた矢のように急加速して突っ込んできた。


 声が聞こえなければ俺に避ける術もなく、保険のラウンドシールドでどうにか防御できたものの、その一撃により壊れてしまった。

 それでも、奴の勢いを殺す事はできずに、まるでトラックに跳ね飛ばされたような衝撃が襲ってくる。


「ぐっ……! ふっ……」

「貴方はどうやら、勇者の居場所を知っているらしいですね。どうです? 教えて貰えるなら、見逃しても良いですよ」

「っぁ……! 誰が……言うかっ!」


 ……最後にミスってしまったようだ。

 多分、俺の反応から『知っている』と思われたのだろう。

 口は災いの元、とはよく言ったものだ


「さて、援軍が来られても厄介なので、手早く済ませますか」

「うっ……チクショウ」


 おいおい、まだ最初の街から出てもいないんだぜ?

 冒険もしていないのに、初っ端からにやられるとか……冗談じゃない!


 全身を走る痛みはまだ抜けていない。

 身体を動かすこともままならない状態で、俺が取れる行動は……


「……来い! 『本』よ! 自動防御オートガード!」

「……何ですかね、それは。何も起きないですよ?」

「やっぱりダメか……」

「では、最後に。勇者の居場所は何処ですか?」

「……………………知らないな」


 例え仲間ではなくても、今のリョウタとコイツを戦わせる理由はない。

 あいつと、あいつの仲間には借りがある。

 それに、いくらあいつに固有スキルがあっても、魔法が使えない状態で何発か喰らえば、すぐに倒れてしまうだろう。

 それくらい今のリョウタは……弱い。


「手間が省けるかと思いましたが……残念です。さようなら」


 やばい! やられる!


 この状態で、例えあの声が聞こえたとしても……身体が動かなければ、どうしようもないだろう。

 どうしたらこの場を乗り切れる? 考えろ、最初に能力を使えたのはいつだ。


 思えば、リョウタのときも能力は発動しなかった。

 てっきり勇者の前では発動しないものだと思っていたが……そもそも、発動の仕方が間違っていたのだとしたら?


 ……どうせ発動しなければここで終わりなんだ。

 最後に縋ってみるか。


「なら…………顕現せよ! 俺の……悪魔っ!」


 そう叫んだ途端、辺りが白い光に包まれる。

 あまりにも眩しい光に、つい反射的に目を瞑る。


 視界を手放す直前に見た景色は、高速で突っ込んでくる奴と、目の前に現れた銀色に輝く何かだった。




「――ッ! 何ですか、これは!」

「やれやれ、ようやくボクを呼び出してくれたね」

「…………え?」


 目を開けると、そこには……魔王の攻撃を受け止めた懐かしの本、と。

 その本を持つように、銀髪の髪をなびかせた女性が……宙に、浮いていた。


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