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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第一章 悪魔の潜む街
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三つの理由

 いきなりそんなことを言われても、だ。

 見に覚えがないことで納得しろ、と言われても無理があるだろう。


「理由は三つある」

「聞こうじゃないか」


 どうやら根拠はあるらしい。

 しかも三つ。逆に言えば、これを論破できれば、女の子二人との旅が確定するというわけだ。一人の中身は男だけど。


「一つ。まず俺ら……勇者は、別世界から来る。俺とお前の場合は日本だ。ここまではいいな?」

「ああ」

「じゃあ何故、お前は勇者ではないんだ?」

「だからそういった称号は…………」

「勇者が称号だなんて、誰が言った?」


 ……そうだ。

 俺はてっきり『勇者』というものは、称号をもらった者だけが名乗れると思っていた。この言い方を見るに、勇者とはもしや。


「まさか、この世界に来るときに?」

「理解が早いな。勇者とは、女神様の祝福を受け、固有スキルを得た者……そして、異世界人は皆、例外なく固有スキルを持っている」

「じゃあ、固有スキルのない俺は……」

「やっぱり持っていないのか。なら、勇者ではない。そもそも、本当に異世界から来たのかも怪しいところだ」


 隣ではリアンが困惑した様子で、視線をチラチラと向けてくる。

 多分、俺の持つ『本』のことについて言いたいんだろう。

 あれがもし、固有スキルだとすると、力を貸してくれたのは女神様ということになるが……正直、俺にはあれが女神様とは思えない。


 もしここでリアンに助けを求め、固有スキルがあると言っても、あとの二つの理由次第では、仲間に入れないだろう。

 リアンには悪いが、今は相手をしている余裕はない。

 これからの旅がかかっているからな!




「……わかった。他にもあるんだろう? 聞かせてくれ」

「ああ……二つ。お前が最初に現れたのは何処だ?」

「たしか、魔王の間と呼ばれている場所で……」

「そこだ。俺もお前の姿はそこで見た。だけど、おかしいだろ?」


 そんなことを言われても、俺には何がおかしいのかわからない。

 あれか、幼女っぽい人物に、食堂で説教を受けている今の状況か。


「あ! 確かあの場所は、召喚魔法が使えませんでした!」

「そうだ。だからミミも事前に召喚してもらった。なのに、あの場へ召喚された……何故だ?」

「それはわからない。ただ、俺が召喚された理由は、お前らが『禁忌』と呼ぶ呪文を俺も使ったからだ」

「お前! それが使えるのか!」


 俺がそう言うと、リョウタはテーブルをダン! と叩きながら、椅子を勢いよく倒した。

 その行動に、食堂が一瞬だけ無音に包まれる。


 まるで昨日のリアンみたいな反応だな……しかし、裾がフワっとして太ももは見えたが、残念ながらその先はわからなかった。


「……ここは目立つ。部屋に戻るか」

「そうだな……」

「はい…………」


 リョウタが残していた料理は、いつの間にかリアンが食べていた。

 意外と大食い……と思うは失礼なので、食べ残しを良しとしない、優しい子だと思っておこう。




 先頭を歩いていたリョウタは、ここで当然! といったように俺の部屋の前に来ると、鍵を開けろと催促してきた。

 俺が思わず『今日はこっち?』と聞いてしまうと『ちょ、ちょっと色々とあってな……』と返ってきた。


 彼も今は乙女だ。まあ……色々とあるんだろう。

 そんな部屋に同居しているリアンも、複雑そうな顔をしているし。


 やがて、俺はベッドに、リアンは定位置の椅子に、リョウタも椅子に……座って、足が床に届かなかったみたいなので、ベッドの上に座った。

 俺の近くに、女の子が二人も座っている……あ、何かいい匂いがしてきた。


 こちらの緩みに気づいたのかわからないが、リョウタが仕切り直しと宣言するみたいに、ベッドの上をバンバンと叩いた。


「じゃあ、気を取り直してだ。お前はあの呪文、使えるのか?」

「わからない。ただ、俺がプレイしていたゲームで使った結果こうなった。なので、俺自身が使えるかはわからない」

「そうか……もしその呪文が使えるなら、元の身体に戻れるかもと期待したが。いや……その前にまず、石化を解除しないといけないのか……はぁ」


 そういって、そのままゴロンと横に倒れる。

 ベッドだからいいけどさ、そこ俺の寝床ですよ。

 しかし、さっきまで元気よくベッドを叩いていたのに、リョウタの落ち込みようが気の毒だ。

 その姿を見てか、リアンが遠慮がちにリョウタの顔をそっと覗き込んだ。


「あのー、確か勇者さまは『禁忌』の呪文を、使えませんでしたか?」

「そうだ! その『禁忌』って呪文、勇者にしか使えないって話だが、リョウタなら使えるんじゃないか!」


 その助け舟に、俺は勢い良く乗るが、対するリョウタの顔はすぐれない。

 その反応に、思わずリアンと顔を見合わせる。


「……ないんだ」

「え? 何だって?」

「使えないんだよ! 俺の魔法もっ! シーシアの魔法もっ!」


 …………リョウタがいうには、人によって魔力の性質が違うらしい。

 身体が入れ替わったという前例があるかまでわからないが、この魔法を覚えているから、別の身体でも使える……なんて、世の中はそこまで甘くなかったらしい。


 先程、諸事情で汚れてしまった箇所を、魔法でクリーンしようとしたところ……見事に失敗。

 何かおかしいと思いつつ、他の攻撃魔法、またこの宿を吹き飛ばすような大技も試してみたが、全て発動しなかったらしい。


 ……もし成功していたらどうしたんだよ。

 また、同じようにシーシアが使っていた魔法を試すも不発。

 身体が覚えていても、見よう見まねで発動できるほど甘くはないらしい。


「じゃあ、リョウタは魔法が全く使えないんだ?」

「うぅ……そう、なるな」

「リアン。リョウタとシーシアの戦闘スタイルは?」

「ふぇ! ゆ、勇者さまは固有スキルと合わせた近接攻撃が得意で、シーシアさんは後ろから遠距離特大魔法です! そしてわたしが」

「ああ、リアンはいいや」

「そんなぁ…………」


 すぐ横で、泣きそうになっているリアンには悪いが……今の俺に、隙きあらば自分語りをやらせる余裕はない。


「ということは……リョウタ、お前はこれから、どうやって戦っていくんだ?」


 その言葉にリアンはハッと顔を上げた。

 どうやら気づいていなかったらしいな。こちらへ助けを求めるような目を向けられても困るぞ。

 逆にリョウタは、横になったままゴロゴロしていたかと思うと、ついには膝の間に顔を埋め、まるでダンゴムシのように小さく丸まってしまった。


「それ、なんだよなぁ……」

「なら是非とも、この私めを旅の仲間に加えていただきたいと」

「そ、そうですよ。なおさら仲間が必要です!」

「……三つ目だ。これが、最大の理由だ」


 相変わらず、リョウタは丸まったままだ。

 しかし、その言葉は……浮ついた俺と、リアンを黙らせるには十分だった。


「三つ。お前から感じる、魔王と同様の気配。それはなんだ?」

「魔王と同じ……気配?」

「さっき俺は魔法が使えなくなったといったが、そんな俺でも……こいつだけは、使えるんだよ」

「ゆ、勇者さま! それは!」




 こいつ、身体が変わってポンコツになったと思ったが、さすが勇者だというべきか。


 奴の体勢は丸まったまま。しかし、全身からオーラのようなものを発している。

 それに対して……俺は身体の震えが止まらない。威圧されているのか?


 今動いたら、無事では済まないと感じる……これは、本能だ。


「俺の固有スキルだ。名は魔族撃滅サタナスロンペルといってな。このオーラに触れた者は、魔王の側近であればあるほどダメージを受ける。魔王相手でようやく最大出力になるらしいが……お前が本当に無関係なら、ダメージは受けないはずだよな? 試してみるか」

「マジですか……」


 これが……勇者に与えられるという、固有スキルか。

 固有スキルを発動した奴は、先程まで弱々しい姿を見せていた少女と同一人物だととは思えない。

 それほど、格の違いというものに圧倒されてしまった。


「ほら、俺に抱きついてこいよ。今なら許す」

「くっ、ものすごく魅力的な提案だが……もしかしたら本当に……」

「よ、ヨーヘイさん……」

「それとも、俺から行こうか。この手を握ることができたら、今日からお前も仲間だ。一緒に旅をしよう」


 奴はすでに起き上がって、こちらへ手を差し出している。


 俺自身は、魔王と繋がっているという自覚はない。

 だがもし、あの『本』をくれた者……力を貸してくれた者が、魔王に近い存在だとすると……無傷ではいられないだろう。


 あれの正体がわからない以上、ここで賭けに乗るのは得策ではない。

 だがしかし。


「……わかった。俺も腹をくくるよ」

「ようやく試す気になったか。ほら、握手しようぜ」


 そっちが固有スキルを出してきたなら、俺もあのスキルを使うしか無い。

 別に隠しておく理由もないんだ。ここで俺の本気を見せつけてやろう。


「……顕現せよ! 俺の『本』!」

「何ッ! やはりお前! …………ん?」

「……あれ?」


 いきなり構えた俺に、奴も警戒したが……何も、出てこない?

 あれ、おかしいな。


「……なんだよ、固有スキルでもあるかと思えば、ただのブラフか」

「来い! 『本』よ! 力を貸せ『本』よ!」

「滑稽だな。そんなことしなくても……ほら」


 俺が『本』の召喚に夢中になっている隙に、奴はすぐ横まで迫っていた。

 やばい! そう感じたときには既に遅く、全身に電流が走ったような感覚の後、俺の意識は遠のいていった……。

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