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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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人気の格差社会

 

 資料室というのは、メフィの案内によると二階にあるらしい。

 行くまでに手続きとか、止められたりするかと思ったが、シキという人物の仲間だと伝えると、簡単に通してもらうことが出来た。

 ……それに、クッキーやらアメやらのお菓子も持たされる。


「なあなあ、もしかしてシキってここじゃ人気なのか?」

「知らなかったのかい? 彼女は今やここのマスコットさ。何でも礼儀正しくて可愛いとか」


 ずっと森に引きこもっていたわりには、シキのコミュニケーション能力は高いらしい。

 街に入った途端これとか、この三日間引きこもっていた俺と随分差がついてしまったな。


「ついでに、シキは何か貰ったらお返しにお菓子をあげているようだけど……マスターは貰ったことなかったのかい?」

「……え?」


 そういえば、朝送る時に何か袋を持っているなーとは思っていたが、中身がお菓子だとは気がつかなかった。

 思えば朝も俺より早かったし、その時に作っていたのかもしれない。


「そ、そうか……俺は何もあげていないから……」

「ちなみに、ボクは毎日手伝っているからね。そのお礼として毎回食べさせてもらっているさ」

「なん、だと……」


 貰えなくても仕方ないと持ち直そうと時、悪魔からの追撃によって俺の機体は撃墜される。

 しかも、食べさせて……だと?


「さすがに資料室じゃ、飲食は禁止だろー」

「そうだね。だから休憩中はギルドの酒場で仲良くご飯さ」


 聞くと、昼食はギルド長持ちで好きなものを頼めるらしい。

 シキに至ってはメニューのどれもが新鮮なため、一日二品ずつ制覇していっているという。

 そこら辺の冒険者が絡んでこないかと心配したが、弱い者はメフィの空中浮遊に怯えて、強い者はシキの強さに気づいて近寄ってこないのだとか。


 これ、俺の居場所が完全になくなっている気がするな。


「マスターの昼食はまだかい? もうすぐシキも休憩だし、今日は三人で食事といこうか」

「それいいな」


 二人で仲良くしている姿に少し嫉妬したが、そもそもはギルド長であるランドから不遇されているのが悪い。

 他にもメフィとギルドの様子について雑談しつつ、資料室へと辿り着いた。




 初めて入るそこは、資料室というよりはまるで図書館のようだった。

 半数は綺麗に整頓されているが、半数は遠くから見ただけでもただ詰め込まれているだけという印象だ。

 これを整理整頓するには、気の遠くなる作業であろう。


 場所が間違っていないなら、ここにシキがいるはずなのだが……姿が見当たらないな。


「……ここ?」

「そうだよ。シキは多分あの辺りに……おや?」


 メフィが飛んで向かっていった先には、一つの壁が存在した。

 いや、よくみると資料のファイルが積み重なって出来た壁らしい。

 なにやらそこから声が聴こえるみたいだ。


「あー……明日までにここまで終わらせたいのですけど、気になる記述が多すぎて集中できません」

「こんなときメフィストさんがいたら必要な資料だけ積んでもらえるのでしょうが……ちょっと出てくるって、どこまで行ったのでしょう?」

「これじゃ明日の買い物ができませんっ! こうなったら勘で探すしか」


 ……なにやら自暴自棄になっていそうな声が聞こえるが、この向こうにシキがいるのは間違いないだろう。

 メフィはそのまま飛んで上空から、俺は資料を崩さないように後ろから回り込む。


「やあやあ、お待たせ」

「メフィストさん! 待っていましたよぉ……今日はここまで終わらせたいので、この中の資料から関係ありそうなものをピックアップお願いします」

「了解したよ。あと、今日はもう一人連れてきたよ」

「……え?」

「よう、シキ。苦戦しているみたいだな」

「ヨ、ヨーヘイさん!? どうしてここに?」


 メフィには泣きついたのに、俺は引かれた気がするな。

 対応の違いに軽く傷つく。

 まあ作業の貢献度で言ったら仕方ないかもしれないが。


「少しギルドに用があったからな。様子を見に来た」

「そ、そうですよね……文字が読めないヨーヘイさんが、手伝いにきてくれるわけが」

「その通りだけどショック」

「あっ、いえ! 違いますよ! 来てくれてありがとうございます!」

「まあマスターは居ても邪魔だからね」


 文字が読めないとなると、資料を判断することもできない。

 俺に出来るのはせいぜい荷物運びか整理整頓くらいだ。

 ……マジで何もやることがないな。


「くっ、だからせめて昼飯でも一緒にと思ったが、邪魔したな」

「昼食! そういえばもうそんな時間ですね! このまま少し待っててください。すぐキリをつけますので!」


 何やら誤魔化そうとするように急ぐシキだが、目をそらしていた事実を突きつけられた感じだ。

 さっきも殺されかけたし、かといって資料探しの役にも立てない。

 結局、俺の存在意義ってなんだろうか。


「……ちなみに、今はマスターが見ているからかシキの作業効率は上がっているよ」

「微妙なフォローありがとう」


 意味のないことは考えるだけ無駄だ。

 目的の為に進むだけ……今はとりあえず昼食か。


 その後、シキとメフィの言うキリがつくまで、俺は無駄に整理整頓を行なって時間を潰していた。

 これで少しは資料を取りやすくはなるだろう。


 シキが申し訳なさそうにお礼を言ってくれたが、言わせている感が満載で悲しくなったのは心に秘めておく。




 昼食はギルドの酒場ということだったが、それは入り口近くにある。


 なんでも受付の左にあるスペースが食事処だとか。

 食事の注文カウンターも受付嬢と同じ位置にあるので、間違える客も多いらしい。

 そんな紛らわしい場所に設置しなくても良いと思ったが、効率の問題なのだろう。

 いくら大きいギルドといっても、荒くれ者の対応や職員不足やらはどこのギルドも問題らしいな。


 俺にとっては初めての場所なので、今日はシキに倣って注文することにする。


「すみません。薬草サラダと、ムシュフシュのソテーをお願いします」

「あらーシキちゃんじゃない。あの人の奢りだからって、今日も手加減しないのね」

「はい。あれだけの仕事を押し付けてくるので、当然の権利です!」


 どうやらギルド長に対する不満で意気投合しているらしいな。

 ちょうどいい、ここは俺も同じものをいただくか。


「俺も同じものを」

「あら? 誰か知らないけどいいのかしら。サラダはともかく、ムシュフシュのソテーは高いわよ?」

「ギルド長の奢りらしいので」


 そういってシキを見ると、頭を横にブンブン振っている。

 どうやら俺の分は自腹になるらしい。


「……薬草サラダのみでお願いします」

「はい、銅貨5枚ね」


 なんだろう、この敗北感。

 いや、無理をすれば食べられるが、食費も削れるところは節約したい。

 待遇の格差に落ち込んでいると、注文をとったお姉さんがこちらを覗き込んでいることに気づいた。


「ん? 何か」

「あなた……もしかして、シキちゃんを送り迎えしている人?」


 できるだけ早朝に出るようにしていたが、どうも見ている人はいるらしい。俺の存在は隠すようなモノでもないので、素直に頷く。


「キャー! みんな聞いて! シキちゃんの同居人が来たわよ!」


『えっ! どこにいるの! あれ、あの机の男性?』

『あれ? 何か想像と違うわね……』

『でも感じのいいお兄さんに見えない?』

『家ではあのシキちゃんもお兄さんに甘えているのかしら…………キャー!』


「何だ何だ!」

「ちょ! 違いますよ! 皆さん落ち着いてください!」


 オーダーを取った女性が奥に呼びかけると、同僚と思われる女性たちがワラワラと出てくる。

 こちらを見ながら好き勝手言われているが、それだけギルドにいるシキの人気が凄いのだろう。

 まだ来て数日だというのに凄い人気だ。


『……あいつが?』

『あんな弱そうな奴と姐さんが?』

『いやしかし、あの浮いてる女性の言うマスターらしいぞ』

『なら、凄腕の魔法使いなのか? それにしては全く感じない』

『待て、魔力を隠蔽しているのかもしれない。ここまで完璧に隠蔽できるなんて、やはりタダモノではないぞ!』


 同時に、ギルドの女性だけにではなく、周りにいた冒険者たちにも好き勝手言われているが、俺に関する評価は事実だから否定もしない。

 魔力隠蔽? そんな事しなくたって魔力自体が無いわ。


「シキは彼女たちのマスコット的な存在なんだよ。つまりそういうことさ」

「どういうことだよ!」


 悪魔の説明じゃ全く理解できないが、ここは考えても仕方ない。

 周囲による好奇の視線に晒されつつ、俺達は食事を待つ。




「……ヨーヘイさんは、本当にそれだけで良いのですか?」

「ああ」

「じゃあボクは、いつもどおりシキのご飯を貰うとするよ」


 サラダだけの俺に対して、シキの前にあるのは豪華そうな肉料理。

 話によると、どうやらムシュフシュというのはそこそこの高級食材らしい。

 魔物なので討伐依頼も出ているが、それでも近くには生息していないので肉も貴重だとか。


 美味しそうに食べているシキと、それを食べさせてもらっているメフィを見ながらサラダのみは、一種の拷問かもしれない。


「あの、報酬は貰っていますので、ここは何か注文しましょうか?」

「……いや、やめておくよ」


 ここが宿にある食事処なら遠慮しなかったかもしれない。

 しかし、ギルド内で、しかも周りの注目が集まっているなか、そこまでできる勇気がない。

 そんなの「俺はヒモですよ」とアピールをしているようなもんじゃないか。

 プライドでメシは食えないが、多少の強がりくらいいいじゃない。


 サラダのみなのですぐに食べ終わった俺は、二人がワイワイ食べている姿をしばらく眺める。

 ……うん、食べたばかりなのにお腹が空きそうな光景だ。


 やがて、もうすぐ二人が食べ終わるといったところで、ギルドの二階からドタドタと人が下りてきた。


「冒険者のヨーヘイという人物はいるかしら!」

「ん? 何か呼ばれたような……」

「マスター、あそこだよ」


 メフィに言われた先を見ると、そこにはギルド長とリョウタがいる。

 あの様子だと、やはり俺の説明もいるらしい。

 しかし、だ。


「面倒そうだから無視するか」

「ギルド長を相手に強気ですね……」

「だって、あんな態度を取られたらな」


 わざわざ名乗りでるまでもない。

 街の危機? ギルド長がそんな態度なら知ったものか。

 俺達は今日中に街を出ればセーフだろう。


「いないの! もし本当にいないのなら、ユニコーンと一緒に探すわよ! いえ、まずはここに突撃させて……」

「ここにいます! 要件は何でしょうか?」


 あんな凶暴な奴が来たら、骨が折られる。これは外で見たアイツの態度からするとほぼ確定事項であろう。


「なんだ、いるじゃない。奥の部屋に行くわよ」

「ちょ! 待て、食事中だぞ」

「今食べ終わりましたよ?」

「シキさん、空気読んで」


 俺はリョウタに服を掴まれ、シキとメフィはその後を付いてくる。


「ところで、おねだりはしたのか?」

「っ! バカ!」


 一瞬意識を失ったあと、そこはもうギルド長の部屋であった。

 多分シキが運んでくれたのだろうが、現実逃避をすると、だ。


 リョウタのやつ、瞬間移動も使えたとは意外だったな。


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