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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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絶体絶命の敗北


 試しに近くの人に近寄ってみるも、安らかに寝息を立てているだけだ。

 ただ眠っているだけなら安心したな。


 一番最初は襲撃でも受けたのかと焦ったくらいだ。

 ……まあ、すぐに誰かのイビキが聞こえたのでその心配もなくなったが。


 でも、こんなに人々が一斉に眠るなんてありえるのだろうか?

 違和感は人々の姿だけじゃない。

 道端には誰かの荷物が散乱しているし、店の扉は開けっ放しになっている。

 なにより、目の前に割れたコップと水が飛び散った痕跡がある。


 この様子からすると、今さっきまで人々が動いていて、急に眠らされた。といった感じだろうか。

 おいおい、これってまさかやばいんじゃないの?


 誰か無事な人はいないか近くを歩いてみたが、近くに見える人は誰も彼もが道端に伏せている。

 もし音系統の魔法で眠らされたなら、俺に聞こえていてもいい気がするが……だとすると、この現象はなんだ?




 悩みながらも歩いていると、倒れている人の中で何やら話し合っている二人組を発見した。

 この状況でピンピンしているなんて黒幕の可能性も高いが、だとしても疑問は解決したい。

 こちらには気づいていないようだし、ここはさっきのライトニングソードでも握って近づいてみるか。


「おい、説明しろよ」

「はぁ? なんだお前……お前もコッチ側か?」

「ああ、俺を巻き込むなよ」


 こいつらがいうコッチ側がよくわからないが、勝手に仲間だと思ってくれるならありがたい。

 必要な情報だけ引き出して、さっさとオサラバだ。


「この一帯はハズレといったところだな。お前も明日の為に呼ばれたクチだろ。こんなところにいないで、準備でもしたらどうだ?」

「生憎と準備は万全なんでな。お前らは、これで準備は済んだのか?」

「……ああ、まずは実験さ。この程度でここまでの効果があるなら、明日はもっと楽しいことになる」


 流れからすると、明日何かするためのテストとしてこんな状況になったということか。こいつら、ここら辺で片付けておくか?


「お前も巻き込まれたくなかったら、絶対にこの頂いた護石を手放すなよな。ま、そんなことは馬鹿しかやらないがな……ハッハッハ!」

「あの方のやることだから、何か意味があるとは思ったが……こういうことだとはな」

「じゃあ、その護石とやらを貰おうか」


 どうして仲間だと思われたかはわからないが、こいつらが今見せてくれた護石とやらがあれば、眠りにつくことはないらしい。

 なら、こいつらを倒してもしもの事態に備えるだけだ。


「なんだ? 一つあれば十分だろ。そんな何個あったって認められるわけでも…………あががががが!」

「まず一人……っと」


 買ったばかりのライトニングソードを試してみたが、ソードとして使わなければ優秀な部類に思える。

 敵? を一瞬で無力化出来る上に、殺傷能力はない。

 さすがに人殺しとかは勘弁だからな。刀身がないので攻撃を予測できないという点も評価できるな。


「てめっ! 何しやがる!」

「次はお前の番だ」


 物理には無力なこのライトニングソードだが、一応形だけでも二刀流として構えて見せる。

 いくら自動防御オートガードがあるとはいえ、突進してくるなよ……くるなよ。


「くっ、俺も退くことはできねぇ……このままじゃ終われねぇ!」

「ちょっ……終わってくれよ!」


 俺の願いも虚しく、どうやら無謀にも突進することに決めたらしい。

 奴は背中にあった槍を構えて襲ってくるが、槍ってリーチ長すぎない?

 ライトニングソードは届かないし、かと言って短剣を取り出そうにも間に合いそうにない。

 ここは回避行動と、あれだ!


「こい! 自動防御オートガード! ……ぐぁぁあ!」

「クッ、躱したか。だが、斬れ味は受けてもらおう!」


 ……たしかにあのとき、回避と攻略本は間に合ったはずだった。

 しかし、穂先が攻略本に当たり、方向をずらす一瞬、急な動きに遅れた俺の右手が、槍の穂先に掠ってしまった。


 毒でも塗ってあるのか、少しの傷でもジンジンと痛みやがる。

 チクショウ、どうなってやがる。


「毒を塗るなんて卑怯だぞ!」

「ん? 毒なんて使ってないが……しかし、こいつにかけられた呪いがそろそろ発動する頃だ」

「呪い……だと」


 呪いがあるなんて、あれはもしかしたらSレア級の武器なのか?

 だとすると、戦闘が長引くにつれて、呪われた俺がだんだんと不利になっていきそうだ。


「さあさあ! 早く俺を倒さないと呪いでお前は死ぬぞ!」

「死ぬような呪いなのかっ……くっ」


 奴は攻撃の手を緩めないので、俺も回避と防御するだけで精一杯だ。

 ライトニングソードのリーチが届かない。かといって短剣を抜くヒマもない。

 それに呪いが進行しているなら早くメフィに解いてもらいたいのに、撤退させてくれる様子もない。

 奴の攻撃から逃げているだけだが、いつまで逃げ続ければ良いのだろうか。


 心なしか、ジワジワと生命力も奪われている気がする。

 これが、呪いの効果か。


「ハッ、呼吸が苦しくなってきたんじゃないか? お前はここで死ね!」

「はぁ……はぁ……くっ」


 たしかに胸が苦しくなっている。

 しかし、これはなんというか、体力不足による苦しさじゃないか?

 いや、冷静に考えられないだけで、これが呪いの効果なんだろう。


 ……もう逃げるのも疲れてきたな。

 どうせ死ぬなら、呪いでゆっくりとではなく一撃でやられたい。


「なんだ。鬼ごっこは終わりか?」

「……ああ、俺はもう疲れたよ」


 鬼ごっこというと、シキを思い出すな。

 こんなとき、メフィかシキがいれば助けてもらえるんだが……ダメだな。いつまでも他人任せじゃ、こういうとき守れないか。

 自動防御オートガードがあるってタカをくくっていたが、まさかこんな落とし穴があるとは。


「フッ……このまま呪いで殺しても良いが、俺が終わらせてやるよ」

「助かる」

「では……死ねぇ!」


 その言葉を聞き、俺は目を閉じる。

 今思えば、ここにてから色々とあったな。これで死んで元の世界へ戻れたら……いや、そんなに甘くないか。

 そんなに長い期間でもなかったが、この世界に来てからの出来事がまるで走馬灯のように流れ――――


「ぐほぉぉ!」

「なっ……!」


 俺は気づけば、腹部に大ダメージを受けていた。

 これはやばい。


「うぅ…………ゔぉぇぇぇぇ」

「なっ、ちょ、ここで吐くなよ!」


 思わず四つん這いになり、殺されそうになっていたにも関わらずに道端でマーライオンをしてしまう。

 なんだコイツ、殺そうとして思いっきり腹パンでもしてきたのか。


 まだ収まらない吐き気に襲われながらも横を見ると、そこには中心に穴が刻まれた攻略本が落ちていた。

 穴が少ししかあいていないところを見ると、殺されそうになったところに攻略本が割り込んで攻撃を受けたんだろう。

 しかし、押し込みの衝撃までは消せずに腹パンのようになったと……状況を見るにそんなところだろう。


「厄介だな……ま、放っといても死ぬんだ。そこで大人しくしていろ」

「ま、まて! 逃げるのか」

「あぁ? 見逃すんだよ。ま、もう会うことはないがな」


 槍で殺せないとわかると、このまま放置ですかそうですか。

 今では腹の痛みに襲われて、呪いよりもそっちの痛みが強い。

 これは回復するまで……というか、俺は呪いで死ぬのか。




 そのまま大の字になって転がり、周りで寝てる住民の一員となって空を見上げる。


「ふぅ……今日も、いい天気だな」


 結局なんの二人組かわからなかったが、俺にはもう関係のないことだ。

 死ぬ間際になって能力が目覚めることも、誰かが助けにくることもない。

 さながら勇者のおまけというか、悪魔や鬼の付属品としての最期には相応しいだろう。


 せめて、最期の瞬間までこの空を眺めて――




 一瞬。

 高速で何かが真上を横切っていった。そして近くからバゴォン! という何か衝突したような爆音が鳴り響いた。

 それに続いて、色々と崩れたり連鎖して崩壊する音。

 俺の見ていた空は、瞬く間に砂埃に包まれてしまう。


 ……何が起こったんだ?

 未だに砂埃は晴れないが、遠くから馬の足音が近づいてくる。

 どうやら、その馬かそれに乗る人物の仕業らしい。


「……ふぅ、まあこんなもんかしらね。まったく、いきなり槍先を向けて突っ込んでくるから手加減できなかったじゃない」


 気づけばすぐ近くから声が聞こえた。

 その様子だと、俺を襲ってきたやつを一瞬で片付けたのは、目の前の人らしい。


「あれだけ大きな音を出したんだから、みんな起きてきても良さそうなものだけど……目撃者がいなくて助かったわ」


 あの建物の崩壊はわざと起こしたものらしい。

 しかし、ただ起こすだけなら別の方法もあっただろうに、実に乱暴な人だ。


「まだみんな起きないのね……中には大の字になって寝てる人もいるし…………え、嘘ッ!」


 俺はずっと大の字で寝ていたが、目だけは空を見上げていた。

 なので砂埃が晴れてきたと同時にやってきたその人物に、自然と目線を向ける。


「なんでいるのよ?」

「…………え? リョウタ?」


 やってきたのは、白馬の一角獣に乗ってきた一人の幼女。

 いや、俺の記憶が間違っていなければかつての勇者のリョウタだ。


 女の子らしいというか、俺の記憶と一致しないが……たしかに目の前の人物の見た目はシーシア、もといリョウタそのものだった。


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