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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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テンプレになれないほどの無能力

 門番に連れられるまま、町並みを一直線に歩いて行く。

 目的地は多分ギルド本部だと思うが、眺めるだけなのもヒマだな。


「ところで、門番さんはあの場所で長いのか?」

「門番は職業だ。俺のことはガルと呼べ。なんでそう思った?」

「ああ、ガルさんの代わりに二人出てきたからな。一人で見張っていたなら代わりも一人で良いだろ」

「そのことか……あいつらはまだ新人だからな。念のため二人一組で行動させているんだ」

「やっぱり、魔物とか多いのか?」

「この辺りはそこまでだな。襲ってくることはあるが、槍で牽制してやれば大体逃げていくぜ」


 ということは、そこまで大物は近づいてこないらしいな。

 ただの獣程度なら、それくらいで逃げていくだろう。


「でかい虎とか、カバみたいなやつが街を襲ってくることはなかったのか?」

「なんだそれ。そんな魔物がいるなら見てみたいものだな。ハッハッハッ!」

「……いるんだけどな」


 この街は比較的平和なようだ。

 ちょうどいい、いまからギルドにいくなら、このガルとかいう奴にも俺の獲物を見せてやろうではないか。


 それからこの街の宿や、武器や道具などの店についてガルに聞いていると、一際大きい建物が見えてきた。


「あれがギルド本部だ。ここら辺にある街の総括ギルドでもあるから、くれぐれも問題を起こすなよ」

「いかにも俺が危険人物のような発言だな」

「そりゃお前、持ち主が死ぬことで有名な武器を所持しているんだからな。お前死ぬ気なのか?」

「え……その短剣って、そんなに危険な武器なのですか?」

「大丈夫大丈夫、俺はメフィを信用しているからな」


 門番が近くにいるからか姿を表さないが、メフィが見えないからこそ言える言葉だ。アイツが聞いていたら絶対調子に乗るだろうな。

 まあ、仮に出てきてもメフィの分まで通行料は払えない。買い取りまでは大人しくしてもらおう。




 総括ギルドの本部といっても、三階建てのよくある造りな建物だ。

 俺達が入ったフロアにも、いかにも冒険者といった格好の人たちが掲示板を見たり、机で話し合ったりしている。

 情報交換というのはあの場所でするのだろうか。それにしても、こうしてみると獣人やドワーフといった種族は珍しくもなさそうだ。

 逆にエルフみたいな種族は全く見当たらないが、この世界では森にでも籠もっているのだろうか。


 そんな感じにシキと一緒に室内を観察していると、ガルは待ってられないという風に肩を叩いてくる。


「俺は上の人間に話だけしてくる。お前は自由にしてもいいが、この場所から移動するなよ。まだ用はあるからな」

「じゃあ、先にギルド登録を済ませてもいいか?」

「ああ、終わったらそこで待っておけよ」


 初めて訪れるギルドという場所を堪能するためにも、受付に行くのは後回しだ。

 正確には酒場とかで似たようなものを体験しているが、やっぱりカウンターがあって掲示板があって、賑わってないとギルドという感じがしないな。


 周りの雰囲気や、掲示板を十分に眺めた後で受付に向かう。

 内容は理解できなかった。

 いや、依頼なんか見てもまず文字が読めないし、自分のランクを調べないと楽しめるものも楽しめないしな。


「すみません、ギルドに登録したいのですが……あ、まず買い取りってしてもらえますか?」

「えっと……買い取りするには、まずギルドに登録してもらう必要があります」

「それって、登録料とか必要?」

「いつもなら一人あたり銀貨2枚……ですがっ! 今は初心者応援キャンペーン中なので、銀貨1枚で登録可能です!」


 なんだよ応援キャンペーンて。

 どうせ今とか付けておきながら一ヶ月継続とか、人手が足りないから目標人数に達するまでキャンペーン続行とかそんなもんだろ。


「えっと、銅貨では……」

「すみませんが、キャンペーン価格は銀貨のみとなっております。銅貨なら20枚お願いします」


 今の俺には銀貨1枚と銅貨5枚しかない。貧乏ってつらいね。

 これも金食い虫ならぬ金食い悪魔がいるせいだ。


「だってよシキ。すまんな、登録は俺しかできそうにない」

「いえ、大丈夫です。そもそも、わたしが所持しても……その……」


 ここで言うのはさすがにまずいので、言葉を濁す。

 まあ、メフィがいないと街に滞在できないなら、作っても意味がないのかな。

 しかし、魔力の問題はなんとかしてあげたいものだ。


「それに、わたしは資料の閲覧さえできれば、それで十分ですから」

「そうか……そうだったな。悪いな」


 なんとなく、シキの頭にポンと手を乗せ謝罪する。

 街に入るだけで喜ぶシキになら、身分証も作ってあげたいところだったが……シキは優しい子だ。魔力が邪魔する今、人に迷惑をかけることはしないだろう。


 まあいい。

 ここは俺だけでも登録を済ませて、ギルドの情報網とやらを利用させてもらいましょうかね。


「では、銀貨1枚で俺の登録をお願いします」

「あの、お連れの女性の方は……」

「銀貨1枚しか! ないので、俺の登録お願いします」

「…………わかりました。それでは、少々お待ち下さい」


 受付嬢は一瞬目を丸くしたが、さすがプロだ。すぐに仕事モードに切り替えて業務を遂行している。

 俺みたいに貧乏な初心者も珍しくないだろうに、そんなに意外だったのか。


「こちらの石版に手を置いてください。出てきた情報を元に、こちらで記入いたしますね」

「はい。乗せれば良いんですね」


 手の指定はなかったので、そのまま右手を乗せてみる。

 ひんやりと冷たさが伝わってくるが、こんなので本当に情報がわかるのだろうか?


「……………………あれ、出てきませんね」

「ん? どうしてですかね」

「すみません。故障かもしれないので、今別の石版を…………あった。すみません、もう一度こちらにお願いします」

「わかりました。今度は左でいきましょうか」

「お願いします……………………反応、しない?」


 普通はこの石版に手を乗せるだけで情報が表示されるらしいが、数回繰り返しても反応する気配はない。

 現に、受付嬢が手を乗せた際には仄かに光っていたので、石版の不調ということはないのだろう。


 だとすると、やっぱり俺の魔力がないことが原因なのだろうか?


「すみません。どうやら情報が出てこないみたいですね。失礼ですが……まさか動物さん、ですか?」

「んなわけあるか!」

「どうぶっ……ヨーヘイさん……くくっ……どうぶ……ふふっ」


 隣でシキにウケているが、どうしてそんな発想になったのかがわからない。

 俺がゴリラっぽいとでもいうのか。


「そ、そうですよね! 人間でまさか、魔力を持たないなんてことはないですよね! なら、どうして…………」

「すみません、そのまさかです」

「え?」

「俺の魔力、ないらしいです」

「ええぇぇぇ!? そ、それはっ! 本当ですかっ!」


 その発言に、思わずといった様子で身を乗り出してこちらに迫ってくる。

 至近距離で顔を覗かれているので少しビビるが、それよりもさっきの大声で人目を集めすぎだろ。

 気の所為だろうが、このギルドにいる全員が注目している気がする。


 ……いや、気の所為じゃなかった。

 恐る恐る後ろを振り返ると、ほぼ全員の視線がこちらに向いていた。

 それを把握した途端、バッと正面に戻ると今度は受付嬢が覗き込んでくる。

 あ、これ詰んだわ。


「す、すみません! 私もこのような事態は初めてなので、どうしたら良いものか……」

「とりあえず、上の指示を仰げばいいんじゃないかな」

「そ、そうでした! 少々お待ちください!」


 そういって受付嬢は奥に引っ込んでいったが、後ろを振り向きたくない。

 なんというか、まだヒシヒシと背中に視線を感じる。

 そんなとき、ふと置かれたままになっている石版に気がついた。


「なあ、これってシキが手を乗せたらどうなるんだ? 種族まで表示されそうだけど」

「そうなったらすぐに討伐依頼が出されそうですね……ここにいる人達に負ける気はしませんが」


 どんだけバトルジャンキーなんだよ。

 いや、俺にとっては心強いな。もしもの時はこの用心棒さんにお任せだ。


「でも……そうですね。今なら誰も受付にいませんし、試して見ても良いですか? ヨーヘイさんは念のためわたしを隠してもらえます?」

「そうだな。俺もどうなるか気になる……よし、この位置に立てば後ろから見られないだろ」

「ありがとうございます。それでは……手を乗せます」


 もし俺の魔力がないことで石が反応しなかったのなら、この石版は人の持つ魔力によって情報を提示するらしい。

 なら、膨大な魔力を持つシキが手を乗せるとどうなるのだろう。今は魔力を消耗しているとはいえ、魔力量だけならいきなりSランククラスの冒険者になれるのではないだろうか。


 そんな興味から頼んでみたが……石版には何の変化も……いや、これは!


「シキ、いますぐ手をどけろ!」

「え? っ、キャ!」

「うおっ、まぶしっ!」


 一瞬。

 まるで太陽光のように眩しい光が部屋一体を包んだ。

 その光はすぐに収まったが、光が消えたあとに残っていたのは……ヒビ割れた石版が一枚。

 え、これ……まさか壊れた?


 おいおいおい、ここはシキの魔力で光り輝くとか、そういった場面じゃなかったのかよ!


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