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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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もしかして:雑魚

 俺は一人でチェックアウトを済ませ、部屋へと戻る。

 シキの言う魔力酔いがどこまで影響するかわからないので、人が少ないうちに街を出ないとな。


「あの……本当にこのまま移動するのですか?」

「魔力譲渡のことか? メフィ、今使うとどれくらい持つ?」

「持続時間は半日といったところだね。次の街で問題になりたくなければ、今使うのはあまりオススメしないよ」

「うっ……そうですか。なら、早めに出ましょう」


 俺の所持金に余裕があれば使っても良いが、生憎とそんなことはない。

 シキの反応を見るに、よほど嫌な事があったらしいな。


 そのままメフィには姿を消してもらい、シキと連れ立って外へ出る。

 途中、受付を通った時にネコ耳を凝視されていた気がしたが……多分気のせいだろう。

 獣人もいるらしいので、何か言われたらその言い訳も使える。




 まだ朝だというのに、街には既にちらほらと人が見える。

 商売が盛んだと、朝早くから仕入れなどで忙しいのだろう。


 開店前の露店街を歩きながら門へ向かっていると、ほとんど通行人はいないというのに、少しの人だかりが見えてきた。


「ん、なんで人が集まっているんだ?」

「何か男女で言い争っているみたいですが……」

「関わりたくないからスルーするか」


 面倒事は避けるに越した事はない。

 視線も向けず通り過ぎようとしたとき、ちょうど耳に入ったきた言葉に俺は思わず足を止めてしまった。


「……Bランク?」

「え? どうかなさいました?」

「彼はBランク冒険者みたいだね。あの村長と同じく、とてもそうには見えないけどね」


 シキは聞いていなかったみたいだが、いつの間にか出てきたメフィには聞こえていたらしい。

 やっぱり、俺の聞き間違いじゃないよな。

 冒険者のランクというものに興味があるので、シキやメフィと共に野次馬へ加わることにする。

 ギルド登録する際の参考になりそうだしな。


「うるせぇ! 護衛ならランクが高いオレが適任だろ! より強い護衛がいたほうが安心だろうが!」

「それでも私が先に依頼を受けたので……依頼主も私で良いと仰っています」

「ならオレも護衛として連れて行けよ。報酬は半々でいいぞ」

「どうして? 私だけで十分ですよ。あなたは要りません」

「なんだと! 雑魚はひっこんでろ!」


 話を聞いていると、モメているのは冒険者のようだ。

 男のほうはBランク、女のほうはCランク冒険者らしいな。

 しかしまあ……言動を見るに、Cランク冒険者のほうが大人のようだ。

 あいつは図々しくも、護衛の依頼を横取りしようとしている。


「ほう……私が雑魚と。あなたこそ、パーティのおこぼれでBランクになっただけでは?」

「てめぇ! じゃあ、オレがBランクだという証拠を見せてやるよ!」


 そう言うと、Bランクだと名乗るほうにだんだんと光が集まってきた。

 え、あれって魔法なのか?


「まずいね。彼はこの場で魔法を使う気だよ。しかも、さすがBランクというべきかそこそこ強力らしい」

「それでもそこそこなんですね……でも、わたしがいて大丈夫なんでしょうか?」

「むしろシキがここにいるから大丈夫なんじゃないか?」


 鬼が言う魔法威力低下がどの程度か気になるという事もあるが、シキがいなくなったら被害が増えそうだ。

 俺には自動防御オートガードがあるし、そこまで慌てなくもいいかな。


『おいおい、まさか魔法を使う気じゃ……』

『馬鹿な! こんな街中で使われたら俺たちまで……』

『逃げろ! いや、警備隊を呼んでこい!』


 周りでは、奴の行動に対して阿鼻叫喚の騒ぎだ。

 対するCランク冒険者のほうも、魔法に対して険しい顔をするだけ。

 もしかして、対抗手段を持っていないのか!


「くらえ! レーザービーム!」

「こい、自動防御オートガード! ……ふぅ、大丈夫ですか?」

「…………え? 誰ですか」


 思わず割り込んでしまったが、彼女の反応を見ると助けはいらなかったらしい。

 よく見ると、構えている盾が光っているような気がする。

 多分あれで防御すると攻撃を防げたのだろう。威力も普段よりショボかったらしいな。


「何だお前は!」

「……しまったな。要らないお世話だったか」

「おい、無視するなよ!」

「はぁ……誰でもいいだろ? それよりBランク冒険者様の魔法は、こんなもんなのか?」

「い、いや……そうだ! なんでお前は無事なんだよ!」

「そりゃ、お前の魔法が弱いからだろ」

「てめぇ!」


 本当はシキが近くにいたり、自動防御があってこそだが、ここは煽るためにも勘違いに便乗する。

 俺に必要なのは時間稼ぎだ。


「警備隊だ! どこだ魔法を使ったやつは!」

「こいつです」

「なっ! それをいうならこいつも……」

「? 俺はこの本で守っただけだが?」


 俺に関しては魔法を使っていない。せいぜい、物理防御というくらいだ。

 本で守っていた場面は目撃者が多数いるので、誰も俺が魔法を使ったとは言わないだろう。


「周囲にいる住民も不調を訴えている。お前、魔法が禁止されているのをわかって問題を起こしたな。無関係な人まで巻き込んだ罪は重いぞ」

「オレは知らない! そこまではやっていない!」

「被害者がこんなにいるんだぞ! いいからさっさとこい!」


 それはシキの仕業かな。隣を見ると顔を逸らされた。

 まあいい。どちらにせよ、こんな街中で魔法を使うほうが悪いんだ。

 これ以上問題にならないうちにさっさと街から出るか。


 野次馬に注目されないうちに立ち去ろうとしたが、どうやら当事者にとっては目立つ存在になっていたらしい。

 人の輪からはみ出ようとしたとき、さっき言い争っていた彼女から肩を軽く叩かれた。


「待ってください……一応お礼を」

「いえ、助けは要らなかったみたいですね」

「ですが、助かりました」


 俺知ってるよ。

 こういうのを社交辞令て言うんだよね。

 必要なかったのなら素直に邪魔だったと言ってくれたらいいのに。

 でも、実際にそう言われたら傷つく。


「では、俺たちはこれで」

「あの、もしかしてお連れの方は……」


 話していて油断していたが、彼女の顔はシキのほうに向いている。

 まさか、気づかれたか!


「この子は俺の妹です! それでは!」

「ま、待ってください! ヨーヘイさん!」


 疑われたら逃げる。

 もし鬼だとバレたら、いきなり襲われたり、街に入れなくなりそうだしな。

 せっかく通してくれた門番たちにも申し訳ない。


 そのまま後ろを振り返らずに、門まで辿り着いたときに悪魔の忠告が入った。


「今更だけど、こうして逃げると肯定したようなものだね。それとも、マスターに考えがあってのことかな」

「あ、当たり前だろ! だから、さっさと出るぞ!」

「どうしてでしょう……何か考えがあるように思えません」


 メフィの指摘はもっともだが、シキの指摘も間違ってはない。

 つまり、何も考えてないけどとりあえず逃げる、だ。

 追ってきていないよな? 向こうも今から依頼だろうし、どうせもう会うことはないんだ。

 少し顔を見ただけの人なんて、すぐ忘れるに決まっている。


 こっちのメンツは自分と、浮いている女性と、ネコ耳の少女。

 ……改めて見ると、印象は強いかもしれないな。




 そんなことを思いつつ、門番との会話もそこそこに街の外へ出る。

 さあ、次こそローリアの街だ。

 待っていろギルド登録。待っていろ金貨!


「ここから歩くんですか? それよりも跳びます? ……飛びます?」

「なぜ繰り返した」


 そんな目をキラキラさせて見ないでくれ。

 俺としても早く着くのは歓迎だが、また縛られるのはゴメンだ。

 かといってまた攻略本とか落下させたら困る。


「ここからだと、馬車でも一日かかる距離だと先程耳にしたよ」

「飛ばせてください」


 昨日で随分近づいたと思ったが、まだ歩きで行くには遠い場所にあるらしい。

 それなら選択肢は一つに決まっている。

 ……ただ、荷物と俺を縛るシキの目が爛々と輝き、その目に恐怖を覚えたのは気のせいであってほしい。


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