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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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魔力を持たない、ということは

 想定外のところで時間をくってしまったが、その分報酬も手に入ったのでヨシとしよう。

 俺は今、本日三度目の高速移動中だ。


 あの場ではロープを解かれるということはなかったが、こうして運ばれている最中にも緩んでこないということは、相当強固に縛られているのだろう。

 能力にしてもそうだが、望んでもいない縛りプレイは懲り懲りだぜ。


 やることもないので、無言で横スクロールする景色を眺める。

 今度は耐性が出来たからか気絶せずに済んでいるが、たまに何かを蹴ったような振動や、その後ふっ飛ばされている魔物のような姿を見ると、気絶できたほうが幸せだったのかもしれない。




 そんな事を考えていたら、いつの間にか気絶できていたらしい。

 ああ、幸せが有り難い。それに酸素が美味しいな。

 移動が停まったことを見ると目的地に着いたのか?

 いつの間にか、辺りは暗くなり始めているみたいだ。


「ヨーヘイさん、あの街がそうですかね?」

「……んっ、俺も今気づいたからな。全くわからん」

「街へ行くなら早めにしたほうが良い。夜には入り口を閉める街も少なくはないからね」


 ひょっこりと出てきたメフィにツッコミを入れる余裕もない。

 気づけば、俺と荷物を固定していたロープも解かれているようだ。

 ようやく解放されたので、軽く伸びでもしてみる。ああ、自由って素晴らしいことだな。


 さて、街が見える場所に来たといっても、ここからは結構離れている。

 そろそろ自分の足で向かっていったほうがよさようだな。


「じゃあ、シキ。ここらへんで待っててもらえるか? 多分、明日には戻ってこれると思う」

「えっと……そのことなんですけど……少し相談が」


 何か言いたそうに、頭のツノを触りながらモジモジするシキ。

 もしかして、言いづらいことなのか?


「ああ、気が付かなくてゴメン。森なら向こうの方に……」

「マスターは黙ってくれるかな? 君が言いたいのは、さっきツノを消した魔法のことかい?」

「は、はい! あの、メフィストさんができるなら、もう一度同じことを施して頂きたいと思いまして」

「なるほど。どうする? マスター」

「え、何だって?」


 どうすると言われても、どうしてそういう流れになるのかがわからない。

 消すだけなら、さっきみたいに勝手にやってくれたらいいじゃないか。

 勝手に銀貨を使われたからって、別に怒ってないけどな!


「さっきの魔法は一時的なものさ。入り口を潜るまでは大丈夫だろうが、その後すぐにでも効果が切れる」

「そ、そうですか……やっぱり無理ですよね」

「ツノさえ消えれば、シキも街へ入れるのか? でも魔力酔いが……」

「い、言ってみただけです! わたしはここで待っているので……絶対に戻ってきてくださいね」


 強がって主張しているシキを見ると、相当街へ入りたかったんだと思う。

 下手にツノを消すという芸当をやってみた手前、期待するなというほうが無理なことだろう。

 まあさすがに、メフィでも魔力をなくすということは……。


「ちなみに、方法がないわけでもないよ」

「ほ、ほんとですか! どんなことでもやります! なので、お願いします!」


 出来るんかい。

 どちらにしろ、銀貨を使うということは確定事項だ。

 街への通行料のことを考えても……メフィの魔法とやらが、銀貨20枚くらいで収まればいいな。


「それにはマスターの協力も必要だ。手伝ってもらえるかい?」

「お、お願いします! 人の街を歩くことに憧れているんです!」

「わかった、わかったから! 落ち着いてくれ」


 そんな目で見られると困る。

 街とか人間とかが関わってくると、途端に泣きそうな目を向けられるからな。

 今まで辛い目に合ってきたんだ、俺にできることなら協力してやるか。


「マスター、シキの横へ並んでくれるかい?」

「ん? 協力って対価のことじゃないのか」


 不思議に思ったが、言われるままにシキの真横へ並ぶ。

 よく見るとシキって小さいのな。メフィよりも更に小さく、俺の肩くらいの身長しかないらしい。

 その上で、年齢は数十……いや、俺を抱えてここまで走ってきたんだな。


「今から使う魔法は、人から人への魔力譲渡だよ。シキは身体がだるく、マスターは何か異常があれば伝えて欲しい」

「鬼と人間で……そ、そんなことが可能なんですか?」

「普通の人には耐えられないだろうね。ただ、マスターは元から魔力を持っていない。少なくとも、魔力が混ざったことにより人格が壊れて暴走する心配はないだろうね」

「ちょ、そんなことがあるのかよ! 恐ろしいな」

「成功すれば、マスターも魔法が使えるかもしれないね」

「お願いします!」


 ようやく俺にも魔法が使える可能性が出てきた。

 リスクはあるが、それは心配ないと悪魔が言っているんだ。

 信用できるかどうかは別としても、シキのためにやってやるよ。


「では、移動するよ……二人とも、力を抜いて」

「っあ……んんっ……なん……かぁ……力がどんどん抜けて……」

「ん? こっちはなんともないぞ?」


 何かあるとしたら、シキの出す声に俺が翻弄されそうなくらいだ。

 落ち着け、冷静になれ。ただの魔力移動だ。


 シキの魔力が俺の体内に入ってくる。それだけの話だ。


「……おや、これはもしや」

「はぁ……はぁ……メフィストさん、そろそろわたしがっ……げんかっ……」

「っ! おいメフィ、そろそろ止めていいんじゃないか?」

「おや、すまない。とりあえずこれで、今日は魔力が抑えられるはずさ」

「それでも今日だけなのか。てことは明日の朝には?」

「多分元通りだろうね。ツノに関しては、街で何か道具でも買えばいいさ。今日一日は消えるようにしたからね」


 さっきは相当な量の魔力を移動したと思うが、明日の朝には元通りだ。

 これで対価もバカ高いとなったら、明日は使えないぞ?


「ちなみに、お値段は?」

「魔力譲渡については銀貨10枚といったところだね。ツノに関しては……今回はシキの魔力を利用したから対価は要らないよ」

「意外と良心的なんだな。しかし、ようやく俺も魔法がっ!」


 元から魔力はゼロだったようだが、鬼の魔力を得た。

 それだけでも何か強そうなのに、ついに俺の魔法が発動する時が来た!

 少しフラついているシキに構っている余裕はない。

 さあ、早速あの木に向けて……ん、どう魔法を使うんだ?


「? どうしたんだいマスター、そんな何もない空間に手をかざして」

「はぁ……はぁ……これで、わたしの魔力は……ヨーヘイさんの中へ、入ったのでしょうか」

「あ、あぁ……そのはずなんだが、メフィ?」


 間違いなく魔力は移動した。

 それはシキの反応から見ても明らかだ。

 しかし、俺は何ら変わった気がしないんだが?

 悪く言えば、いつも通り。良く言えば、影響がない。


「ボクの魔法は成功したよ。しかし、マスターには魔力を感じない。そのことについてかい?」

「ああ、俺に魔力を移動したんじゃなかったのか?」

「これはボクの推論だが……マスターは魔力がないのではなく、魔力を持たないのかもしれない」

「つまり……どういうことだ?」

「マスターに関しては、魔力という概念が存在しない。いくら魔力を伸ばそうとしても、そもそも項目がないということさ」

「何! 魔力を持たないということは、魔力ゼロということではないのか!」


 ここで衝撃の真実。

 そもそも、魔力という項目がないらしい。ゲーム風なら、俺のステータス欄にだけ空欄があるという感じだろうか。

 なんだよ、せっかくの異世界なのに魔法が使えないのかよ。


「さっきシキから移動した魔力も、消されるわけでもなく空気中に拡散されたらしいね。今この周辺に人間が近づいたら、間違いなく魔力酔いを引き起こすよ」

「なんか俺が要注意人物になったみたいだな」

「その代わり、今のシキなら街へ入っても誰も鬼とはわからないだろうね」

「本当ですか! ようやくわたしも街へ……うぅ……ぐすっ……」


 あ、メフィが泣かせた。

 泣いているところ悪いが、早く移動しないと入り口を閉められるんじゃないだろうか?

 俺の心配を他所に、メフィは無言でロープを差し出して来る。

 そして俺が受け取ると共に、そのまま消えてしまった。


「ちょ、置いていくなよ!」

「……ぐすん……メフィストさんはなんて……」

「ああ、口には出さなかったけど、早く街へ行かないと入れないぞ、と伝えたかったらしいな」


 だからって縛られるのはゴメンだけどな!

 この程度の距離なら、全力疾走してなんとか……いや、もう門が閉められそうになっている?


「ちょ、シキ! 門が閉められるぞ!」

「え? あっ、ヨーヘイさん! 早く荷物を!」

「準備はできている! 頼む!」

「はい!」


 今度は縛られているわけでもないので、俺はしっかりと荷物を抱える。

 途中、何か落ちたような気がするが、俺を荷物ごと……急いでいたのでお姫様抱っこではなく、抱きついて抱えるシキ。

 それによって得られる感触により、いつしかそのことも頭から抜け落ちてしまった。

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