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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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縛りプレイ(物理)


 出発の準備も整え、俺達は歩きだす。

 シキは何も言わずについてきたが、無言の移動には耐えられなかったらしい。


「ところで、ギルド登録とはどこで行なうのですか?」

「ああ、ここからだとローリアの街という場所が近いらしい」

「ローリアの街? ……ああっ、あの港街ですね! もしかしてここは、海の向こう側だったんですか?」

「海?」


 マップがわからないおかげで、どうも位置関係が掴みづらい。

 最初から終点だったこともあってか、俺に地理を聞かれても困る。


「その海の位置がわからないが、馬車でいけるくらいだから目的地はこっち側だろうな」

「どのくらいかかりそうですかね?」

「あの道を進んでいけば着くそうだが。なんでも、歩きなら十日くらいかかるらしいぞ?」

「と、十日ですか……そんなに……でもそれなら……」

「まあ、特に急ぐ用事もないんだ。気楽にいこうぜ」

「ヨーヘイさん。早く移動する方法があるんですけど……乗りますか?」

「ん、乗るって?」


 なにか道具でもあるのだろうか。魔法で乗り物を作り出しても不思議ではないが。

 ここは異世界らしく、ゴーレムでも召喚してくれるのかな。


「多分馬車よりも早く、飛ばせば今日中には着けると思いますよ」

「そんなに時間が短縮できるのか! 是非ともお願いしよう!」


 十日の道のりが一日で済むんだったら、用事がなくてもそっちを選ぶ。

 メフィみたいに法外な対価を請求されることもないだろうし、安全面もシキがいれば大丈夫。

 その点では安心できるな。


「それでは、準備しますね……丈短変化ショートチェンジ

「お、おおっ!」


 シキが呪文を唱えると共に、彼女が着ていた着物の丈が少しずつ短くなっていく。

 この世界にはこんなすばら……サービス満載な呪文もあるのか!


 そのまま段々と短くなっていき、膝下、膝丈とシキの細い脚がだんだんと露わになっていく。

 思わず、いいぞもっとやれ! と心のなかでエールを送ったが、同時に変化が停まったことを見ると、俺の思いは届かずに終わってしまったみたいだ。


「これで動きやすくなりました!」

「あの……それは一体?」

「あ、これはですね。先生に作ってもらった服なんですよ! このように魔法で形が変わったり、付与効果もされているわたしのお気に入りです」


 確かに丈が長い状態では動きにくそうだが、徐々に短くして脚を少しずつ見せていくその過程……一気にその先生とやらの好感度が上昇したぞ。さすが魔女と言うべきか、よくわかっていらっしゃる。


「では、荷物を持ってください」

「ん? わかった」

「しっかり抱えてくださいね。あ、念のために少し縛ります」

「え、ちょ、荷物と俺を巻くのか?」

「じっとしていてください!」


 何が起こるかわからずに慌てていると、シキに怒られてしまった。

 近くにいるメフィを見ると……見ると……いない?

 まあ本があるところに呼べば、あいつはすぐにでも来るだろう。


 そんなことを考えているうちにも、俺と野営セット、リュックなどの諸々がシキの手によって縛られてしまった。

 さながら芋虫の気分だが……あ、これどうなるかわかったぞ。


「それでは、失礼して……よいしょっと」

「ちょっ、これ本来なら逆のパターンだろ!」


 そのままお姫様抱っこをされ、シキに持ち上げられる。

 俺は荷物と一括りにして、振り落とさないためのロープか!


「ちょっと風の抵抗やらで息がしづらくなるかもしれないですけど、我慢してくださいね」

「はぁ!? どういうこ……うわっぷ!!」


 俺が疑問を口にするよりも前に、急な加速によって生じた抵抗に息がしづらくなる。

 ……ノーモーションで攻撃を受けたときにも思ったけど、予備動作なしでこんな速く動けるなんて、鬼は間違いなく最強種族だな。


 俺は早送りで流れていく景色を追うのは諦め、酸欠と荷物として揺られる振動により、早々に意識を手放した。






 どのくらい気を失っていたのだろう。


 まだ日が高いところを見るに、そう長い時間というわけではないだろう。

 いつの間にか浮遊感と景色の早送りがなくなっているので、移動中ではないらしい。

 気づけば誰かが身体を揺らしている気がするが、俺はまだシキに抱えられているのだろうか。


「ヨーヘイさん、ヨーヘイさん。起きてください」

「んん……もう、着いたのか?」

「いえ、少し気になるものを見つけたもので」


 気づけば、俺は地面に転がっていたらしい。

 荷物と一括りにされたまま、シキが言う気になるものへ視線を向ける。

 ……荷物と一括りにされたままだ。


「あれは……魔物か?」

「はい。ここまで来る途中にも何匹か蹴飛ばしたりしてきましたが、あれほど巨大な魔物はいませんでした」


 今何か聞こえた気がしたが、怖いのでスルーしよう。

 重要なのは、巨大な魔物がいるということだ。

 見たところ、大きなカバみたいな奴だな。一つ一つの動きは遅いが、地面からたまに伝わってくる振動は、あいつの攻撃によるものだろう。

 となると、一撃の威力が強烈そうだ。


「それに、あの下を見てください」

「見てください……といっても、何か飛んでいるな」


 地面に転がっているせいもあるだろうが、ここからでは大きなカバと、その下に動くものがあるということしかわからない。

 鬼という種族は、もしかして視力も良いのか。


「あの下にいるのは人間だね。どうやら、無謀にも四人であの魔物を倒そうとしているらしい」

「それって、可能なのか?」

「彼らが強いなら可能だろうさ。しかし、ボクの目から見ても劣勢なようだ」


 しれっとメフィが混ざって来るが、俺はあの時逃げた事を許さないぞ。

 しかし魔物か……どんな種類か気になるな。


「メフィ、ちょっと攻略本であの魔物を調べてくれないか?」

「ボクにあの本は読めない。どうしてそんなことを……あっ」


 ……縛られたままの俺を見て、そんな目を向けないでくれ。

 第一、その攻略本も縛られていたはずだが、本はいまメフィの手の上にある。

 あの本、いつの間に抜け出したんだ。


「……マスターがロープから出る気がないなら仕方ないさ。あの魔物を調べることはできない。さてどうする?」

「わたしは……二次被害を受けるのは嫌ですけど、できればあの人たちを助けたいです」

「そうか。かといって見捨てるのも気分が悪いが、俺もこんな状況だしな」


 彼らは自分からあの魔物に挑んでいったんだ。下手に首を突っ込んでケガをするのもバカらしい。

 それに、獲物を横取りされたとかでモメるのも嫌だしな。

 ……何より、まずはロープを解いてくれ。


「シキに言っておくが、俺に戦闘の類や魔法については期待しないでくれ。戦闘はともかく、魔法は全く使えないらしいからな」

「わかっています」

「そこにいるメフィは魔法万能、戦闘に関しては……わからないが、今は使えないからな。戦闘要員はシキのみだけど……いいのか?」

「わかっています」


 俺に戦闘が期待できないということは今、初めてカミングアウトした気がするが、わかっていたのか。

 なんか、何も期待されていなかったみたいでちょっと悲しい。


「なので……ヨーヘイさんが倒したことにしてもらえませんか?」

「え、今なんて?」

「わたしが倒したということは隠して、ヨーヘイさんが倒したということにしてください」

「二次被害が嫌とか……」

「それは、魔力酔いの影響があの人たちに出てしまったり、わたしを見た時の反応が嫌いなだけであって……あれくらいの魔物を倒すだけなら、どうってことないですよ?」


 予想はしていたが、相当なバトル中毒ジャンキーなのか。

 まあ、倒してくれるっていうなら頼むか。こっちにはデメリットもなさそうだしな。

 あるとしたら、街に着くのが遅くなるくらいか。


「じゃあ、人助けといきましょうか。シキ、頼んだ」

「はい! では、一気にあの人達の近くまで飛びますね!」

「ところで、いつロープを解いて……」

「おっと、ボクの本だけは大事に抱えてもらいたいね」

「おい。抱えてほしいなら、俺と荷物の間に詰め込むな。ちょ、待て! 俺このまま――うぇぇ!」


 ……抵抗も虚しく、二度目の高速移動が始まった。

 まさか、この状態で放置とか言わないよな?

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