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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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片側winな関係

 膨大な魔力と、とてつもない筋力を持つ彼女も、元はただの人間だったみたいです。

 それなら、俺も鬼になれば無双できるんじゃね? 二本のツノも中二要素をくすぐるくらいに格好良い。


「さて、元人間だったとか言っていたけど、そんなことあり得るのか?」

「ボクの知る限りでは、そんな事例は聞いたことが無い。これでも数百……んんっ、膨大な知識を持つボクが知らないんだ。もし本当だとするなら、国を巻き込んでの事件になっていてもおかしくはないだろうね」


 こいつ数百年とか言わなかった? まあメフィのことは置いておいても、珍しいケースなのは間違いない。

 さっき聞いた鬼の話だと、鬼は絶滅しているという話だしな。


「数十年前、絶滅したはずの鬼が大量発生した……という話を聞いたことがないですか? わたしは、その時の生き残りです」

「知っているか?」

「何処かの村が鬼に襲われて、村人は全滅。通りがかった冒険者が全て討伐し勇者以外でSランクに昇格……その事件のことかい?」

「やはり……そう、伝わっているんですね」


 何やら悲しそうに言う姿を見るに、事件の真相は別にありそうだ。

 しかし、別に気になるワードがあったな。


「ところで、数十年前とのことだけど……シキは何歳なんだ?」

「……あっ! いえ、間違えました。数年前ですね……」

「おや、ボクの記憶では、正確には三十……」

「ヨーヘイさん!」

「はいっ!」


 初めてシキに名前を呼ばれて、思わず背筋が伸びてしまう。

 メフィはマスターとしか呼ばないので、いきなり呼ばれると驚くな。


「女の子に年齢は……禁則事項ですよ?」

「はい……」


 これ以上は詮索しない。

 いくら見た目が思春期くらいの少女でも、ここは異世界なんだ。

 人という種族で収まらない以上、何があるかわからない

 例え鬼じゃなくて、未来人でしたーとか言い出しても、信じるしかないじゃないか。

 それに、力づくなら敵わないんだ。言いなりになるしかない。


「いいですか? 数・年・前……に、鬼が大量発生した事件は、仕組まれていたんですよ」

「はい……」

「マスター……それでいいのかい」


 シキが仕組まれていたというならそうなんだろう。

 例えどうみても赤いリンゴを青いとシキが言い出せば、俺も青いと言わざるをえない。






 まあ冗談はここまでにして、シキの話だと食糧不足だった村に、旅人が肉を提供してくれたらしい。

 そして、その振る舞われた肉を食べた村人全員が鬼と化した。


「ということは、鬼の大量発生って……」

「全員、わたしの知り合いでした……」

「提供された肉というのは、もしかして鬼神の肉だったのかもしれないね」

「わたしの先生もそう言われていました。みんな旅人にはめられたんだって」

「鬼神の肉を提供した旅人と、通りがかった冒険者というのは同一人物なのか?」

「それが……わたしはその二人に会っていないので、わからないんです」


 顔を見ていないなら仕方ないが、グルだという可能性は高い。

 Sランクに昇格したいがためにそんな暴挙にでたのか、それともただの実験だったのかはわからない。

 ただ、旅人に関して言えば、俺の嫌いな人種だということは確実だ。


「シキはその肉を食べてないのか?」

「肉は直接食べてはいません! でも、襲われた時に抵抗して、その人の腕を噛んだりしてしまったので……」

「その際に取り込んだ、と」

「可能性はあります……」

「でもそれなら、喰人衝動がないのも納得だね。だから今まで無事だったのかもしれないよ」

「え、やっぱり……シキも人を食べるの?」

「食べませんよ! その、襲われた時が物凄く怖かったので……思い出させないでください」


 いかんな。

 軽率な発言でトラウマを強く刺激してしまったみたいだ。

 ただ平和な村を恐怖のどん底へと陥れた犯人。到底許す気にはなれない。


 しかし、数十年……いや、シキいわく数年前だとすると、もう生きていない可能性もあるが、何か情報はあるのだろうか。


「メフィ、確認だが、鬼というのはそう簡単に一人で倒せるものか?」

「鬼一人でも脅威となるのに、それが大量発生なんだ。冒険者ならそれなりの苦労をするはずさ。それこそ、鬼殺しの特攻装備がなければね」

「鬼殺しの特攻装備? そうか、そいつを調べれば!」


 俺はしばらく仕舞ったままになっていた攻略本を取り出し、急いで武器の項目を調べる。

 何事かと聞きたそうにしているシキは放って置いて、今はこちらが優先だ。


「鬼特攻……種族特攻……あった! 名前は『大剣:鬼殺しの剣』?」

「特攻武器は高ランクの物が多いからね。あとはマスターのいうギルトとやらでその武器の所有者を当たれば、自ずと辿り着けるはずさ」

「なんというか、そのままの武器だな。SSレア級の武器みたいだから、さすがに誰か知ってる人とは思うが」


 鬼からすると、特攻武器なんて物騒なモノは自分たちで管理したいだろう。

 いつ脅威が襲ってくるかわからないんだ。

 しかし……まるで鬼化に出くわすのがわかっていたかのように所持していた特攻武器か……ますます怪しいな。


「それなら! わたしもギルドとやらに……は、街に入れないので無理ですけど、街までの護衛として連れて行ってください!」

「え、シキは街に入れないのか?」

「入れないこともないですが、このツノを見ると門番は絶対に入れてくれません。それに、ただの人間がわたしの近くにいて、無事で済むわけが……」

「それ暗に俺がただの人間じゃないって言っているよね?」

「マスターは魔力ゼロの一般人だからね。ボクはともかく、鬼や人間からするとまた別の種族に思えるのかもしれない」


 俺だって好きで魔力がゼロなわけじゃない。

 なんで同じ条件の勇者と一般人でこうも差があるんだよ。

 差があるから、あいつらは勇者なのかもしれないけどさ。


「なので、普通の人と会話できるのも久々なんです。今までずっと先生と一緒に森へ籠もっていたもので」

「気になっていたけど、その先生って誰のこと?」

「あっ、すみません。わたしはナールの森という場所に先生と二人で住んでいたんです。本当はすぐにそこまで帰宅する予定だったんですが……」

「手がかりを見つけて気になった?」

「はい……どうしても、あの事件の真相を知りたいんです」


 事件の内容に興味を出したのが、シキの探究心にも触れてしまったらしい。

 シキは生き残った唯一といってもいいあの事件の被害者だ。

 他にも生き延びた人間はいるかもしれないが、下手に関わってしまった今、中途半端で見捨てることは後味が悪い。


「事件の真相が良いモノだとは限らないぞ?」

「わかっています。それに、わたしはなんとか逃げ切れましたけど、鬼になってからは行く先々で苦労してきました。人に近づけば恐れられ、隠れていれば疫病と間違われ……先生に拾われなかったら、今頃はヨーヘイさんが言うように……その、ひ、ひとを……」

「もういい。連れて行くからそれ以上は言うな」


 さすがに泣きそうな女の娘を放ってはおけない。

 どうせ目的地もしばらくは一緒なんだ。連れていくだけなら大した手間でもない。

 ……それに、お金がない今、荷物持ちや護衛が欲しいというのが本音だ。


「っっ! あ、ありがとうございます! 何でもやりますので、どうか情報をお願いします!」

「あ、ああ。よろしく頼むよ」

「……マスター、ちょっと良いかい?」

「なんだ、嫉妬かい? ちょっとメフィと話があるから、悪いけど周辺の片付けをお願いできる?」

「は、はい! これからよろしくお願いします!」


 事件の真相に近づくのがよほど嬉しいのか、頼んだ雑用も口笛を吹きそうな感じで楽しそうにこなしている。

 お互い利用しているだけ……の関係にしては惜しいかもな。

 メフィが移動するまま付いていき、シキの姿が見えなくなりそうな位置まで移動したところで口を開く。


「どうした? 悪いが、いまさら反対だとかいっても、俺はシキを街の近くまで連れて行くぞ」

「それにはボクも賛成だよ。護衛や荷物持ちとしては、あれほど心強い存在もいないさ」


 なんだ、メフィも俺と同じ考えだったか。

 にしても、悪魔と同じ考えしかできないって、俺もこいつに随分と毒されてきたらしい。


「マスターは、ナールの森という場所を知っているかい?」

「ナールの森? たしかシキが先生と二人で住んでいた場所だよな。初めて聞いた場所だ」

「マスターなら心配ないだろうけど……その森は色々と厄介な場所でね。一般人は近づかないんだ」

「なんだ、メフィまで俺を一般人じゃないと――」

「――別名、魔女の住む森。シキの言う先生とは、その魔女のことだろうね」


 悪魔、鬼ときて、次は魔女ですか。

 行く予定はないが、ギルドの帰りに送り届ける……というパターンになりそうな予感だ。

 俺に明確な目的地があるわけでもないから良いんだけどさ。


 そうすると、魔女にも会うことになるんだろうな。

 ……いいや、まずはギルド登録。そして金策だ。


「先のことを考えても仕方ないだろ。護衛も手に入れたことだし、なんとかなるさ」

「やはり、マスターもシキのことは護衛と見ていたんだね」


 俺の失言にメフィもウンウンと納得するが、シキ本人がそれでも良いっていうんだ。

 俺はギルドで情報を調べ、シキに伝える。

 シキは俺をギルドまでサポートする。うん、お互いに利益はあるな。


 片付けが終わったのか、向こうで手を振っているシキを眺めつつ、俺とメフィは暗黙の了解といった感じで、シキの元へと戻った。

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