VS 魔王
二人の戦いに割り込んだまでは良いが、俺も長く持ちそうにない。
この力……どうみても本の召喚だ。
辞書? と思えるほど分厚いが、何が書いてあるのやら。
ゲーム風に表すと、魔導書だろうか。それでこいつの攻撃を防御できているんだから、これも魔法の一種なんだろう。
「僕の攻撃を……防いだ、だと?」
「ここからは俺が相手だ、中二病」
「僕を中二病呼ばわりだとはね……面白い。少し遊ばせてもらうよ」
強がったはいいが、俺だけで勝てる相手ではないだろう。
奴の一撃は重い。
それこそ、吹き飛ばされてしまいそうなくらいに。
この魔導書は、ダメージを防ぐのみで、衝撃までは消せないらしい。
だが、ここは……守ってみせる!
奴が拳を入れてくる箇所に、自動で魔導書が移動し、ダメージは防いでくれる。
俺は伝わってくる衝撃に耐えつつ、奴の隙きを狙う。
まだどういった能力か把握していないが、自動防御してくれるのが救いか。
これで攻撃に専念――ちょっと待て、攻撃?
「…………まじか」
「くっ、しぶといね君。ただ、手も足もでないって感じかな?」
「ぬかせっ! 俺にダメージを与えられないくせに!」
粋がってみたはいいが、この力、致命的な欠点があるッ!
契約内容、聞いておくべきだったな……
今更落ち込んでも仕方ない。ここは、どう切り抜けるかだ!
「ほんとに、どんな魔具なのやら。僕が突破できないほどとはね」
「このまま、準備させてもらうぞ――」
準備するものなんてないが、ハッタリも忘れない。
それもこれも……この魔導書で、どうやって攻撃するんだ?
奴の攻撃に反応して、勝手に魔導書が防御してくれる事は助かる。
ただ、どう使えば攻撃に転換できるのかがわからない。
こういうとき取扱説明書かなにか、用意されていれば。
……いや、もしかしたら、この本の中身に説明があるのか?
「じゃあ、そろそろ飽きてきたからサヨナラだね」
「わざわざ宣言してくれるなんてっ! とんだっ! 舐めプだなっ!」
会話しながらでも、攻撃の手は緩めてくれない。
しかし、相当技に自信があるようだが……必殺技でもくるのか?
「いけません! 逃げてください!」
その時、近くで見ていた少女が、何かに気づいたようだ。
しかし、今の俺は守ることしかできない。
「もう遅い! …………ハッ!」
「…………何をっ!」
――バタン。
今まで宙に浮いていた魔導書が、落下した。
残響だけの時間、誰も動けない。
一瞬。
俺にとってはそうだが、一瞬でも魔導書の制御が外れ、落下するまでの時間は過ぎている。
一体、何が起こったんだ?
俺は別にダメージを受けていないし、変化したことと言えば、自動防御が消えたことだけだ。
しかし、自動防御を消す技とは厄介だな。いま追撃されたらまずい。
最大限の警戒して相手を見ると、奴のほうも何が起こったか解らないような顔をしている。
この隙に本というか、魔導書を回収しよう。
「君……一体何を?」
「お前こそ何をしたんだよ」
「くっ、僕の攻撃が効かない……だと。そんなはずは……っ! 君もまさか、動けるのかっ!」
「……ようやく気づいたか」
なんとなく話を合わせておく。
もしかしたら奴のスキルがわかるかもしれないし。
「くっ……まさか、あの勇者以外にも天敵がいるとはね」
「どうした、俺にその技は通用しないぜ?」
「思った以上に厄介な存在だね。君は」
奴が呆けている間に魔導書を手に取るが、この本意外と重いな。
見た目に反して、どれだけの重量があるんだが。
まあ、自動防御してくれるみたいだから、わざわざ拾わなくてもいいんだが。
――まてよ、これなら。
「お得意の必殺技とやらも、俺には通用しないようだし……そろそろ反撃だな」
「きみは攻撃できないようだけど、何を――ぐっ!」
両手で魔導書を投げ飛ばす。そんな方法で……初めて奴にダメージを与えた。
この本は、防御しかできないわけじゃない。
――攻撃(物理)ならできる!
「やるね。でもそれなら守りは――っ」
「おっと、自動防御を忘れたか?」
ドヤ顔で防御してやると、奴は何故攻撃が防がれたのかわからないといった感じでこちらを見ている。
俺がしたことは簡単だ。
この魔導書は、自動防御してくれる機能がついているらしい。
なら、その状態で、魔導書を投げ飛ばしたらどうなるか。
一種の賭けではあったが、魔導書が瞬間移動――つまり、防御してくれた。
なんだよ、この力……結構、使えるじゃねぇか!
「せっかく勇者をどうにかできたのにな。仕方ない」
「おっと、打つ手がないから逃げるのかい?」
「逃げるんじゃないよ。準備期間さ」
仮にも魔王なくせに、準備とかする気ですよ。
打つ手がないのはこっちも同じだが、見逃してもらえるらしい。
まあここは話を合わせておくか。
「準備期間? このまま決着をつけてやる!」
「フッ、君も既に限界なんだろう? 僕は逃げも隠れもしないよ。この美術品となった勇者と共に、ここで待っているよ」
「よし、そこの少女! こいつにトドメを打て!」
「ふぇ!? 急に言われましても……」
俺はさっきから見ているだけの少女に指示する。
奴は俺の状態にも気づいていたらしい。まあ攻撃(物理)なんて苦肉の策、見抜かれて当然か。
しかしこの娘、少しは手伝ってくれてもよかったんじゃない? もう遅いけど。
「ちょっと待ってください……いま詠唱を……」
「今がチャンスなんだ! 早くっ!」
「次は新しいお仲間でも探してくるんだね。ばいばい――リムーヴ!」
その時、俺と近くにいた少女二人の真下に魔法陣が現れた。
コイツ、転送系の魔法も使ってくるのか!
魔導書の自動防御は、どうやら魔法陣には対応していないらしい。
俺はどうすることもできず、一人は気絶したまま、一人はアワアワした状態のまま、三人とも魔法陣の中へ吸い込まれてしまった。




