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自称悪魔と付属品 ~魔力なしの異世界攻略法~  作者: ひのる
第三章 ギルドに加入するということ
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鬼の人間(?)

 今の所持金的に容量空間ストレージは開けないので、今日の食事は肉のみだ。

 真ん中には丸焦げになったうざぎくらいの肉。

 それを囲んで、俺とメフィ、元人間という鬼の娘が座っている。


 元人間だったとか気になるワードを聞いたが、そこに容赦なく俺のお腹が鳴り響いたことで話は中断されてしまった。

 さて、食べるか……


「ほら、メフィ食べていいぞ。俺は後から食べる」

「ボクに食事は必要ないよ。ほら、マスターが遠慮せずに食べなよ」

「わたしのせいですみません……これは私が責任を持って食べますので」

「……じゃあ、俺が食べるよ」

「「どうぞ」」

「……ああ! 食べりゃいいんだろ! 食べりゃ!」


 丸焦げを前にして渋る俺に対し、いつからそんな仲良くなったと気になるほどに息を合わせてくる二人。

 せっかくこの娘が調理してくれたんだ。例えメシマズだろうとも、食べてみせますよ。

 意を決してナイフで切り分けた部分を口に入れる。硬い歯ごたえだが、この肉は意外と。


「あれ……普通においしいぞ」

「おや、本当だね。どうやらこの肉は硬いほうが美味らしい」

「ほ、ほんとですか? あまり無理をしなくても……」


 あの豪快な調理方法には驚いたが、噛めば噛むほどに甘みが染み出してくるようだ。この肉に関してはウェルダンが正解かな。


「ほら、えっと……君も、お腹が減っているなら食べな」

「は、はい!」


 作ってもらった身分で言う言葉でもないが、彼女はナイフもフォークも持たずに見ているだけだ。

 もしかして人に作るだけで、何も食べない気だったのか?

 俺が促すと、どうやら彼女もお腹が減っていたようで、少ししかなかった肉の塊はすぐになくなってしまった。


「うーん、この骨は何かに使えるのかな?」

「マスター……残念だけど、その魔物は食用によく使われるから、皮くらいしか素材にならないよ」

「じゃあその皮を回収しよう」


 その言葉を聞いてメフィを見ると、無言で鬼の彼女へ顔を向ける。

 俺もそれに習って顔を向けると、彼女は恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。


「そのっ……あのとき皮ごとっ……初めてだったので!」

「……っっ! それなら仕方ないな」

「マスター? 今、何か想像しなかったかい?」


 初めてなら多少のことは許せる。メフィは俺の表情から何を想像したのか察知したみたいだが、証明はできないんだ。堂々としておこう。

 ただ、優秀すぎるのも考えものだな。






 何かよくわからない肉で食事も出来たことだし、あとは出発するだけだ。

 しかし、その前に聞くことがある。


「さて、自己紹介が途中だったね。俺は大宮陽平……いや、ヨーヘイだ。ただの人間で、なぜか魔法の使えない一般人だ」


 これから名乗るのはヨーヘイだけに留めておこう。思えばリョウタの本名も知らないんだ。郷に入れば郷に従え精神だ。


「……魔法が使えないのに一般人なんですか?」

「そこはツッコまないでくれ」


 どうして魔法が使えないのか。その理由は俺も知りたい。

 変わった本を持っていたり、自称・悪魔が傍にいたりとするが、俺自身はただの人間なことに違いはない。


「ボクはメフィスト。このマスターに仕える悪魔さ」

「……一般人ですか?」

「俺自身はな。あとはこいつが勝手に言っているだけだ。あまり気にしないでくれると助かる」

「マスターも照れ屋さんだね。ボクとマスターは一蓮托生の関係さ」

「……悪魔とは聞いていましたけど、主従関係だったんですね。わたしはてっきり彼女さんだと」


 メフィが後ろから抱きついて来たのを見て、彼女にはそんな評価をされる。

 いやまあ……メフィは十分可愛いので、俺も満更でもないが。

 いかん。ここで流されては話が進まない。

 背中から伝わってくる感触を楽しみつつ、なんとか話の軌道を修正する。


「俺らはちょっとした事件の後、倒れていた君を保護しただけだ。ただの通りがかりだと思ってくれていい」

「ありがとうございます。その、わたしはシキと言います……正直、まだ理解が追いついていないですが、皆さんが鬼と呼ばれる魔族です」


 この娘はシキというのか。いきなりあの場に召喚されて、気づいたら俺達と一緒にいるんだ。まだ混乱していてもおかしくはない。


「シキ、早速で悪いが……状況は何処まで把握している?」

「えっと、いつものように森を散策して、この勾玉が光ったと思ったら壁が迫ってきていました……」

「勾玉?」

「はい。わたしがまだ人間だった頃から身につけている、唯一の所有物です」


 そう言い、首にかかっているペンダントを差し出される。

 見た目は緑色をした手乗りサイズの勾玉だ。俺が見てもそれだけしかわからないが、こいつは違う。


「これは……驚いたね。通りでボクの魔法から逃げられるわけだ」

「やっぱり、何か仕掛けてあるか……はぁ」

「えっと、どういうことですか?」

「簡単に説明すると、迫る壁はここにいるメフィの魔法で、シキは誰かに利用されて身代わりにされたんだ」

「なっ! えっ? つまり……この勾玉が原因でってことですか?」

「ボクの予想では間違いなくそうさ。しかも、ここに組まれている術式は持続式らしいから、キミはまた身代わりにされるよ」


 その言葉に、俺もシキも言葉を失う。

 これを渡したやつは、最初から身代わりにするつもりだったというのか。

 しかも受け取ったのが人間の時ということは、使い捨て前提で渡した可能性がある。なんたる外道か。


「そ、そんな……この勾玉は、母の形見で……」

「しかし、組まれている術式は悪いものばかりではないよ。シキ……君は親に愛されていたんだね」

「ど、どういうことでしょうか……?」

「この勾玉には『愛するものを護る』術式がある。もしもの時はこの勾玉が身代わりとなって砕けるようだね。それに上書きされるように『守護対象を護る』術式がある。これは特定のアイテムと対応して、この勾玉を持つ人物が身代わりとなる術式だ」

「ということは、本来の効果は……」

「本来は騎士が使うような、守護対象を護りつつ、勾玉が身代わりになる術式のようだけど、今回は運悪く悪用されてしまったようだ。アイテムを使った人物が『愛するもの』だったなら、勾玉が砕け散るだけで召喚されることもなかっただろうね」


 それを聞いて、シキは何も言わずに勾玉を見つめている。

 どんな思いで形見を受け取ったのかはわからないが、親が護りたいという気持ちを利用して身代わりにしたのは許せない。


「……上書きされた術式だけを解除できないか?」

「本来は銀貨10枚……と言いたいところだが、この大きさなら銀貨5枚で解除できそうだね」

「ならやってくれ」

「確かに出来ないことはないさ。でも良いのかい? これを解除するとなると、マスターの所持金は」

「良いんだ」

「後悔はしない事だね。了解したよ」

「? さっきから何を、話しているんですか……?」


 これは俺が好きでやっている。いや、やってもらうことだ。

 シキが気にかける必要はない。


「此の装飾に集う怨念よ、真に宿る精霊よ、我に従い、解放されたし……――ディズィンカーント…………全く、マスターもお人好しだ」

「今、何を……?」

「これで今後、シキが身代わりにされることはないよ。安心して身につけていな」


 いまだ泣きそうな顔をしているシキの頭をポンポンとする。

 有り金全て使ったんだ、これくらいしても許されるはず。

 ……シキがどう思っているかは知らないけどな。


「はぁ……マスターの対価と引き換えに、ボクが上書きされた術式だけを解除したんだよ。これからは勾玉を身に着けていても無害なはずさ」

「いちいち説明するなよ。恥ずかしいだろ」

「だって、そうでもしないとその娘は納得しないだろう?」

「対価だなんて! そんな、そこまでしてくださったのですか……」

「対価云々はこいつが言っているだけだから、関係ないぞ」


 実際にメフィが請求してこなければ良いだけなんだ。まあ、魔力を使用する対価としては間違ってはいないけど。






「これで安心して帰れるな。じゃあ、俺達はこれで」

「ま、待ってください! 何かお礼を!」

「……こうなると面倒だったんだけどな」


 恩を押し付けるのは良いが、何かしてもらうというのが苦手なんだよ。

 こんなときお金を請求できると楽なんだが、さっき聞いたときは勾玉しか持ってないと言っていたしな。


「それに、わたしは鬼なんですよ!? どうしてあなたは平気なんですか!」

「どうしてって、なんで?」

「だって、わたしたち鬼は、ひ、人を食べたり……はしませんけど、一緒にいると魔力酔いの影響が出て、体調が悪くなったり……魔法が弱体化したりとか」

「そうなの?」


 体調を崩したり弱体化するとは聞いていたが、魔力酔い? というのが関係しているのか。

 魔法が弱くなっても俺には関係のないことだが、内容について予想外ということもある。俺の縛りプレイにも少しの光が見えそうだ。


「それって、どういう?」

「わたしたちは全種族の中でもトップクラスの魔力を持っているので、いくら抑えても周囲に少しは漏れてしまうんです。その漏れた魔力が、人間には強力すぎるせいか、魔力切れの際に起こる魔力酔いを引き起こしたり、空気中の魔力に干渉して格下魔法の威力を低下させてしまいます」


 人間の使う魔法を、自然と格下に定義したな。

 鬼からすると間違ってはいないけどさ。


「なのに、どうしてあなたは平気なんですか!」

「だって俺、魔力ゼロみたいだし」

「え?」

「マスターは別世界から来たらしい。もっとも、勇者みたいな能力は何もないようだけどね」

「ということだ」

「なんですか……それ」


 それは俺が聞きたい。

 魔力がないから魔力酔いもなし。魔法が使えないから威力低下も関係なし。

 でもメフィの魔法は弱体化するのか? いまはお金がないから試せないが、ここで別れるなら試す必要もないか。


「というわけで、シキが鬼でも関係なかったというわけだ。じゃ」

「ま、待ってください! それなら尚更、わたしを連れて行ってください!」


 確かにこんな森の中に女の子一人を放置していくのは可哀想だが、シキの実力なら一人でも大丈夫だろう。

 なにせ見た目とは違って力持ち、魔法万能と無双要素が揃っている。

 仲間としていてくれると心強いが、俺がヒモみたいじゃないか。

 そんな変なプライドが邪魔をするが、一応聞いてみる。


「……理由はあるのか?」

「わたしは鬼ですけど……元、人間だったんです」


 それ、さっきも聞いたね。

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